竹中平蔵氏の逮捕はあるのか?2

●なぜ竹中平蔵氏は逮捕されないのか



前回は竹中平蔵氏に関して次のような記事を掲載しま
した。

・最近ネットなどを中心に竹中平蔵氏の逮捕があるのでは
ないか?という噂が流れている
・その噂の根拠は、東京オリンピック関係で贈収賄の逮捕
が相次いでいるし、竹中平蔵氏が最近パソナを辞めたのも
逮捕が近いからではないのか?ということである。
・しかし、筆者としては竹中平蔵氏が最近パソナを辞めた
のは偶然であり逮捕はあり得ないと考える。

今号ではその件について、もう少し深く掘り下げたいと思
います。

筆者が、「東京オリンピック関連で竹中平蔵氏が逮捕され
ることはない」と考える最大の理由は
「贈収賄は逮捕されるけれど天下りは逮捕されない」
からなのです。

今回東京オリンピック関係者が逮捕された容疑である「贈
収賄」という犯罪について、ご説明したいと思います。
贈収賄という犯罪は、政治家や公務員など「公的な権力を
持っている人」に、私企業などが「特定の目的のために金
品を送る」という犯罪です。
そして渡した方は贈賄という犯罪になり、もらった方は収賄
という犯罪になるのです。

この贈収賄という犯罪は、「特定の目的」がなければ成り立
ちません。
たとえば、今回の東京オリンピックであれば、「安いお金で
スポンサーの枠に入りたい」と思っていた企業が、オリンピ
ック理事に金品を渡して、その枠をもらったということです。
直接金品を渡したわけではなく、理事の会社への委託料など
という形をとっていますが、その委託料が賄賂だと認定され
たわけです。
つまり、「スポンサー枠の確保」のために「金品の授受」が
あったという関連性が認められたから贈収賄で逮捕されたの
です。

たとえば、ある国会議員がある私企業からお金をもらったと
します。
そしてその国会議員は、その企業に対して、いろんな便宜を
はかったとします。
しかし、これだけでは贈収賄罪は成立しません。
その私企業が「駅前再開発事業の受注の便宜を図ってもらう
ため」など、具体的な目的がなければならないのです。
具体的な目的もなく、「いろんな便宜を図ってもらう」ため
に政治家にお金を渡した場合は、贈収賄にはならず、ただの
政治献金になるのです。

「特定の件で便宜を払ってもらう」ことも
「いろんな便宜を払ってもらう」ことも、
社会にとっては、同じような害悪であり、我々から見れば、
腑に落ちない話ではあります。
が、現在の法律では、このように贈収賄というのは、立件する
にはかなりハードルの高い犯罪となっているのです。

●日本は”天下り”無法地帯


そして天下りの場合も、「特定の便宜」ではなく「いろいろな
便宜」を図ってもらうために行われるものです。
天下りというのは、公的な権力を持っていた公務員などが、私
企業に就職して多額の報酬をもらうわけです。
その元公務員は、今でも官庁に強いパイプを持っていたりして、
その私企業にいろんな利便を働くわけです。

が、天下りは現在の日本の法律では犯罪ではないのです。
なぜなら、「特定の目的」のために金品の授受があったわけでは
ないからです。

竹中平蔵氏が、世間から批判を浴びている要因の一つは「天下
り」です。

竹中平蔵氏というと、ご存じのように小泉内閣の経済政策を一手
に引き受けてきた政治家であり、金融担当大臣、総務大臣などを
歴任しました。
また総務大臣の連続在職期間はその当時の史上最長記録でもあり
ました。
総務大臣というのは、国の様々な許認可権を持っており、公的権
力の中枢のような立場です。
そのような政治家が、引退後すぐにパソナという人材派遣会社の
最大手企業に入るということは政治倫理のかけらもないものです。

竹中平蔵氏は、政界から引退した後も、政府の諮問機関である
「産業競争力会議」のメンバーとなるなど、政権運営に深く
携わってきました。
竹中平蔵氏は、この「産業競争力会議」において、企業の「再就
職支援のための助成金の支給」を強く提言しました。
よくこんな露骨な提案をしたものだと感心するほどです。
この再就職支援は、もろにパソナの利益に直結するものだったか
らです。
この助成金の多くを最終的にパソナが吸収するような構造になっ
ていたのです。
竹中平蔵氏のこの助成金提言は採用され、2014年以降、数百
億円単位の予算がつけられました。

パソナというと、新型コロナでの持続化給付金の中抜き問題が
記憶に新しいところですが、ずっと以前から似たような事をして
いたのです。

またパソナは、東京オリンピックのスポンサーになりましたが、
パソナは東京オリンピックのアルバイト派遣業務などを引き受け
ていました。
その際、アルバイト料の多くを中抜きするなど、相変わらず、
倫理に欠いたことを行っていました。

そういうことから、竹中平蔵氏やパソナも逮捕されるのではな
いかと噂されるようになったのです。

確かに、パソナが東京オリンピックのスポンサーになり、東京
オリンピック関連業務で大儲けしたことは、国民にとっては不快
な話です。
だからとって、竹中平蔵氏やパソナが逮捕されるわけではあり
ません。
贈収賄の容疑はどこにもないからです。

逮捕されたAOKIやKADOKAWAは、それ以前は公的権力と密接だった
わけではありません。
だからこそ賄賂を渡して、東京オリンピックのスポンサーの枠を
手に入れようとしたわけです。

●”長年の癒着”ならば犯罪にならない


しかし、パソナはそうではありません。
パソナは以前から公権力に深く結びつき、これまでも国の事業を
たくさん受注してきました。
東京オリンピックのスポンサーになることもかなり前から決まっ
ていました。
AOKIやKADOKAWAのように、駆け込み的に入ってきたわけではあり
ません。

パソナは豪勢な施設で与野党の国会議員を接待漬けにするなど
政治家との癒着がたびたび問題にされてきましたが、これは
長年行ってきたことであり、「特定の目的」のためにピンポ
イントで行ったわけではありません。
「特定の便宜」をはかったという証拠がないので、罪には問わ
れないのです。

竹中平蔵氏は、パソナを東京オリンピックのスポンサーにして
もらうために、オリンピックの理事に賄賂を渡すような必要は
なく、もとからその位置を与えられていたのです。

また竹中平蔵氏は、パソナの会長を長く務めており、パソナか
らは十分に報酬をもらっています。
それ以上に金品をもらう必要もありません。
だから、収賄の容疑もないわけです。

つまりパソナは、長年、国家権力に食いついて事業を行って
おり、単発的に国家権力に近づいたわけではない、そのため、
贈収賄が発生することもない、ということです。

贈収賄という犯罪は、単発でやれば捕まるけれど、長年、継続
的にやっていれば、罪に問われることはない、ということです。

事実上の「継続的な贈収賄」である「天下り」については、
現在の日本ではこれを取り締まる機能はほとんどありません。
以前は公務員の天下りについては、かなり規制があったのですが、
現在は骨抜きにされています。
また政治家や大臣が私企業に天下りすることについては、まった
くといっていいほど制約はないのです。
竹中平蔵氏は、この法律の抜け穴をついたわけです。
もちろん、こういうことが公然と行われていて、社会がよくなる
はずがありません。
日本社会が抱えている病巣の一つだといえます。
竹中平蔵氏関連については、今後も続報したいと思います。

この記事は、私の有料メルマガ「本音で役立つ税金情報」の記事から転載しました

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