今井悠資

働く傍ら研究活動しています。組織の中のコミュニティ、人と人との相互作用、アイデンティテ…

今井悠資

働く傍ら研究活動しています。組織の中のコミュニティ、人と人との相互作用、アイデンティティ形成などが主要な研究領域。人が目を輝かせて違う自分になっていく瞬間が好きです。でも仕事はずっとマーケ畑。博士(経営学)。 ※noteで公開された内容は所属機関に関係ないものです。

最近の記事

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「博士課程に行ってみたい」という社会人の方への長い手紙。

そろそろ博士課程の振り返りをしようと思って、これを機にnoteを書いてみることにしました。最初の記事としては相応しいのではないかと思って。 おかげさまで2023年3月に博士号を頂くことができました。謝辞にも書いたのですが、本当に多くの方にお世話になってここまで来ることができました。お名前を上げだすとそれだけで本稿が埋まってしまうので畏れ多くも割愛させていただきますが、改めて感謝申し上げたいと思います。 さて、何年も社会人博士を名乗ってきたせいで「私も博士課程に興味があるの

    • 企業勤めでも研究者として暮らしていきたい、暮らしていく。

      中園先生の記事を見て、「研究職にある人もそうなのか…」と思ってしまった。きっとどの世界も恵まれた環境とそうでないところの格差は大きい。大学勤めですらない者として、何かを書かなければならないような気がした。これから二足の草鞋を履いてでも研究活動を続けていきたい人に、何か参考になれば嬉しいなと思いながら。 企業勤めが大学で博士号を取った後に待っているもの ビジネスパーソンが博士号を取るまでのお話は、結構大変だけどとても実りのあるものだよという思いを込めて書きました。ではその過

      • 先行研究を読み進められない時に迷い込んでいる迷路の正体

        来月また博士課程での過ごし方について話して欲しいというご依頼が来たので、少し肉付けを考えています。一番最初に躓くのはやはり先行研究だと思うのですが、本日師匠である鈴木先生のゼミを聴講しながら考えたことをメモ代わりに3つのステップにまとめてみました。 ※ろくに論文も書けてないのにPh.D取っただけでエラそうにこういうことを話したり書いたりするのは大変恥ずかしく思っています。ただ、自分も先輩の経験談に助けられたことがとても多く、一部の方にはSNSでこういう情報を目当てにフォロー

        • アフターコロナのコミュニティ運営:ROMが増える5つの理由

          ※この記事は2020年に書いたものをお引越ししたものです。 先日とあるコワーキングスペース運営者の方とのアフターコロナでのコミュニティについてROMの話題が出ました。 お酒も入ってたのでダラダラ話してしまったのですが、今後の研究の種になりそうなのでちょっとまとめておこうかと思います。結論から書くと「参加と実践のデザイン」がより重要になる、ということなのですがなんのこっちゃわからんと思うので順を追って行きます。 ※私は実践共同体という理論の研究者です。平たく言うと、みんな

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        「博士課程に行ってみたい」という社会人の方への長い手紙。

          自発的なメンバーが増える! やる気が芽生える「取り組み方のデザイン」

          ※この記事は過去に書いたものをnoteにお引越ししたものです。 本日の記事のもとになっているのはこちらの論文です。 実践共同体の学習活動における動機づけの発展についての研究 -「学習療法」実践の事例をてがかりに- 松本雄一(2014) http://www.jcss.gr.jp/meetings/JCSS2014/proceedings/pdf/JCSS2014_P3-7.pdf なお、ブログ向けに言葉を平易にしているので、厳密な内容は原著を確認してください。 学ぶ動

          自発的なメンバーが増える! やる気が芽生える「取り組み方のデザイン」

          「言われたことしかしない」若手が日の目を見た話

          前回はそもそも「自発性はあるけどそれが主たる仕事の方向を向いていない部下」を前提に記事を書いていましたが、「そもそも部下が言われたことしかやらない」とお悩みの方は多いでしょう。しかし、言われたことをやるだけ、その部下はしっかりしているのではないでしょうか。実はこれも同じ話なので、例を変えてお話しましょう。 私がある会社で営業育成をやっていた時、研修では抜群の評価を取っていたのですが、現場に配属されると鳴かず飛ばずだったB君という営業マンがいました。T君は海外経験があり、受け

          「言われたことしかしない」若手が日の目を見た話

          「自発的な部下が欲しい」と嘆くリーダーが受動的かもしれない話

          自発的な社員を増やしたいと言う時、ほとんどの場合その自発性は「自社にとって都合の良い」という前提が含まれています。実はすでに自発的な人は一定数います。ただ、自発性が個人に向くか組織に向くかはその後のコミュニケーションによって決まります。 部下が職分と関わりの薄い事の相談に来た時「まずはやるとこをやれ」とか「それはお前の仕事じゃない」「うちはそう言う文化」などと言われたというエピソードを聞いたことはありませんか。 このようなコミュニケーションがあるとき、部下は自発的に提案や

          「自発的な部下が欲しい」と嘆くリーダーが受動的かもしれない話

          博士号取得への道(という講演をしたのでメモ)~問いの話~

          ご依頼をいただき、そんなお話をしました。最初に書いた記事がいまだに見られており、しかもフォローまでいただくことがあるようなので、博士ネタとして書いておこうと思います。例によってn=1の個人的経験のお話ですのでご了承ください。 ケース:私の博士号に至るまでのマインド変化 ※ここは読み飛ばしてもいいですw※ 前回の記事が大変エラそうな内容でしたので「さぞこの人はちゃんと勉強したのだろう」と思われたかもしれませんが、実際は全くそんなことは無く、私の5年間はこんな感じでした。

          博士号取得への道(という講演をしたのでメモ)~問いの話~

          「なるほど、MBA取ってから博士に行けばいいんですね!」と言われたので「それは違う」と言った話。

          さて、成り行き的にですがnoteに博士課程とMBAの事を書いた通り、これまでこういった質問やご相談を受けることがありましたので自分の経験をもとに回答してきました。そうすると、タイトルのようなことを我が意を得たり! のようなテンションで言われることがあるので慌てて訂正することがあります。確かにMBAは修士号相当の学位(専門職修士)が得られますので、博士課程後期課程を受験することができます。できますが、そんな簡単なノリで考えていると撃沈します。ARMS読んでたらその点について補足

          「なるほど、MBA取ってから博士に行けばいいんですね!」と言われたので「それは違う」と言った話。

          「MBAに行ってみたい」という社会人の方への長い手紙。

          博士の話を書いたら「MBAはどうですか?」って聞かれるようになってしまったので、こちらについても少し書いておこうと思います。なお、これは私が通った神戸大学MBAをベースにしたお話しであり、他校だとどうかは分かりません。これについてもある程度共通してるんじゃないか、と言うところをかいつまんで書きますが、最終的には皆さん自身で説明会に行ったり卒業生に話を聞いたりしてご判断ください。 MBAホルダーの実態 これを読んでいるあなたがMBAに行きたいという理由は何でしょうか。昇進が

          「MBAに行ってみたい」という社会人の方への長い手紙。

          「組織内コミュニティが陥る罠と打開策」への質疑応答③ ~コミュニティ活動の継続性~

          本日は個々人としてどう活動を続けていくか、そして日本全体としてこのような活動がどうなっていくかについて触れます。 ずっと根性だけでは続かない。 継続して活動するためにはどうすればいいか 組織の中の非公式なコミュニティと言うのは、非公式なわけですから業務時間中に何かするわけにはいきません。多くの人々は、終業後や休日に時間を捻出して活動をすることになります。活動規模が大きくなったりやりたいことが困難であるほど、このような活動スタイルは心身共に疲弊しやすくなります。 この様な

          「組織内コミュニティが陥る罠と打開策」への質疑応答③ ~コミュニティ活動の継続性~

          「組織内コミュニティが陥る罠と打開策」への質疑応答② ~メンバーの参加の在り方~

          今回は主にメンバーの参加の在り方について2つ取り上げます。 コアメンバーとそうでない人の熱量の差をどう埋めればよいか コミュニティ活動は歴史が積み重なり、メンバーも増えてくるとそれぞれが持っているモティベーション(質問者の言う熱量)のみならず、知的・技術的熟練度の差も広がってきます。 これが具体的にコミュニティにどのような影響を与えるかというと、スポーツを例に挙げるとわかりやすいでしょう。前にも書きましたが、プロ野球一軍の選手が練習をする際に草野球レベルの人が混ざっても

          「組織内コミュニティが陥る罠と打開策」への質疑応答② ~メンバーの参加の在り方~

          「組織内コミュニティが陥る罠と打開策」への質疑応答①

          先日ONE JAPANさんの有志団体総選挙にて審査員を務めさせていただきました。その時標記のタイトルで短めのセッションを担当したのですが、これについて会場から出た質問について非常に端的にしか回答できなかったので補足も含めてこちらでテキストにしておこうと思います。 創設者がいなくなってしまった。どうしたらいいか。 私は、組織の中のコミュニティを「組織的、個人的なビジネス上の目的達成のために従業員が諸力を提供して関わり合うことによって、技能熟練や知識創出、そして自身の内的心理

          「組織内コミュニティが陥る罠と打開策」への質疑応答①

          意外と簡単?にクリアできる(かもしれない)社会人博士のハードル

          前回の記事は実は4月頃に8割くらい書いて「いい加減出さねば」と思って書き足したために、いささか冗長な文章となってしまいました。また、「俺はこんな大変なことをやり切ったぜ」マウントを取った文章になっていないか大変気がかりでしたが、概ね好意的に読んで頂けたようでほっとしています。 一方で、「やはり大変なのですね」という印象を強く持たれた方もいるようですので「そそそそ、そんなことはないですよ」ともう少し突っ込んだことも書いておこうと思います。この記事では、ぱっと見キツそうだけど意

          意外と簡単?にクリアできる(かもしれない)社会人博士のハードル