ヘタフェ移籍の柴崎岳が、MFではなく2トップの一角として出場する理由

 ヘタフェに移籍した柴崎岳。スペインリーグ開幕戦を見事スタメン出場で飾った。目を引いたのはポジションで、中盤フラット型4−4−2の2トップ。2トップの一角というよりも、1トップ(ホルヘ・モリーナ)の脇というべきか。

 同系の4−4−2を布く鹿島では、主に守備的MFを担当していた柴崎だが、昨シーズンは左サイドハーフでもプレイした。「複数ポジションができれば、日本代表に選ばれる可能性も高まるから」とは、石井正忠監督(当時)が語った起用の理由だ。将来を見越した親心を感じさせる言葉だが、多機能な選手の存在は、監督采配にも好影響をもたらす。選手起用の選択肢を増やすことにつながる。

 中盤フラット型4−4−2は、基本的に10番、ゲームメーカー系の選手との相性が良好ではない布陣だ。その中に最適なポジションはない。守備的MF(センターハーフ)でもなければ、サイドハーフでもない。4−3−3のインサイドハーフ、4−2−3−1の1トップ下あたりが適した場所になるが、布陣を選択するのは監督だ。1選手の好みと、監督の好みが100%一致を見ることはない。選手が4−2−3−1がいいと言っても、監督が4−4−2だと言えば、選手はそれに従わざるを得ない。

 思い起こすのは、プレッシング全盛時代のイタリアだ。いわゆるファンタジスタは主に、その定番布陣である中盤フラット型4−4−2上のサイドハーフに位置していた。デルピエーロもユベントスでは、左サイドハーフとして出場。そこからゲームを作ろうとした。

 鹿島で左サイドハーフを務める柴崎を見た時、柴崎を鹿島のデルピエーロと評したこともある(2016年12月24日付メルマガ参照)。デルピエーロはしかし、ほどなくすると別の場所にポジションを移した。2トップの一角だ。ゲームメーカーと言うよりも、持ち前の高度なテクニックを、相手のマークがより厳しい高い位置で、瞬間芸のように、短時間で切れ味鋭く発揮するアタッカーに変身。ゴールも量産した。

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