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週刊 表の雑記帳 第一六頁_対北戦略の重要局面

 今週の目についた報道はtwitter参照。

近代化する北朝鮮のプロパガンダ戦術

 北朝鮮のプロパガンダと言われて何を思い浮かべるだろうか。そもそも、北朝鮮に対する我々のイメージは、よく報道で目にするような軍事パレードや、金正恩委員長の様々な施設への視察や、最近で言えば妹の金与正氏の過激な言動や、そういった類のものが多い。それが最近、変わってきているという記事が38 NORTHに掲載されていた(こちら)。若い北朝鮮の女性が平壌の街を案内するといった日常的な光景を配信する動画がyoutube等にアップロードされているようだ。例えば、ピザ屋さんに行ったり地下鉄に乗ったり、乗馬クラブに行ったり博物館に行ったり。まさに我々が日頃目にする北朝鮮のイメージとは真逆のものである。

いま、チャイナで人気

 そうした北朝鮮のチャンネルは、例えばEcho of TruthとかNew DPRKといったものがあるらしい(敢えてここではリンクを貼らないが、38 NORTHの記事からチャンネルに飛べる)。Echo of Truth…真実のこだま…こちらからするとギャグなのか自虐なのかと思ってしまうが、こうしたチャンネルがyoutubeやチャイナのweiboに動画をアップロードしており、youtubeでも数万人のチャンネル登録者数、weiboでは更に多いようだ。Echo of TruthもNew DPRKも裏では同じ集団が運営しているという情報もあるようだが、表向きはオリジナル動画と主張している。そんなことが北朝鮮のインターネットや情報統制体制下で可能であるとは誰も思わないだろうが。

キャッチーな動画を使ったプロパガンダには成功例がある

 一見すると笑い話のようなものだが、実はそうも言っていられないと私は感じた。こうしたナウい(という言葉が古いか…)というかキャッチーな動画を使ったプロパガンダには成功例があるからだ。近年の代表例は自称イスラム国ISではないだろうか。彼らも所謂キャッチーな動画を世界中に配信し、それに若者が感化され、協力者や構成員が世界中に広く深く浸透していった。個人的にはこうした動画に何も感じないが、確実にこれで影響を与えられる層が一定数いるのだ。北朝鮮の最近の現代的な動画を観て、術中に嵌る人たちが一定数いたとしても不思議ではない。

核兵器開発に邁進する北朝鮮

 しかし忘れてはいけないのは、北朝鮮は我が国のすぐ近くで、今も核兵器の開発に勤しんでいるという事実だ。これについても38 NORTHの記事(こちら)から引用したい。実は五月の朝鮮労働党中央軍事委員会では「核による抑止力」という表現が使われていたところ、六月の同委員会では「核による」という言葉が取れていたらしい。しかしこれをもって北朝鮮が核兵器の開発を小休止する、あるいは何らかの方針転換をすると見るのは性急で、それが今月の同委員会を報じた写真からも分かるという(下の二枚の写真はいずれも38 NORTHの記事から)。

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 洪承武(ホン・スンム)とリ・ホンソプ(漢字不明)両氏が北朝鮮における核兵器開発の最重要人物らしいのだが、両氏揃い踏みでしっかりと今月の朝鮮労働党中央軍事委員会に出席している。上の写真で立って発言しているのが洪承武氏。下の写真の右側の長机にいる四名のうち、左から二番目が洪承武氏、一番右がリ・ホンソプ氏。ここからも、米国の長期的な脅威に対抗するための核兵器開発を含めた軍事力の強化という北朝鮮の従来からの方針に変更はないと受け取れる。

鍵を握る米韓同盟、そのとき日本は

 ではこのような動きを続ける北朝鮮に対して世界は座視しているだけなのか、というのが次の論点。北朝鮮を抑えたい西側自由陣営として最も重要なのはやはり隣国の韓国、そして同盟を組む米国。北朝鮮の傀儡と成り果てている文在寅大統領の政権下でどこまで期待できるのか。文大統領が活動家であったことはwikipediaにも書いてあるくらいだし様々な識者と呼ばれるような人たちが指摘しているところだが、それどころか北朝鮮からその活動を支援されていたといった噂まで目にすることがある。その真偽は私には分からないが、いずれにせよ文大統領が北朝鮮に対して何も言えない、まさに北朝鮮が作り上げた傀儡大統領であることは、最近の北朝鮮の韓国に対する態度を見ても否定できないだろう。故に、米国と韓国からそれぞれ発せられる北朝鮮に対するメッセージは、噛み合っていないというかベクトルが異なる向きであることも少なくない。しかしこの38 NORTHの記事では(こちら)、そうは言っても実は水面下で米韓はしっかり軍事力を増強しているということが記載されている。

 そうなってくると、北朝鮮に対する抑止における課題は能力ではなく責任ある意志だ。カタカナ語でいうところのコミットメントだ。北朝鮮はこれからも挑発を止めないだろうが、大事なことはその挑発が意味をなさないと北朝鮮に理解させる米韓の揺るぎない態度だ。そこがブレると、北朝鮮は変わらない。挑発が意味をなさないと北朝鮮が悟ると、北朝鮮はチャイナに協力を求め、チャイナへの依存度が更に高まる。そこにこそ、我が國の拉致被害者を救出する希望がある。自衛隊を投入して力によって奪還できない(私は違う意見だが)、あるいはそのためには憲法典の改正が必要(これについても私は違う意見だが)と一般的に言われている現状では、チャイナからの圧力で北朝鮮を動かすというのが拉致被害者の奪還に繋がる道と思われる。であるならば、まずはその状況を作らねばならない。米韓に我が國もより協力・連携する形で(日韓関係は頭痛の種だが)北朝鮮により強力な圧力をかけメッセージを発し、北朝鮮のチャイナ依存度を更に高める。今の米中関係や武漢ウイルスを含むその他の要因がチャイナを苦しめているこの状況は、チャイナ依存度を高めた北朝鮮に対してチャイナが圧力をかけるためには良い方向に作用する。日本が動くときは今である。

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