今月の作文「最近の印象に残っているニュース」


 緊急事態はひとまず収束したが、想定こそされていた第二波、第三波が押し寄せてきて、まだまだ息苦しさを感じる。どちらかといえば精神的なほうよりも身体的に呼吸がしにくいというダイレクトな息苦しさだけど。特に施設外就労では灼熱地獄なのもあって、毎回ボロボロになって帰ってくる。

 スポーツや興業は観客数を少なくといった対策で再開が始まっているが、棋界は渦中でもあまり影響を受けなかった。それだけ伝統を守りたいという意地があったのかなと思う。実質対局に関わる人間しか部屋に入ることも出来ないし、報道陣が押し寄せる時以外はリスクもないしな。
 先日、例年より2ヶ月遅れで始まった第78期名人戦。徳川家康公から始まる最高峰のタイトルだ。永世竜王・棋王として圧倒的な強さを誇っていた渡辺二冠が、プロ25年目にして悲願の名人位を獲得することとなった。本当に、本当に長く険しい道のりだった。
 
 藤井棋聖や羽生永世七冠と同じく中学生プロ棋士となった渡辺明。この2人のように物腰が穏やかというタイプでもないのであまり認知度は高くないが、いわゆる羽生世代を生き抜いた人物のひとり。羽生先生の永世七冠となる最後の壁、竜王位を最後の最後まで防衛したのも彼だ。そんな彼でも名人位を獲得するまでにこれだけの時間がかかったのだから、どれだけ熾烈なタイトルなのかわかるだろう。
 この20年で名人を名乗れたのは、彼を含めてたったの6名。これはどういうことかというと、2002年から2015年までの13期の間、名人が森内俊之と羽生善治しかいなかった。谷川元会長曰く「森内羽生というこの6文字がそろそろ俳句の季語になるんじゃないか」というぐらいの独占っぷりだった。
 その後、森内名人は事実上の引退、羽生名人も佐藤天彦八段に敗れ、ようやく誰もが名人位を狙える形になった。そうしたところに渡辺名人は世界ランキング十傑であるA級在籍者全てに勝ち名人戦挑戦を決め、そのまま豊島名人から奪取。こんなトントン拍子に名人を取ってしまうなんて…となかなか混沌としてきて観る将としては面白くなってきた。

 そして、今将棋界で一番有名な藤井聡太くん。名人戦は他の棋戦と違って1期ずつ組を上がっていかないといけないので、挑戦まで最短でも5年かかる計算だ。最短こそ逃したが、この調子のままいくと同じく中学生でプロデビューを果たした谷川先生の最年少名人の記録を更新するかもしれない。この流れだと、その時対峙する相手は渡辺名人の可能性が大いにある。棋聖戦の雪辱を果たすという意味でもかなりアツい戦いになりそうだ。しかし藤井くん以外でも注目ポイントはまだまだたくさんある。自分は振り飛車党総裁こと久保利明先生を全力で応援、9月から始まる王座戦の挑戦を決めたし、なんとしても奪取して欲しい。A級の菅井くんもなんとか踏ん張ってA級維持を頑張って欲しいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?