実験なくして強化なし。勝利至上主義に傾倒してはいけない理由

 チャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ最終戦。目を奪われたのはスパルタク・モスクワと対戦したリバプールの爆発力だ。結果は7−0。途中で戦意喪失したスパルタクを、これでもかというほどボコボコに打ちのめし大勝した。
 
 試合はホーム戦。リバプールがCLの本大会に出場したのは、14−15以来3シーズンぶりだ。グループリーグ突破に至っては、実に9シーズンぶりの出来事になる。アンフィールドを埋めたファンの興奮に、後押しされたのか、選手は最後までブレーキを一切踏むことなく、大勢に影響のないゴールをプラス6点追加した。
 
 対照的だったのはレアル・マドリーだ。ホームにドルトムントを迎えた一戦で、前半12分までに2ゴールを奪うとペースダウン。ドルトムントに2ゴールを与えるサービス精神を発揮した。勝っても負けても、大勢に影響のない試合。スタメンおよび途中交代で出場する選手の顔ぶれ、さらには、フォーメーションや選手の配置を見れば、この試合に100%の力を注ぐつもりがないことは一目瞭然だった。
 
 だが、2−2のスコアで後半のなかばを迎えると、可能な限りテンポを上げる。そして後半36分、しっかり決勝ゴールを奪い、3−2で勝利を飾った。
 
 相手に必要以上のダメージを負わせない強者の嗜みを見た気がした。想起したのは、2001年3月、トルシエ・ジャパンがフランス代表に0−5で大敗した一戦だ。後半21分の時点でスコアは0−5。そのままプレーを続ければ、0−6、0−7と点差が広がっていきそうな、試合はまさに一方的な展開だった。
 

 4−2−3−1の3の右を担当していたロベール・ピレスがタッチライン際で、ボールを受け、前を向こうとしたその時だった。背後のフランスベンチから、ピレスに声が飛んだ。それに頷くとピレスは急に脱力。おもむろに身体の向きを後方に変え、バックパスに及んだ。そのまま攻め続ければ、チャンスは拡大したにもかかわらず。

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