NHKのスペシャル番組をみよう
中学生向けの作文トレーニング教材を2つ紹介します。
1つ目は、夏休みの宿題として、私が中学1年生に実際に出した課題です。
NHKではいろんな番組をやっています。中学生の興味関心を育てるのに、これを有効に使わない手はないでしょう。普段はアニメやバラエティ番組ばかりみていても、時にはドキュメンタリー番組もみてほしいですね。「NHKのスペシャル番組」と銘打っていますが、それに匹敵する民放の番組でもよしとしましょう。ただし、ニュース・スポーツ・音楽・ドラマなどは除きます。
A3用紙に両面印刷して半分に折って、A4サイズ4ページ構成のプリントを配ります。
1ページ目は「表紙」で「番組名・放送局・放送日時」と「氏名」を書きます。正確に記録を残す練習も兼ねています。
2ページ目にテレビ番組の「要約」を書きますが、そこでの主役はテレビ番組です。あなたの意見や感想を書いてはいけません。
3ページ目に番組をみて「発見したこと・考えさせられたこと・疑問に思ったことなど」を2つ書きます。ここにあなたの独自性が現れます。
そして最後の4ページ目に、友達に向けての「紹介文」を書きます。友達に「私もみたかった」と言わせるようなものが理想です。ただし「面白いから見てください」みたいな口先だけの誘い文句は使用禁止です。
ところで、夏休みの宿題といえば、読書感想文が定番ですね。それとこの課題を比べてみると、さて違いはどこにあるでしょうか。
まず違うのは情報源です。読書感想文では本、この課題ではテレビです。分野も違います。読書感想文といえば多くは文学、フィクションですね。それに対してこの課題ではノンフィクション、つまり現実を映したもの、要は文学以外のほとんどが対象です。
書くべきものも違います。読書感想文では、その名のとおり「感想」を書きますが、この課題では感想を書く場所はどこにもありません。それでいて、テレビを見た人の「見方・視点・感じ方」がくっきり表れます。特に意識していなくても、自然とそういうものがにじみ出てきます。
レイアウトも違います。読書感想文では何を書けという指示は一切なくて、与えられるのは原稿用紙のマス目だけ。この課題では書くべきことを最初から分けていて、どこに何を書くかを具体的に指示しています。
だいぶ違いますね。むしろ正反対と言えるかもしれません。
実は、読書感想文とこの課題の違いがもう一つあります。読書感想文は本を読まなくても書けること、実際本を読まずに読書感想文を書く人は昔も今もたくさんいるでしょう。一方この課題は、テレビ番組を興味を持ってしっかりみないと出来ませんね。
たったいま「読書感想文は本を読まなくても書ける」と言いましたが、別の言い方をすると、実は「読書感想文は本を読んでも書けるとは限らない」のです。なぜかというと、まず「つまらなかった」場合、それだけ書いても原稿用紙は埋まりません。また「おもしろい」と思っても、「おもしろかった」だけではやっぱり原稿用紙は埋まりませんし、感想文を書くことがおもしろいとは限りませんね。結局のところ、本を読んで「感じる」こととそれを感想文に書くこととは全く別の作業なのです。むしろ読書感想文を書くためには、本を読まずに書く方が実は合理的だったりするのかもしれません。
さて、どちらの課題がやりやすいですか。友達が書いた読書感想文とこの課題があったとしたら、どちらを読みたいと思いますか。
私は課題を出した方の立場ですから、夏休みが明けると、それをたくさん読むことになります。これが結構楽しいのです。自分が見ていなかったテレビ番組の内容がわかって、1クラス分の課題を読むと、私自身も夏休みにたくさんのテレビ番組を見たような気になります。むしろ直接テレビを見るより効率的だと言えるくらいで、「意外とお得な役回りだなぁ」と思ったりしています。
私だけではありません。課題を提出する間際に、生徒同士で書いたものをお互いに見せ合っていたりするのです。「あっ、その番組、僕も見た!」とか、「へぇー、おもしろそうだなぁ」とか、そんな声が聞こえてきます。読書感想文ではありそうにない光景でしょうけれど、この課題では最後に「紹介文」を書いているわけですから、生徒たちは他の人に「見てほしい」と思うようです。
そしてまた、この課題を通してNHKなどの番組を見てみようという気になってくれれば、課題としては大成功です。これからの大学入試では「いろんなことに興味・関心を持つこと」がとても大事な要素ですから。
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