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気づきにくいダブりとモレ

確率名人になるための5題」のうちの4問目。

【4】四面体ABCDの各辺はそれぞれ確率 1/2 で電流を通すものとする。
  このとき、頂点Aから頂点Bに電流が流れる確率を求めよ。
  ただし、各辺が電流を通すか通さないかは独立で、辺以外は電流を通さないものとする。  (東京大 1999年)

 頂点AからBに電気が流れるのは次の5パターンです。
(以下、各辺に電気を通す場合を「オン」と書き、電気を通さない場合を「オフ」と書きます)

東大1

 辺ABがオンである確率は 1/2、辺ACとCBがオンである確率は 1/4、・・・これらを全部足すと、

1/2+1/4+1/4+1/8+1/8=5/4

 あれっ? 1を越えちゃいました。なんかおかしいですね。さて、どこが間違っているのでしょうか?
 もうおわかりですね。ダブっています。たとえば、四面体の6つの辺がすべてオンである場合を5回もカウントしてます。もちろん、それさえ除けばOKというわけでもありません。他にもたくさんダブっています。

 この問題の難しいところは「モレなく、ダブりなく数える」こと。各辺はオンかオフかのどちらか2通りですから、6本の辺のオン・オフの組み合わせは全部で「2 の 6 乗=64 通り」あります。基本的にはそれを全部書き出すくらいの覚悟で臨んだ方がいいでしょう。
 書き出すときは「規則正しく」。とはいえ、本気で全部書き出すと逆に混乱しそうですから、まとめられるのはまとめて書き出しましょう。そうして書き出したのが、下表です。表中の○印はオン、×印はオフ、「-」印は「任意」(オンでもオフでもよい)を表します。「-」印(任意)を使うことで、64通りのものを12行で書き出しました。

東大2

 こうして書き出すだけでもなかなかやっかいなのですが、電気を通す場合も通さない場合も全部書き出せば「モレもなく、ダブりもない」ことが確認できますから、結局はこのやり方が安全確実だろうと思います。
 というわけで、この問題の答えは 3/4 です。

 全部書き出すのはカッコよくないと思う人のために、計算で求める方法を1つ書いておきましょう。
 その場合は「電気が通らない」場合(余事象)の方が結果的に少ないので、その確率を求めて1から引く方が比較的楽です。

東大3

 頂点AからBに電気が流れないのは「Aから出る辺が全部オフの場合」(図1)と「Bに行く辺が全部オフの場合」(図2)があります。それぞれ確率は 1/8 ですが、(図3)の場合がダブっていますから、その確率 1/32 を引きましょう。
 頂点AからBに電気が流れない場合は、他にもあります。(図4)と(図5)です。ここまでやれば、モレもダブりもありません。というわけで、答えは、

(図1)+(図2)-(図3)+(図4)+(図5)
 =1/8+1/8-1/32+1/64+1/64=3/4

です。
 ところで、この問題も赤本などで答えを見れば「ふむふむ」とわかった気になるでしょう。でも、自分でやると、合わない。何度やってもモレが出て、ダブりが出ることでしょう。ですから、自分でいろんな方法で数えてみてください。いやになるほど、本当に合いませんから。でも、それを一度はしぶとくやってみることが、確率名人になるためには必要なことです。答えを見て分かった気になるのは危険です。

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確率名人への道 〜 
【1】 場合の数の数え方 と 確率の数え方 の違い
【2】 ひもを結ぶ問題            
【3】 だまされやすい確率          
【4】 気づきにくいダブりとモレ       
【5】 数学でアクティブ・ラーニング例    

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