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連載記事(2015前)

自動席替えシート

(2015年1月 73号)

 席替えは案外難しい。誰かに任せたら何かしら思惑が入りそうで,みんなが納得できるものになるとは限らない。かといってジャンケンしたら,アイコばかりが続いていつまで経っても決着がつかないだろう。くじ引きするのも時間がかかる。

 そうだ,エクセルで自動席替えシートを作ってしまおう。乱数を利用すれば,公平でみんなが納得できる座席表を作れそうだ。「シート再計算」ボタンを押せば何度でも使えるから,きっと重宝するはず。

 では,ここで【問題】です。


○ 横6列×縦7列=42名の教室を想定して「自動席替えシート」を作りましょう。

 下表のセルH1~M7が完成形です。そこに1~42の数を1つずつ書かせます。

 セルA1~F7はフリースペースです。自由に使ってください。

 セルA1とH1の関数式を答えなさい。ただし,右方向・下方向にコピーして正しく動く式を答えること。



    ABCDEFGHIJKLM

  1 □□□□□□ □□□□□□

  2 □□□□□□ □□□□□□

      :      :

  7 □□□□□□ □□□□□□



 使ってよい関数は,

 ◇ =RAND()       (乱数)

 ◇ =RANK(数値,範囲)   (順位)

 ◇ =ROUND(数値,桁数)   (四捨五入)

 ◇ =ROUNDDOWN(数値,桁数) (切り捨て)

 ◇ =ROUNDUP(数値,桁数)  (切り上げ)

 のいずれかとします。



 余談ですが,「席替えしたのにまた同じ席になっちゃったよ」という人が,クラスの中に1人以上いる確率はどれくらいになると思いますか?

 実は4人以上のクラスであれば人数に関わらず,その確率は約63%に(正確に言うと,その確率を四捨五入して小数第2位までで表すと0.63に)なります。ところで,その状況は次のケースと同じです。「クリスマス会のプレゼント交換で,みんなが持ち寄ったプレゼントを一人に1個ずつ配ったら,自分が用意したものが自分のところに来ちゃう。クリスマス会に参加したうちの誰かがそういう目にあう」,そうなる確率が約63%だということです。

 この値,意外と大きいと思うんじゃないでしょうか。しかもそれが人数に因らないということも意外なんじゃないでしょうか。これをきちんと計算で確かめるには「完全順列」を使えばよいのですが,これ以上の説明はここでは省略します。



 この問題の正解は,「A1の式:=RAND()」で,「H1の式:=RANK(A1,$A$1:$F$7)」です。やっていることはシンプルで,要するに「セルA1~F7で乱数を発生させて,セルH1~M7で大きい順に番号を振っている」だけです。設問の中に示したROUND系の関数はダミーです。授業で扱った関数のうちアルファベットのRで始まる関数を並べてみました。

入試の合否判定

(2015年2月 74号)

 入試のシーズンですね。みなさん,お疲れ様です。では,さっそく【問題】文を示します。


○ いまさらですが,○○高校入学おめでとうございます。ちょっと気が早いですが,2年後には大学受験ですね。今から結果が楽しみです。さて,今日は入試の合否判定の現場を覗いてみることにしましょう。次の空欄①~⑦に関数式(または関数式の一部)を入れなさい。ただし,下方向にコピーして正しく動く式を答えること。


  行番号

   ↓   A    B   C   D  E   F ←列番号

   1          ボーダー□□(点)

   2  受験番号 科目A 科目B 合計 合否 補欠

   3    1   73   88

   4    2   61   70

   5    3   91   52

   :    :   :   :


(1) まず,D列に科目Aと科目Bの合計点を表示します。セルD3の式は( ① )です。

(2) セルD1にボーダーの点数を入力します。科目Aと科目Bの合計点がセルD1の値以上であればE列に「合」の文字を表示し,そうでなければ何も表示しないようにするには,セルE3の式を( ② )とします。

 続けて,補欠合格について考えましょう。ボーダーより1点低い者を「第1補欠」,2点低い者を「第2補欠」,3点低い者を「第3補欠」とし,それぞれを数字の1 , 2 , 3でF列に表示することにしましょう。セルF3の式を次のようにすればそれが可能です。

 = IF ( ③, ” ” , IF ( ④, ” ” , ⑤))
(3)
 ところで,実際の入試では他の合否基準を採用する場合もあります。

 《例1:一芸入試》
科目A,Bのうち少なくとも一方が90点以上であればE列に「合」の文字を表示するには,セルE3の式を次のようにすればよい。

 = IF ( ⑥, ”合” , ” ” )

 《例2:足切り》
合計がセルD1の値以上で,かつ科目Bの得点が50点以上であればE列に「合」を表示し,それ以外は何も表示しないようにするには,セルE3の式を( ⑦ )とします。


 要するにエクセルのIF関数の問題ですが,入れ子構造にしなければならないものは難しいかもしれません(AND関数とOR関数を使っても同じことを実現できます)。解答例は次のようになります。


  ① =B3+C3 または =SUM(B3 : C3)

  ② =IF(D3>=D$1 , ”合” , ” ”)

  ③ D3>=D$1  ④ D3<D$1−3  ⑤ D$1−D3
  ⑥ MAX(B3:C3)>=90

  ⑦ =IF(D3>=D$1 , IF(C3>=50 , ”合” , ” ”) , ” ”)


 エクセルの関数の種類は山ほどありますが,IF関数と$マーク(相対参照・絶対参照)と基本関数(SUM,AVERAGE,MAX,MIN,COUNT)と四則計算だけでもかなりのことができます。

スペース・バーの働き

(2015年3月 75号)

 新年度4月に情報科の授業ではタイピング練習をします。その際に、ただ早打ちさせるだけではつまらないので、1行程度のちょっとした文章を書かせています。その中の1つです。

○ パソコンで日本語を入力する場合、スペース・バーには2つの働きがあります。
 どんな場合にどのような働きをするかを、2つに分けて説明しなさい。

 もちろん授業中にはその2つの働きを、みんなうまく使い分けています。でも「説明しろ」と言われると、意外と難しいようです。
 「スペース・バーの2つの働き」とは、単純に言えば「漢字変換とスペース入力」ですが、その答えでは残念ながらマルはあげられません。設問中の条件「どんな場合にどのような働きをするかを、2つに分けて」を満たしていないからです。
 だって考えてみてください。同じキーを同じように打ちながら、あるときは漢字変換をし、あるときはスペースを入力するわけですよね。この問いは「どんな場合に漢字変換をして、どんな場合にスペース入力するのか」を求めているわけです。
 そうすると、次のように答える生徒が出てきます。「漢字に変換したいときは漢字変換をして、スペースを入力したいときはスペースを入力する」と。でも、そのように書くと「パソコンがあなたの意向を汲み取って、使い分けてくれる」ように読めてしまいます。でもそんなはずはありませんから、その答えもボツです。
 上の問いには、次のように答えればいいでしょう。

○ 入力した文字が未確定のときは漢字変換をし、それ以外のとき(確定した後)はスペースを入力する。

 類題として、上の問いの「スペース・バー」を「エンター・キー」に書き換えれば別の問題が作れます。試験では、次のような問題を出しました。

○ ワープロで文書を作成中に、「Deleteキー」と「Back Spaceキー」のどちらを押しても同じ結果になる場合もあれば、使うキーによって違う結果になる場合もあります。
① どういう場合にどのように同じ結果になるのかを、簡潔に説明しなさい。
② どういう場合にどのように違う結果になるのかを、簡潔に説明しなさい。

解答例は、

① 文字列を選択したとき、(どちらのキーを押しても)選択した文字列が消去される。 
② 文字と文字の間にカーソルを置いたとき、「Deleteキー」を押すとカーソル位置の後ろの文字が消去され、「Back Spaceキー」を押すとカーソル位置の前の文字が消去される。

 この問題では、説明するのに苦労するよりも、そもそも2つのキーの違いを認識していない(使い分けていない)生徒が多かったようで、正答率は低かったです。

ジャンケンのルール・ブック

(2015年4月 76号)

 新年度4月に情報科の授業でタイピング練習をします。その際に,ただ早打ちさせるだけではつまらないので,ちょっとした文章を書かせています。その中の1つです。

○ 日本語は堪能だけれども,ジャンケンを何も知らない人がいます。「2人でジャンケンして勝ち負けを決める」やり方を,1000字以内で正確にわかりやすく説明してください。

 書くべきことはたくさんあります。
   ◇ グー・チョキ・パーの手の形
   ◇ 勝ち負けのパターン
 まずこの2つは必須ですね。でも,まだ足りません。
   ◇ 手を出すタイミング
   ◇ 「あいこ」について
 「両者が手を同時に出す=後出しは反則」というルールを伝えなければいけません。
 また,忘れがちなのが「あいこ」です。しかし「あいこの場合はもう一度」と言っても,相手には伝わりません。設問にあるように,相手は「ジャンケンのことを何も知らない」のですから,「『あいこ』とはどんな状態のことか」を説明しなければなりません。
 さらに,1000字も書いていいのですから,具体例を書くとより解りやすくなるでしょう。実際生徒に書かせると,プラスアルファでいろいろ書いてくれて,私も勉強になります。例えば,
  ◇ 「グー,チョキ,パー」のことをアメリカでは「Rock,Scissors,Paper」とよぶ。
  ◇ 「ジャンケン」という名前は中国の拳法「蛇拳」に由来する。
  ◇ 日本には昔から「キツネ拳」というものがあって,キツネは猟師に負け,猟師は庄屋に負け,庄屋はキツネに負ける。
 今どきの高校生はすぐにネットで検索するからでしょうか。意外とトリビアな知識を持っていたりします。

 さて,試験では次のような問題を出しました。

○ エクセル操作中にマウスを動かすと,下の(1)~(6)のようにカーソルの形が変わり,マウス操作だけでいろんなことができるようになります。マウスを使って関数式をコピーする手順を分かりやすく説明しなさい。ただし,説明文の中で次の(1)~(6)のいずれかを「カーソルが(1)の形になったときに」のように使うこと。
(1)(白い十字形) (2)(黒い十字形) (3)(黒い右向き矢印) (4)(略) (5)(略) (6)(略)
※ 実際の試験ではカーソルの形を図で示しましたが,ここでは図が使えませんので,文字で書きました。

 <解答例>は次の通りです。

○ 選択したセルの枠線上の右下角にカーソルを移動して,カーソルが(2)の形になったときに,そこから右方向または下方向にドラッグする。

「右下角,(2)の形,ドラッグ」の3つは必須です。「ドラッグ」という言葉を使わずに説明すると,あいまいな表現になりがちです。

◇      ◇      ◇

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