パスカルの三角形の裏事情
パスカルの三角形を書けば $${(a+b)^n}$$ の展開式の各項の係数を簡単に求めることができる。たとえば、
$${(a+b)^n=a^5+5a^4b+10a^3b^2+10a^2b^3+5ab^4+b^5}$$
という具合である。
パスカルの三角形の書き方は、
○ 各段両端は 1 。
○ 上段の2数の和を、2数の真ん中下段に書く。
○ これを繰り返す。
これだけである。上から n 段目の数が $${(a+b)^n}$$ の展開式の各項の係数というわけである。
さて、今日は「なぜそれでうまくいくのか」を考えよう。
1.パスカルの三角形の中の数は、元をただせば 「$${(a+b)^n}$$ の展開式の $${a^{n-r}b^r}$$ の係数 $${_nC_r}$$ 」である。
∵) $${(a+b)^n=(a+b)(a+b)…(a+b)}$$
$${n}$$ 個の $${(a+b)}$$ から $${a}$$ か $${b}$$ のどちらかを取る。
$${n}$$ 個のうち $${b}$$ をちょうど $${r}$$ 個取る場合の数は $${_nC_r}$$ 通り。
これがそのまま $${a^{n-r}b^r}$$ の係数 になる。
すなわち、上右の $${_○C_○}$$ の図が元々のパスカルの三角形である。
2.上右図の左端は一般化すると $${_nC_0}$$ だが、$${_nC_0=1}$$ である。
※ 「$${n}$$ 個の中から 0 個取る」場合の数は「何も取らない」という1通り。
また、上右図の右端は一般化すると $${_nC_n}$$ だが、$${_nC_n=1}$$ である。
※ 「$${n}$$ 個の中から $${n}$$ 個取る」場合の数は「全部取る」という1通り。
→ 以上から「パスカルの三角形の両端の数は 1 」であることが確認できた。
3.パスカルの三角形は左右対称である。式で表すと $${_nC_r=\,_nC_{n-r}}$$ となる。
※ 「40人のクラスで運動会の棒倒しに出場する38人を選ぶ」には「出場しない2人を選ん」でも同じこと。
すなわち $${_{40}C_{38}=\,_{40}C_{2}}$$ 、一般に $${_nC_r=\,_nC_{n-r}}$$ が成り立つ。
4.パスカルの三角形で「上段の2数の和を、2数の真ん中下段に書く」とした部分は、一般的には $${_nC_r=\,_{n-1}C_{r-1}+\,_{n-1}C_r}$$ という式で書ける。
※ 「40人のクラスで10人の掃除当番を選ぶ」場面を想定してみよう。
僕自身は選ばれたくないが、選ばれてしまうかもしれない。
僕自身が選ばれない(ラッキーな)場合は、僕以外の39人の中から10人選べば良いので $${_{39}C_{10}}$$ 通り。
僕自身が選ばれる(アンラッキーな)場合は、僕以外の39人の中から9人選べば良いので $${_{39}C_{9}}$$ 通り。その両方を合わせたものが総数 $${_{40}C_{10}}$$ だ。
すなわち $${_{40}C_{10}=\,_{39}C_{9}+\,_{39}C_{10}}$$、一般に $${_nC_r=\,_{n-1}C_{r-1}+\,_{n-1}C_r}$$ … ① が成り立つ。
※ ①について、一般的には $${_nC_r=\dfrac{n\textit{!}}{(n-r)\textit{!}\;r\textit{!}}}$$ を使って、次のように証明できる。
$${_{n-1}C_{r-1}+\:_{n-1}C_r=\dfrac{(n-1)\textit{!}}{(n-r)\textit{!}\;(r-1)\textit{!}}+\dfrac{(n-1)\textit{!}}{(n-r-1)\textit{!}\;r\textit{!}}}$$
$${=\dfrac{r(n-1)\textit{!}}{(n-r)\textit{!}\;r\textit{!}}+\dfrac{(n-r)(n-1)\textit{!}}{(n-r)\textit{!}\;r\textit{!}}}$$ ←┘通分
$${=\dfrac{n(n-1)\textit{!}}{(n-r)\textit{!}\;r\textit{!}}}$$ ←┘分子を整理
$${=\dfrac{n\textit{!}}{(n-r)\textit{!}\;r\textit{!}}=\:_nC_r}$$
以上から、先ほど書いた単純な操作の繰り返しで $${(a+b)^n}$$ の展開式の各項の係数を書き出せることが示せた。
めでたし、めでたし。
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〜 順列と組合せとその周辺 〜
▷ 重複順列と重複組合せ
▷ パスカルの三角形の裏事情
▷ 3項定理とパスカルの四面体
▷ 場合の数の数え方と確率の数え方の違い
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