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牛皿と鮭

今日は2週間に1回のお昼外ごはんの日。

ラーメン、カレー、天丼にパスタ。お寿司にパンに牛丼。目移りどころの沙汰ではない。人生の中でお昼外ごはんをする回数は限られている。今日の選択は短い人生の中でとても重要な選択なのだ。

時間は過ぎておなかはどんどんすいていく。今日は朝ごはんにコストコのファストフードを食べてしまったから、ちょっとおなかはもたれている…気がする。でも目はオレンジ色の牛丼屋さんから離れない。げに、本能はおそろしき。

「牛鮭定食。ごはんは大盛りでお願いします」「はいっ、ありがとうございます。鮭一つでーす」(「えっ、お兄さん牛も!」)

鮭ひとつ。ランチは鮭のみの定食がないもんね。落ち着いて落ち着いて。注文はちゃんと通っているはず。スマホでスラムダンクを読みながら、牛鮭定食が私のもとに来るのを待つ。

ほかほかのごはんとおみおつけ。どんぶりでおなじみの彼が、大人しく黒いお皿に控えめに控えている。目移りしそうな鮭が一切れ。ごはんはきっと大盛りで足りない。紅しょうがを牛皿に盛って七味をちゃちゃっ。

「いただきます」

鮭を一切れとごはんを三口。あついけどおいしい。

よく友人や家族から「おかずとごはんの比率がおかしい」と言われるけれど、口にこれでもかとほおばったごはんと少量の味の濃いおかずが私の黄金比率。

さて第2ラウンドの始まりが見えてきた。どちらを主力に残そうか…

「いらっしゃいませ。只今席が満席です。少々お待ちください」

ごはんに夢中で気が付かなかったけれど、何度目かの店員さんの声だったようだった。さすがお昼時。みんなおなかがすいている。

白米残量は大盛りの三分の一。おかずは未知数。満席のお店に、お腹を空かせたお客さん。視線が合ったらやられる気配を感じる。

紅ショウガと牛肉は結婚した方がいい。鮭とごはんは家族な気がする。おみおつけと昼食なんてイコールでつながってる。

いつものお昼ごはんより少しだけ急ぎ目に箸を動かす。大きな牛肉で紅ショウガをくるりと巻いて、最後の白米とともにかっ込む。

待ってたサラリーマンが会釈をする。会釈を返しながら、この人の入店から今までの頭の中を想像する。牛丼に定食、どっちにするのか何回悩んだのかな。

「牛丼、並で」

おお牛丼、ああ牛丼。どうぞ良い牛丼を。
牛鮭定食さま、今度はおかわりしますわ。
きっと、きっと。


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