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販売は目的ではない。新製品マーケティングのための場所を提供する「常設見本市」|蔦屋家電+(プラス)

【一言で言うと】世界中から先進的な製品を集めた家電販売店舗。来店者は実物を確認できると同時に、メーカーは情報収集が可能に。マーケティング調査のためのショーウィンドウ店舗。

基本情報

展開する国:日本
設立:2018年
ジャンル:家電販売

なにが特徴か

実店舗は販売のためではなく、顧客にとって実物に触れることができる場所で、また、メーカー側は顧客の情報を得る場所、として割り切っているのが「蔦屋家電+」だ。

1.世界中から集めた面白い製品が並ぶ

「蔦屋家電+」があるのは「蔦屋家電」の一角。「蔦屋家電」は「TSUTAYA」を運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)のグループ企業が、2015年5月にオープンした家電ショップである。

ショップが入っているのは、東京・世田谷区にある複合商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」だ。雑誌や書籍が並ぶブックコーナーや、スターバックスが運営するカフェスペースもある。

「蔦屋家電+」は2019年4月、その一角に登場した。最新テクノロジーを駆使した家電製品や日用品など約30品目が世界中から集められ、原則として月ごとにラインアップは変わっていく。

製品はすでに販売中のものから、発売前、もしくは発売予定、さらにはクラウドファンディング中のものまでさまざまだ。

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二子玉川ライズ・ショッピングセンター by 東急株式会社

2.あまりの人気にオープン2か月で「店内一等地」へ移転

「家主」の「蔦屋家電」は出店メーカーから月25万円(契約期間によって金額は上下する)を徴収する。最大で30企業×25万円だから、高い坪効率と言えよう。

「蔦屋家電+」の目的は製品を販売することではない為、製品が売れた場合の売り上げはすべてメーカーの収入になる。

もともと先進的な製品を扱うということで、来場者数は以前よりアップすると見込んでいた。オープンしてみると、週末は1日4000人以上が押し寄せている。

あまりの人気に当初2階にあったスペースは、2019年6月に1階メイン入口脇の「店内一等地」に移転している。40㎡ほどだった面積も、ほぼ2倍になった。

3.マーケティング調査のためのショーウインドウ

「蔦屋家電+」は、もっぱらマーケティング調査のためのショーウインドウとして位置付けられている。

スペースに展示されている各製品には、一つずつiPadが近くに配置されている。それぞれの製品に関する開発動画などを見ることができるのだが、iPadには、IoTやAIなどのソフトウェア会社オプティムの開発したAIカメラも搭載されている。

カメラは常時来店者を撮影していて、リアルタイムでその映像を個人が特定できないように変換しながら、来店者の属性と行動データを収集している。

どの製品にどんな人がどのくらい関心を示したか、常に調べているわけだ。

またスタッフが価格やデザイン、機能などについて来場者に解説しながら、巧みにメーカーが次の製品開発に生かせるような感想を引き出していく。
つまり、メーカーとしては月25万円の投資で貴重な消費者の声を得ることができる。

実は「蔦屋家電+」のモデルがアメリカにある。「b8ta(ベータ)」というスタートアップだ。その名の通り、製品のベータ版を試用できる小売店。2015年の創業後、急速に成長し、ニューヨークやサンフランシスコなどアメリカ各地に23店舗を展開している。2019年には初の海外店舗をドバイにオープンした。

「蔦屋家電+」はまだ二子玉川の1店舗のみ。果たして「b8ta」のような急成長を見せるのか、これからが注目される。

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「b8ta」シアトル店 /Photo by b8ta

Banner Photo by Kelvin Yup (Unsplash)

関連ニュース

「家電のベータ版を試せる」 蔦屋家電の型破りなビジネスモデル|日経XTREND
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/00337/

参考


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