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統計はなぜ難しいのか?

統計はなぜ難しいのか?

 その理由を考えてみた。

(理由1)「サイコロ= 1/6、ジャンケン= 1/3、コイン投げ= 1/2」が染み付いているから。
 中学・高校の確率の授業では、ほとんどの場合「サイコロなら 1/6、ジャンケンなら 1/3、コイン投げなら 1/2」から話が始まる。けれども、統計ではそれらが分からない状況にある。むしろそれらを探ろうとするのが統計だ。つまり中学・高校の確率で大前提とされているものが、統計では目標になる。その意味で、中学・高校の確率と統計とは目線が逆を向いている

(理由2)中学・高校の確率計算で、○×がつく問題ばかりをやってきたから。
 「絶対にある(確率1)とも絶対にない(確率0)とも言えない」から確率を考えている(0と1の間で評価する)はずなのに、中学・高校の確率の授業では○(正解)か ×(間違い)かがはっきりする問題ばかりを扱っている。ところで統計では、結局のところ確実なことは何も言えない。どうあがいても○(絶対に正しい)にはならない。

(理由3)「確率の値は前提として与えられるもの」という発想に縛られているから。
 確率計算を経て「損か得か、有利か不利か」を評価する指標が「期待値」だが、そこにおいても中学・数学の確率では「サイコロ= 1/6、ジャンケン= 1/3、コイン投げ= 1/2」が大前提となっている。そのために「確率を調整して期待値を上げよう」という発想が生まれない。けれども、それでは期待値計算が上手く生かされているとは言えない。確率は調整することで現実の力になる

 あえて普段自分がやっていることを全否定するような書き方をしてみた。「一理ある」と思っている。

統計を高校数学でやらない訳

(2018年2月)高校の数学に統計は「一応入っている」と言えますが、「事実上は入っていない」とも言えます。どういうことかというと、「選択して履修することはできる」けれども「ほとんどの場合、選択しない」からです。実際、大学入試にはほとんど出ません。センター試験には一応出ますが、それも選択問題として出るのであって、受験生のほとんどは統計を選択しません。国公立の2次試験や私立大学の入試ではまず出ません。
 詳しく説明しますと、統計は数学Bの教科書に入っているのですが、数学Bには「数列、ベクトル、統計」の3つの分野があって「それらから2つを選択して履修する」ことになっています。文科省の定めた学習指導要領でそうなっているわけです。ですから表向きは3つのうちどの2つをとってもいいはずなのですが、現実にどれをとるかとなると、大学入試と絡めて判断することになります。
 では大学入試はどうなっているかというと、大学側の事情からすれば、受験生が履修したものに合わせて何種類もの入試問題を作ることは出来ません。そこで「うちの大学では、これとこれの分野から出題する」とあらかじめ宣言するわけです。そして結局のところ、ほとんどの大学が「数列とベクトルから出題する」ということになっているわけです。
 センター試験だけは文科省の定めた学習指導要領に従って、数列・ベクトル・統計の各分野から1題ずつ出題して「その中から2題選択する」という形になっています。けれども、これではほとんどの受験生は数列とベクトルを選択するに決まっています。センター試験を受ける人の多くは2次試験や私大を受けるわけですから、そのために数列とベクトルを勉強します。そうであれば、センター試験でも数列とベクトルを選択するのが合理的と言えるでしょう。そういうわけで、センター試験で統計を選択をする人は非常に少ないのです。そしてそれ以前に、授業で統計を全くやらない高校が大半なのです。
 一方で、大学に入ってからは文系・理系を問わず、多くの大学生は統計を学びます。そしてみんな苦労しているようです。苦労していると言うより、モノになっていないと言った方が良いかもしれません。有名大学でも同じでしょう。

「データ分析」が個別入試からほぼ消えた

(2018年3月)2015年度に大学を受験する学年から高校「数学Ⅰ」に「データ分析」が入って、その 初年度 と翌 2016年度 に一橋大学でその範囲から出題された(どちらも選択問題だったので、データ分析を選択しなくてもよかった)。けれども2017年度と2018年度には出題されていないので、結局のところ2回出たっきりで、これで終了ということなのかもしれない。
 センター試験では必ず出る範囲だが、個別試験でその範囲から出題する大学はほとんどない。一橋大学が例外的にそこから出していたわけだが、これでほぼ絶滅状態になったと言えそうだ。
 また、高校「数学B」に「確率分布」があるにはあるが、こちらも事実上大学入試にほとんど出ない(例外は 慶應大学SFC)。こうして相変わらず 高校で統計を学ばない現状が続いているということになる。
 「人工知能時代だからこそ統計を学ぶべき」だと私は考えていて、教材作りに励んでいる。今はまだ日陰者の感があるが、陽の当たる日がやがてやってくる。

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統計の勘所 〜 
▷ サイコロでばらつき具合を体感する
▷ 正規分布の作り方、そして崩れ方 
▷ 統計はなぜ難しいのか?     

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