連載記事(2015中)
理由を3つ挙げる
(2015年5月 77号)
年度初めに情報科の授業でタイプ練習をしますが、自分で考えて1行程度の文章を書かせるようにしています。その際いろんな視点でいろんな立場で考えさせるために、各問いに「3つずつ」挙げさせています。たとえば、
おそらく多くの人もそうだと思いますが、ウチの学校でもローマ字入力をさせています。実際に文字を入力しながら、「どうして今ローマ字入力しているんだろう?」と考えてほしいわけです。他には、
公式な正解があるわけではありませんが、多くの人が「なるほど、そりゃそうだ」と思うようなものを挙げてください。
どちらの問いも1つなら簡単に挙がるかもしれませんが、「3つ挙げろ」と言われるといろいろあれこれ考えるでしょう。それが狙いです。そしてそれを「1行で」コンパクトにわかりやすくタイプしてもらおうというわけです。
ここで上の問いの解答例のうち典型的なものを1つずつ挙げておきます。
しつこいようですが、他にも2つ挙げてくださいね。さて、定期試験では次のような問題を出しました。
さて、上の「カギ括弧」のようになった理由として、インド特有の要因がいくつか考えられます。それを3つ挙げてください。
その話を情報科の授業で扱ったわけではありませんが、情報科に関連する話題ですし、その理由のいくつかは地理や歴史の授業でもしくはテレビで聞いたことがあるでしょうから、お構いなしに出しました。解答例を1つ示しますと、
授業ではこの後「自分の主張に理由を3つ挙げる」→「1行で反論する」と続きます。上の問の他の解答例や授業のその後の展開については、拙著「高校生が学んでいるビジネス思考の授業」をご覧ください。
論理式はデジタル仕様
(2015年6月 78号)
論理式では真を1で、偽を0で表します。デジタルではオンを1で、オフを0で表します。その中間(1と0の間の値、真か偽かわからないもの、オンかオフか微妙な状態)はありません。つまり、論理式とコンピュータの仕組みはそっくりなのです。現にコンピュータの中で論理回路は頻繁に使われています。
ウチの学校ではデジタルの理論を学習した後で、引き続いて論理式をやっています。論理式では「∧(かつ),∨(または),⇒(ならば),~でない(上バー)」の4つの記号を使います。(※ 論理学では「∀(すべて),∃(存在する)」とあわせて6つの記号を使うことが多いですが、∀と∃はコンピュータの中では使われないので、授業では扱っていません)
では、さっそく【問題】です。
正解は、次の通りです。
(1) ア:トートロジー(恒真式) カ:矛盾式(恒偽式)
(2) イ:P∨Q ウ:P⇒Q エ:P∧Q
オ:(Pでない、Pの上にバーをつけて表す)
表中のイ,ウ,エ,オの値(1か0か)が「∧,∨,⇒,バー」の定義にあたります。表中アのトートロジーは「常に正しい」ということです。
授業では、定義に基づいて表に1か0を書き込みながらいろんな論理式の真偽を判定することをやっています。さらに進んで、いろんな文章から骨格を抜き出して、それを条件式P,Q,Rと「∧,∨,⇒,バー」の記号を使って翻訳して、表に1と0を書き込みながら「それが筋の通った議論かどうか」を判定させています。ここメルマガではテキストでしか書けませんし字数制限もありますので、真偽判定の仕方や文章の具体例などは示せません。興味のある方は、拙著「高校生が学んでいるビジネス思考の授業」(→ http://books.cccmh.co.jp/list/detail/1410/ )をご覧ください。
エクセルに計算ミスさせろ
(2015年7月 79号)
電卓に計算ミスさせるのは簡単です。「1÷3×3」を計算すると「1」にはなりません。「1÷3」は割り切れませんから、そこまで入力した時点で「0.333…」となって、続いて「×3」と入力すると「0.999…」と表示されます。
一方、エクセルのセルに関数式「=1/3*3」を入力すると「1」と表示されます。エクセルはその程度では計算ミスしません。エクセルに計算ミスさせるには、もうちょっと工夫が必要です。比較的簡単な方法を1つ紹介しましょう。実はエクセルで「0.1を足し続ける」と60回目に計算ミスを起こします。
具体的な手順を説明しましょう。まずA列を小数点以下15ケタ以上表示するように設定してください。ホームリボンの「数値」の中の1つのボタンをクリックすることで設定できます。続いてセルA1に「0.1」と入力して、セルA2に関数式「=A1+0.1」を入力して、セルA2の式を下方向にコピーしてください。こうするとn行目のセルの値はn/10になるはずです。ところが60行目のセルA60の値は「6.000…」にはならずに、「5.999…」となってしまいます。61行目以降も所々で計算が合わないところが出てきます。
ところで、エクセルで「0.5を足し続け」ても計算ミスは起こりません。さて、その差がどこにあるかというと、デジタルの仕組みにあります。コンピュータの中では二進数で計算します。十進数の0.5は二進数では「0.1」という割り切れる数だから誤差なく計算できますが、十進数の0.1を二進数に直すと割り切れない数(循環小数)になりますからどんなに細かく計算しても必ず誤差が生じるのです。
なお、2012年度から始まった新しい数学のカリキュラムでは「二進数の小数計算」も「循環小数」も扱うようになりましたから、上の話は理解できる(はずです)し、十進数の0.1や0.5を二進数で表すこともできます。
ところで「0.1+0.1+0.1+…」と「0.1を足し続ける」と誤差が生じますが、「0.1×n」の計算をしても誤差が生じません。そのことを使うと、エクセルのシート上でどこで誤差が生じたのかをすぐに見分けるような関数式を作ることもできます。たとえば上記のようにA列に「0.1を足し続けた値」を表示させて、B列に「=IF(A列n行目の値=0.1×n,” ”,”誤差”)」のような式を入力すると、誤差が生じた行だけ「誤差」と表示されます。
このネタ、エクセルの実習としてもイケます。そして試験問題にもなりえます。エクセルの関数式を問うたり、エクセルの使い方(小数点以下の表示ケタ数の増減)を問うたり、十進数と二進数の変換(有限小数、循環小数)を問うたり、いろいろ出せます。
1枚のカード問題
(2015年8月 80号)
論理式では真を1で、偽を0で表します。デジタルではオンを1で、オフを0で表します。その中間(1と0の間の値、真か偽かわからないもの、オンかオフか微妙な状態)はありません。つまり、論理式とコンピュータの仕組みはそっくりなのです。現にコンピュータの中で論理回路は頻繁に使われています。ウチの学校ではデジタルの理論を学習した後で、引き続いて論理式をやっています。
ところで、論理式で使う4つのパーツのうち、ちょっと引っかかるのが「⇒」(ならば)だと思います。「⇒」の論理値は次の通りです。
それについての問題です。次の問題、答えは1つに決まります。
「奇数の裏が素数」というとき、「偶数の裏は?」どうであればいいのかというと、何でもいいんですね。偶数の裏が素数であっても素数でなくても、「奇数の裏面が素数」と矛盾しませんから。
そしてこのことは、「⇒」の定義とバッチリ符合します。Pが0のときはQの値に関わらず「P ⇒ Q」の論理値は1ですから。上の定義の(2)がそれに当たります。
さて、カードの片面は9です。9は奇数ですが、素数ではありません。9を上にして置いた場合、「奇数の裏面は素数」が正しいということは、9は奇数ですから、下面に書かれている数は「素数」でなければならないことになります。上の定義の(1)がそれに当たります。
問題は、9を下にして置いた場合です。9は素数ではありませんから、もし上面が奇数なら、「奇数の裏面が素数」に矛盾します。というわけで、上面に書かれている数は「奇数でない数」つまり「偶数」でなければならないことになります。
以上から、答えはズバリ、2です。「片面に9、もう片面に2」が書いてあるカードを考えてみてください。「9の裏は2」ですから「奇数の裏は素数」に合いますね。上下ひっくり返すと「2の裏は9」となりますが、2は奇数ではありませんから「奇数の裏は素数」と矛盾しません。
この問題では「9の反対の面に書かれている数字」は「素数であって、かつ奇数でない数(=偶数)」でなければならないことになりまして、そんな数は2しかないわけです。
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