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ビジネスのおもてなし

■外国人の目からみると

2013年の外国人旅行客は過去最高の1000万人を突破し、政府は20年には2000万人を目指しているようです。また日本に在留する外国人は約200万人ですが、この30年で3倍に増えているそうです。なかでも在留中国人は70万人だそうですから、3分の1を占めています。じわじわと増えて行く外国人、街中でも中国語の会話を耳にすることが増えていませんか。
異文化の接触において、お互いを理解することは重要です。しかも、日本のビジネス慣習やマナーは、まさに暗黙知です。日本ほど「すべき」論が多い国はないように思います。
法律や企業の就業規則以前に、慣習やあるべき行動・振舞いを前提に成り立っている社会です。
そして、日本人はビジネス上の慣習のおいても「おもてなし」の心を持ってしたいと考えているようです。

・「ご飯食べたか」が、挨拶の国
日本へ進出したばかりの大手中国企業に、赴任したばかりの中国人社員の研修に伺ったことがありました。皆さん、30代から40代の非常に礼儀正しい、本国でもエリートであることが推察される方達でした。
それでも、日本の担当者から聞いた課題は、挨拶をしない、他人の話に割り込む、時間を守らない、マナーがないので商談にいらしたお客様に対して恥ずかしい振舞いがあるのとのことでした。
まず、彼らに日本での発見、印象について尋ねてみました。既にここでも日本人と異なるのは、質問をするや否や即座に答えが返ってくることです。周囲の様子を伺って譲り合って発言するなどということはありません。
代わる代わる「日本人は細かいことにこだわり過ぎてスピードが遅い」と厳しい感想があげられました。総論がOKであるなら、各論や細かい書類はあとでも何とでもなるではないか、というのが彼らの考え方です。
一方、日本は予期した以上に美しい、清潔であることも一致した意見でした。

では、コミュニケーションについての印象はというと、「日本人はチームワークと言う割には、同僚の家族に紹介されたこともないし、隣の人がどういう人かも知らない。中国は、家族のことを含めて知っているし、いつも会う人にいちいち挨拶はしない」と言うではありませんか。そこに悪びれた様子はありません。
また、挨拶の言葉にしても「ご飯食べた?」がその代わりだと言うのです。
中国は貧しい時代が長く、友人や家族がご飯を食べているか聞いてあげることが、気持ちを示すことだそうです。尚、香港含めて南の人は商売人が多いから、商売上の損得を考えるから挨拶はする傾向があるとも教えてくれました。
これは、作法の問題ではなく、文化や背景の違いであり、善し悪しで語ることは出来ない、押しつけることは出来ないとあらためて感じました。
 おもてなしの心はあるが、型・形が異なっているのです。

このやり取りをしながら、社会学者の中根千枝氏が「タテ社会の人間関係」の中で語っている「日本人は論理より感情」ということを思い出しました。
中国人は、即座に自分達が観察した日本人を語り、自分達の行動の理由を語ります。
一方、日本人はと言えば、こうした場合、誰が話すのか序列や空気が気になるのです。
だから、挨拶の有無が気になるのではないでしょうか。
どちらが悪い・劣るということではなく、社会の在り方、文化的背景の違いです。
これらの違いを理解しあわなければ、型だけまねても、良好な関係を作ることは難しいでしょう。

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