今井悠資

働く傍ら研究活動しています。組織の中のコミュニティ、人と人との相互作用、アイデンティティ形成などが主要な研究領域。人が目を輝かせて違う自分になっていく瞬間が好きです。でも仕事はずっとマーケ畑。博士(経営学)。 ※noteで公開された内容は所属機関に関係ないものです。

今井悠資

働く傍ら研究活動しています。組織の中のコミュニティ、人と人との相互作用、アイデンティティ形成などが主要な研究領域。人が目を輝かせて違う自分になっていく瞬間が好きです。でも仕事はずっとマーケ畑。博士(経営学)。 ※noteで公開された内容は所属機関に関係ないものです。

マガジン

  • コミュニティ運営TipsやQ&A

    コミュニティ運営に関する過去のご質問や講演の補足などをまとめています。

  • 働きながら研究したいどこかの誰かに少しでも役に立てばいいな

    基本的には私の社会人院生としての振り返り+これから研究活動をしてみたいという方向けに役立ちそうなものをここに放り込みます。あくまで個人的な経験に基づく書きなぐりですので、過度に参考になさらないようご注意ください。そんなものでも何かお役に立つものがあれば幸いです。なお筆者は経営学、組織行動の先生の下でPh.Dを取っておりますので、分野的に近い方にはそれなりに参考になるかと思います。

最近の記事

  • 固定された記事

「博士課程に行ってみたい」という社会人の方への長い手紙。

そろそろ博士課程の振り返りをしようと思って、これを機にnoteを書いてみることにしました。最初の記事としては相応しいのではないかと思って。 ※本記事は2023年6月に書いたものです。文中にAIを使うことについての記述がありますが、LLMの進歩は目覚ましいものがありますので、お読みになっている時点の状況に応じて読み替えていただければと思います。なお、私はAIは適切な用法を理解して使う上では非常に有用だと考えています。 おかげさまで2023年3月に博士号を頂くことができました

    • コミュニティ運営の教科書(実践共同体の観点から見た一般書編)

      コミュニティ運営に関して、お勧めの本を聞かれるのでここにまとめておきたいと思います。選書基準は次の通りです。  1.丁寧な調査をベースとしたもの  2.経営学における学習や熟達、アイデンティティ形成の文脈に適する物 また、私は実践共同体をベースとしてコミュニティを捉えています。 以上を踏まえた上でご参考となさってください。 学びのコミュニティづくり―仲間との自律的な学習を促進する「実践共同体」のすすめ―(松本雄一 著) 私も普段お世話になっており、国内の実践共同体研究の第

      • OJC2024 有志団体総選挙にみる「良いコミュニティの運営」

        昨日開催されたONE JAPAN CONFERENCE 2024(OJC2024)にて、有志団体総選挙の審査員を務めてまいりました。今年も多数の企業から参加があり、素晴らしい活動結果が共有されました。本稿ではその内容から感じた、良いコミュニティの運営について書き留めておきます。私は当日早めの帰宅となってしまったので、ご参加の方々に置かれましては私からの講評コメントの代わりとしていただけたら幸いです。 有志団体総選挙とは これは企業の中で風土改革や新規事業創出、その他自分た

        • 経営学における実践共同体研究の現在地④

          やっと最終回です。では実践共同体研究はこれからどんな展開が可能なのでしょうか。 これまで見てきたように、実践共同体研究は4つに分類できました(詳細はは過去の②~③の記事を参照してください)。これらが実践共同体をどのような視点から見ているかをまとめると次のようになります。 これを利用して、今後どのような研究が可能か考えてみます。 元となっている論文はこちらです↓ 実践共同体の変容、あるいは象限間の関係性に関する研究 すでに確認してきたように、実践共同体の研究はそれぞれが

        • 固定された記事

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          7本
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          7本

        記事

          経営学における実践共同体の現在地③

          前回からの続きです。今回は残りの2つのタイプについて解説し、経営学における実践共同体の定義まで行きたいと思います。 元の論文はこちら↓ 外部連携実践共同体 これは組織的な実践(記事を跨いだので改めて書いておくと、1.組織目的の達成のために、2.組織的にルール化、あるいは暗黙的に慣例化された実践に、3.否応なく(つまり状況によって必然的に)従事している)だけれども、社外の人々が集まる実践共同体です。業界団体や企業間の越境学習プログラムなどが該当します。日本でこの分野の研究

          経営学における実践共同体の現在地③

          経営学における実践共同体の現在地②

          ↑元の論文はこちら 論文検索専用のシステムを使って700以上の論文をリストアップし、そこから具体的な実践共同体を取り扱っている物に絞り込み、日本の研究も加えて約350件ほどの論文をチェックしました。 その結果、原理派と実用派の議論を包摂できる整理として次のような形で分類しました。まずこの第二回では、なぜこのような区切り方をしたのかを解説していきます。 実践共同体はどこにあるのか? 実践共同体は人々の集まりですから社会の至る所にあります。それは物理的な空間を共有している

          経営学における実践共同体の現在地②

          経営学における実践共同体の現在地①

          先日機会をいただいて、関西学院大学さんが発行されている『産研論集』にレビュー論文を掲載頂きました。そのうちWEB公開されると思うのですが、一応「こんなの書きましたよー」と投稿したところ読みたいという方がたくさん連絡を下さり驚きました。自分が書いたものを発信していくって大事だなと思いました。 ※追記:公開されました↓ とは言え直接連絡くださる方は限られると思いますし、この論文で何がしたかったのか、少し自己解説しておこうと思います。なお、noteという事でゆるゆるフワフワのざ

          経営学における実践共同体の現在地①

          企業勤めでも研究者として暮らしていきたい、暮らしていく。

          中園先生の記事を見て、「研究職にある人もそうなのか…」と思ってしまった。きっとどの世界も恵まれた環境とそうでないところの格差は大きい。大学勤めですらない者として、何かを書かなければならないような気がした。これから二足の草鞋を履いてでも研究活動を続けていきたい人に、何か参考になれば嬉しいなと思いながら。 企業勤めが大学で博士号を取った後に待っているもの ビジネスパーソンが博士号を取るまでのお話は、結構大変だけどとても実りのあるものだよという思いを込めて書きました。ではその過

          企業勤めでも研究者として暮らしていきたい、暮らしていく。

          先行研究を読み進められない時に迷い込んでいる迷路の正体

          来月また博士課程での過ごし方について話して欲しいというご依頼が来たので、少し肉付けを考えています。一番最初に躓くのはやはり先行研究だと思うのですが、本日師匠である鈴木先生のゼミを聴講しながら考えたことをメモ代わりに3つのステップにまとめてみました。 ※ろくに論文も書けてないのにPh.D取っただけでエラそうにこういうことを話したり書いたりするのは大変恥ずかしく思っています。ただ、自分も先輩の経験談に助けられたことがとても多く、一部の方にはSNSでこういう情報を目当てにフォロー

          先行研究を読み進められない時に迷い込んでいる迷路の正体

          アフターコロナのコミュニティ運営:ROMが増える5つの理由

          ※この記事は2020年に書いたものをお引越ししたものです。 先日とあるコワーキングスペース運営者の方とのアフターコロナでのコミュニティについてROMの話題が出ました。 お酒も入ってたのでダラダラ話してしまったのですが、今後の研究の種になりそうなのでちょっとまとめておこうかと思います。結論から書くと「参加と実践のデザイン」がより重要になる、ということなのですがなんのこっちゃわからんと思うので順を追って行きます。 ※私は実践共同体という理論の研究者です。平たく言うと、みんな

          アフターコロナのコミュニティ運営:ROMが増える5つの理由

          自発的なメンバーが増える! やる気が芽生える「取り組み方のデザイン」

          ※この記事は過去に書いたものをnoteにお引越ししたものです。 本日の記事のもとになっているのはこちらの論文です。 実践共同体の学習活動における動機づけの発展についての研究 -「学習療法」実践の事例をてがかりに- 松本雄一(2014) http://www.jcss.gr.jp/meetings/JCSS2014/proceedings/pdf/JCSS2014_P3-7.pdf なお、ブログ向けに言葉を平易にしているので、厳密な内容は原著を確認してください。 学ぶ動

          自発的なメンバーが増える! やる気が芽生える「取り組み方のデザイン」

          「言われたことしかしない」若手が日の目を見た話

          前回はそもそも「自発性はあるけどそれが主たる仕事の方向を向いていない部下」を前提に記事を書いていましたが、「そもそも部下が言われたことしかやらない」とお悩みの方は多いでしょう。しかし、言われたことをやるだけ、その部下はしっかりしているのではないでしょうか。実はこれも同じ話なので、例を変えてお話しましょう。 私がある会社で営業育成をやっていた時、研修では抜群の評価を取っていたのですが、現場に配属されると鳴かず飛ばずだったB君という営業マンがいました。T君は海外経験があり、受け

          「言われたことしかしない」若手が日の目を見た話

          「自発的な部下が欲しい」と嘆くリーダーが受動的かもしれない話

          自発的な社員を増やしたいと言う時、ほとんどの場合その自発性は「自社にとって都合の良い」という前提が含まれています。実はすでに自発的な人は一定数います。ただ、自発性が個人に向くか組織に向くかはその後のコミュニケーションによって決まります。 部下が職分と関わりの薄い事の相談に来た時「まずはやるとこをやれ」とか「それはお前の仕事じゃない」「うちはそう言う文化」などと言われたというエピソードを聞いたことはありませんか。 このようなコミュニケーションがあるとき、部下は自発的に提案や

          「自発的な部下が欲しい」と嘆くリーダーが受動的かもしれない話

          博士号取得への道(という講演をしたのでメモ)~問いの話~

          ご依頼をいただき、そんなお話をしました。最初に書いた記事がいまだに見られており、しかもフォローまでいただくことがあるようなので、博士ネタとして書いておこうと思います。例によってn=1の個人的経験のお話ですのでご了承ください。 ケース:私の博士号に至るまでのマインド変化 ※ここは読み飛ばしてもいいですw※ 前回の記事が大変エラそうな内容でしたので「さぞこの人はちゃんと勉強したのだろう」と思われたかもしれませんが、実際は全くそんなことは無く、私の5年間はこんな感じでした。

          博士号取得への道(という講演をしたのでメモ)~問いの話~

          「なるほど、MBA取ってから博士に行けばいいんですね!」と言われたので「それは違う」と言った話。

          さて、成り行き的にですがnoteに博士課程とMBAの事を書いた通り、これまでこういった質問やご相談を受けることがありましたので自分の経験をもとに回答してきました。そうすると、タイトルのようなことを我が意を得たり! のようなテンションで言われることがあるので慌てて訂正することがあります。確かにMBAは修士号相当の学位(専門職修士)が得られますので、博士課程後期課程を受験することができます。できますが、そんな簡単なノリで考えていると撃沈します。ARMS読んでたらその点について補足

          「なるほど、MBA取ってから博士に行けばいいんですね!」と言われたので「それは違う」と言った話。

          「MBAに行ってみたい」という社会人の方への長い手紙。

          博士の話を書いたら「MBAはどうですか?」って聞かれるようになってしまったので、こちらについても少し書いておこうと思います。なお、これは私が通った神戸大学MBAをベースにしたお話しであり、他校だとどうかは分かりません。これについてもある程度共通してるんじゃないか、と言うところをかいつまんで書きますが、最終的には皆さん自身で説明会に行ったり卒業生に話を聞いたりしてご判断ください。 MBAホルダーの実態 これを読んでいるあなたがMBAに行きたいという理由は何でしょうか。昇進が

          「MBAに行ってみたい」という社会人の方への長い手紙。