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現代文明は「石油文明」である

 「地球温暖化」や「自然エネルギー」の話になると、みんな、石油を悪者扱いしているように見えます。でも、そんな扱いでいいんでしょうか? そんなわけで、今日は「石油」について考えます。

「発電」は石油の能力のほんの一部

 石油は、発電だけに使われるのではありません。「石油=原油」を精製すると、たくさんの種類の石油製品ができます。

LPガス、ナフサ、ガソリン、軽油、灯油、重油、アスファルト

 発電のための燃料は「重油」ですが、私たちが石油を発電以外の いろんな用途に利用 しています。ナフサは化学工業の原料です。プラスチックや化学肥料がこれから作られます。ガソリン・軽油・灯油は、輸送用の燃料です。アスファルトは道路になります。人間は「石油」を見事に全部使い切っているわけです。(かつてのクジラと同じように)
 一方で、太陽光であれ、風力であれ、原子力であれ、それらができるのは発電だけです(原子力には、ご存知のように別の使い方があるようですが…)。この点から「クリーンエネルギーあるいは原子力は、石油の代替になりえない」と言えます。

火力発電は「廃物利用」

 「石油=原油」を精製してできる各種石油製品は、ザックリ言うと軽いものほど高級です。石油製品を軽い順に書いてみると、次のようになります。

LPガス → ナフサ → ガソリン → 軽油 → 灯油 → 重油 → アスファルト

 火力発電では「重油」を使いますが、重油は石油製品の中ではかなり低質のものなんですね。重油はいわば、原油から高級成分を取り出した残り(カス)と言えます。重油ではプラスチックを作れませんし、乗り物の燃料にもなりません。言うなれば、燃やして熱を利用するしか他に使い道のないものなんです。(「アスファルト」 は燃えもしないので、粘性だけを利用して道路に使っていますね)
 さて、石油の高級成分を使えば、イヤでも重油が残ります。もしこれを燃やさないとすると、どうやって処分したらいいんでしょう?・・・結局は燃やすしかなさそうです。だったら、ついでに発電した方が合理的ではないでしょうか?・・・カスでもそれくらいはできるのですから。
 「ゴミ焼却場で発電」なんて話もありますが、火力発電も「廃物利用」だと考えることができます。その意味で、火力発電はあんがいエコロジー だと言えなくもないわけです。

現代文明の根幹に「輸送」あり

 現代文明を成り立たせているエネルギーで最も大事なものは「電気」ではありません。電気よりもっと大事なものがあります。それは「輸送のためのエネルギー」です。たとえば、食料が外から運ばれなくなったら、東京は成り立ちませんね。現代文明は大量輸送によって成り立っているのです。
 輸送のための燃料は、少なくとも現在は「石油だけ」です。さて、電気自動車はどうでしょうか? ソーラーカーはどうでしょうか? どちらもトラック輸送を想定していないので、代替にはならないのです。数トンの荷物を運べなければ使い物になりませんから。さらに、数百km移動できることも絶対条件です。将来の可能性を否定することはしませんが、かなり難しいことは事実です。
 石油ならそれが簡単にできます(石油が液体であることも大きなメリットの一つです)。石油の代替を探すなら、まず第一に輸送のためのエネルギーを考えるべきでしょう。でも、現実にはそこが見えないのです。

まとめ

 「現代文明=石油文明」だということを、再確認するべきだと私は思います。私たちの身の回りにあるものは、石油で掘った資源を、石油で加工し、石油で運んできたものばかりです。私たちは石油を撒いて育ったものを毎日食べています。
 石油の能力のうち「発電」はほんの一部であり、しかも一番大きな能力ではありません。言うなれば、メインの能力を発揮した余力で、「発電も」しているというところでしょう。
 また、現代社会の成り立ちをみても、「電力」が最も重要なエネルギーであるとは言えません。現代社会において電気よりも大事なエネルギー、それは輸送のためのエネルギーです。
 一方で、各種代替エネルギーが目指しているのは「発電だけ」であり、しかもいずれも未完成または力不足です。いずれにせよ、仮に代替エネルギーが完成したとしても、石油の代替にはなりえないということです。
 確かに「石油」と「火力発電」にはいろいろ問題があります。けれども、石油を悪者扱いしていたのでは、逆に問題の本質が見えなくなるのではないかと私は感じます。むしろ「石油は現代文明の母」くらいの認識から始める方が賢明なのではないでしょうか。

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エネルギーのそもそも論 〜 
▷ 技術が越えられない2つの物理法則
▷ 現代文明は「石油文明」である  
▷ 自然エネルギーの正しい使い方  

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