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シリーズ「OMOの実装」 #0. はじめに

OMO Timesは、これまで国内外のOMO/ニューリテールの事例を紹介し、2019年内には60記事(事例)程度になる予定です。

2020年に向けて、これら先行事例をもとに、「では、実際にOMO/ニューリテールを日本で、あるいは国内外の事業主体として推進したり取り入れたりするにはどうすれば良いか」を考え、そういった視点も踏まえた情報発信を、この12月末から少しずつおこなっていきたいと思います。

オンラインとオフラインの境目がなくなる時代に、コマースをより自由に発想したい全ての方に、少しでも役立てば幸いです。

(OMO Times編集部)

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「OMOの実装」に寄せて

筆者が遅まきながらOMO/ニューリテールの概念を最初に意識したのはダグ・スティーブンス「小売再生」を読んだときだったと思う。

「小売再生」の文脈、そしてその後続くOMO/ニューリテールに関する先行事例の数々の報告や書籍によるならば、それらは一様に、そもそもリアル店舗単体での売り上げだけを追い求めることはしない。

当時、メディア企業への投資案件を進めるにあたり、米VICE Mediaが展開する人気フードバーティカル「Munchies」が、ニューヨーク近郊に建設が予定されているショッピングモールのフードコートをプロデュースする、というニュースを目にした。
(その後、再三にわたる工期の遅れの結果、アミューズメント施設のみ先んじてオープンし、フードコートが入るショッピングモールは2020年春に開業する予定だそうだ)

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一部娯楽施設が先行オープンしたAmerican Dream(米ニュージャージー州)のフードコートのイメージパース | Photo by ROI-NJ

ウェブメディアがリアルイベントを開催することは珍しくないが、フードコートをプロデュースし、そこをスタジオにしてコンテンツを発信しながら新たなコミュニティをつくっていく、という当初のコンセプトが実行されるとするならば、オンラインともオフラインともつかない、両者が溶け合った状態で、オンラインのオーディエンス「かつ」オフラインの来訪者、といった二つの顔をもつ消費者をもてなすことになるだろう。

ちなみにVICE Mediaは、時を同じくしてブルックリンの倉庫を拠点とするイベント制作会社「Villain」を買収、オフラインを重視する姿勢を見せている。

一方その後筆者は、ニューリテール/OMOの震源地中国上海と、アリババの城下町である杭州を訪れ、フーマーをはじめとするアリババ流の新小売革命が、もうすでに革命と呼ぶにはあまりにもスムーズに、上海人の日常に溶け込んでいる様を目の当たりにした。

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上海のフーマーフレッシュにて | Photo by OMO Times

しかし、既に革命は先進地域でなされていて、日本は小売分野で後塵を拝している、であるとか、スピードが遅いなどと批判をすることに私はあまり意味を見出せない。

なぜなら、中国における、そして世界におけるOMO/ニューリテールに類する事例を調べるにつれ、その進化はその国や地域の文化や人の(消費)行動様式、テクノロジーの受容状態によって複雑に枝分かれしているように感じられ、すなわち、日本においてもまた別の現実が進行していると考えているからだ。

ここでOMO Timesが2020年に向けてテーマに掲げたいのは「実装」である。

中国での新小売革命や、アマゾンによるテクノロジードリブンでの小売の進化、それらは日本においてすぐさま利用できるところもあるだろうし、どう考えてもうまくいきそうにない仕組みもある。

日本でも中国的な、あるいはテクノロジーを活用したOMOにチャレンジしている事業者が既に存在する。そしてその実装には日本の生活者のリアルに向き合う必要があることをいみじくも感じられるもの、あるいはその努力が垣間見えるものが少なくない。

これら含めた事例やプレイヤーの考えを通じて、日本における「実装」を、これから何回かに分けて考えてみたい。

(文責:OMO Times 梅木 隆伸)

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