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連載記事(2017前)

インドがIT先進国になった訳

(2017年1月 97号)

 アメリカとインドの間では、かなり以前からインターネットを使ったビジネス(企業間の電子商取引)が行われていました。初期の頃には「アメリカ企業の事務作業をインド企業が代行する」形がその典型でした。現在では「インドはコンピュータソフトの先進国」になっています。
 では、ここで【問題】です。上の文章の「カギ括弧」のようになった理由として、インド特有の要因がいくつか考えられます。それを3つ挙げて、それぞれ1行で書いてください。

 インドがIT先進国になっているという話をみなさんも聞いたことがあると思います。でも、インドは他の産業では発展途上国ですよね。「どうしてITだけが?」という疑問を感じませんか。この問題は、その理由を考えてもらおうということです。その理由の1つくらいは、地理や歴史の授業であるいはテレビで聞いたことがあるのではないでしょうか。聞いたことが無ければ想像力を働かせて、あらかじめ知っている知識(常識)を総動員して頑張って3つ挙げてみてください。
 ここで問うているのは「インドがIT先進国なった理由」あるいは「初期段階でアメリカ企業がインド企業を選んだ理由」についての「インド特有の要因」(地理的要因・文化的要因・経済的要因)です。
 解答例を示しましょう。

◇ インドはイギリスの植民地だったから、英語が通じる。(現在でも準公用語)
◇ 地球の裏側にあるから、アメリカ人が寝ている間にインドで事務処理が済む。
◇ インドは0(ゼロ)を発見した国。伝統的に数学の教育水準が高い。
◇ 貧富の差が大きく、金持ちはアメリカに留学し、庶民の賃金水準は低い。
◇ 伝統的なカースト制度の縛りの無いIT産業に、優秀な人材が集まりやすい。
◇ ・・・

 「人口が多い」とか「賃金が安い」とかいうのは説得力が弱いと思います。人口なら中国の方が多いし、IT産業のために何億人もの人が要るわけではありませんから。また、賃金が安い国なら他にもいっぱいありますし、賃金が安いことは特にIT産業が発達する理由になりませんから。それだけでは○はあげられませんね。×とは言わないまでも、△でしょうか。
 この手の問題が面白いのは「他にどんな理由があるだろう?」と考えるところ。1つ目・2つ目がスムーズに出たとして、3つ目を挙げるために「考える」んですね。最初の1つか2つは知識(暗記)で出たとしても、3つ挙げるためには「考える」しかないわけです。
 そして生徒が書いてくる答えがまた面白い。3つ目の理由は苦し紛れに出したもの、無理やりこじつけたようなもの、ダジャレみたいなものなどいろいろあって、採点者を楽しませてくれます。

グラフの種類

(2017年2月 98号)

 次の(1)~(4)をグラフに表す場合、どの種類のグラフで表すのが適当か。下の[選択肢]ア~エから選びなさい。ただし、同じ記号は1回しか使ってはならない。
(1) 食品100gあたりに含まれるビタミンCの量を、数種類の食品について表示する。(トマトは15mg、大根は9mg、サンマは0mg・・・)
(2) 今日の食事で栄養成分摂取量が、一日の必要量にどれくらい足りているかを数種類の栄養成分について表示する。(カルシウムは80%、ビタミンCは60%、・・・)
(3) 家計の支出項目をいくつかに分類し、それぞれの支出額の今月の家計全体に占める割合を表示する。(食費に20%、光熱費に10%、教育費に8%、・・・)
(4) 節約家族を目指す一家が過去1年間にどれだけ節約できたかを見るために、月ごとの支出総額を表示する。(1月は30万円、2月は25万円、3月は・・・)

[選択肢] ア ヒストグラム(棒グラフ)
      イ 円グラフ
      ウ 折れ線グラフ
      エ レーダーチャート

 グラフの種類にはいろいろあります。上では「ヒストグラム、円グラフ、折れ線グラフ、レーダーチャート」を取り上げましたが、高校数学の「データ分析」で出てくるものとしては、他に「散布図、箱ひげ図」もあります。余談ですが、エクセルではたくさんの種類のグラフが用意されていますが、実は「箱ひげ図」はエクセルでは用意されていません。それってつまり「箱ひげ図」は世の中であまり使われていないということなのでしょうか。
 そしてそれぞれのグラフを適切に使い分ける必要があります。この問題は、それを答えさせる問題です。例として家庭科で出てきそうなものを並べてみました。中学の技術家庭の試験に出してもよいかもしれませんね。
 またまた余談ですが、試験に出した際に4つのイラストを添えました。「林立するビル群、切り分けたホールケーキ、うねうね動くヘビ」、そして「ヒトデ」です。それぞれ「ヒストグラム、円グラフ、折れ線グラフ、レーダーチャート」を模したものです。ちょっとした遊びみたいなものですが、生徒にとってはイメージしやすかったかもしれません。
 答えは、

(1) は「大小比較」だから「ア ヒストグラム(棒グラフ)」
(2) は「バランス比較」だから「エ レーダーチャート」
(3) は「割合」だから「イ 円グラフ」
(4) は「変化(推移)」だから「ウ 折れ線グラフ」

 「同じ記号は1回だけ」ということですから、答えはこれしかないでしょう。

フロッピー・ディスクを分解してみました

(2017年3月 99号)

 あなたはフロッピー・ディスク(以下、FD)を使ったことがありますか?(もしかして、まだ使っている人はいますか?)若い人の中には使ったことのない人もいるかもしれませんね。
 高校で情報科が始まったのは2003年、当時FDは現役で働いていました。私も情報科の授業で生徒たちに使わせました。
 さて、一連の授業が終わった最後の時間、みんなでFDを分解しました。当時の単価が100枚単位で買って1枚あたり数十円。確かそれくらいのものでした。分解すればもちろん使えなくなるわけですが、授業で使った後でもあるし、まぁそれほど勿体ないという感じでもなかったわけです。なかなか楽しい経験でしたよ。それを踏まえての試験問題です。

【問題】下の図(省略)は、3.5インチのフロッピー・ディスクの部品を示したものである。
 図の(1)~(4)の部品に適当と思われる名称をつけ、それらの役割を書き記しながら、データを読み書きする仕組みをわかりやすく説明しなさい。
 その際、FDを「ドライブに挿入したときと挿入していないときの違い」ならびに「本体側のFDドライブとの関係」にもふれること。

 上面と下面のケースが2枚(これには番号をつけなかった)、中に円形の薄い磁気テープ(1)と回転の軸になる金属(2)があって、窓を開けるための板(3)1枚とその板を動かすためのバネ(4)が1つ。これですべてです。試験問題で示した図をここで示すことは出来ませんが、がんばって似たような形で示すと、

  (1) ○   (2) ・   (3) □   (4) v

こんな感じです。図の大きさはまるで合っていませんので、皆さんの方で調整してご覧ください。
 さて、この問題では、次の5つを書くことが絶対条件です。(設問にそう書いてあります)

  ・部品につける適当な名称
  ・その役割
  ・データを読み書きする仕組み
  ・挿入時と未挿入時の違い
  ・FDドライブとの関係

 ところで、どこまで丁寧に書くのか?「ある程度はわかるけど、突き詰めるとよくわからない」ことをどこまで掘り下げるか? それについては「上の5ヶ条に少しずつ触れながら、あとは得意分野に絞って(書けることを)わかりやすく書け」ば良いでしょう。
 さて解答例ですが、3つ作ってみました。図入りの問題ならびに解答例はこちら(→ https://note.com/omori55/n/nf648ac7a5c76 )をご覧ください。
 ところで、実は似たような問題が「東京工業大学2002年度後期入試」に出ています。その問題は、FD2枚・マイナスドライバー1本・ポリ袋1枚を配布して、試験中にFDを分解しながら答えるものでした。

恐竜がいた頃

(2017年4月 100号)

 恐竜展示会場での次の会話文を読んで、後の問いに答えなさい。

  客 :この恐竜の化石はどれくらい前のものなんですか?
 係員:1億5千万3年前です。
  客 :えっ!? 本当ですか!?
 係員:この化石は3年前に発見されて、科学鑑定した結果、1億5千万年前に生きていた恐竜の骨だとわかったんです。それから3年経ちましたから、今から1億5千万3年前の骨というわけです。

 この係員の説明、なんかおかしいですね???
 ここで【問題】です。どこがおかしいのかを、授業で学んだ言葉や考え方を使って説明してください。なお、客の始めの質問に対して、係員はどのような計算をしてどのように答えるべきだったのかを含めて説明すること。

 この問題、中身はむしろ理科か数学の問題なんでしょうけれど、情報科でエクセルを使って統計をやったときに出した問題です。授業中に次の問題を扱いました。

◇ 標高3776mの富士山の山頂に170.3cmの人が立ったとき、この人の頭のてっぺんの標高は?

 この場合「3776m+1.703m=3777.703m」と答えるのが良いかというと・・・ちょっと違いますね。富士山の高さはm未満を四捨五入した値ですから、m未満を細かく計算しても意味ないんですね。だからこの問題では、m未満を四捨五入して「3778m」と答えるべきところです。
 一般的にいうと「近似値の足し算・引き算では、有効数字の位の高い方に揃えれば良い」ということです。ちなみに「近似値の掛け算・割り算では、有効数字のケタ数の小さい方に揃えれば良い」ということになります。
 では、ここで《解答例》を示しましょう。

 科学鑑定の「1億5千万年」という数の有効数字は2ケタ。つまり一千万より上の位だけが有効である。
 精度の異なる数の加減計算では有効数字の位の高い方に合わせるから、係員は「1億5千万+3≒1億5千万」と計算して、「今から1億5千万年前の骨だ」と答えるべきだった。

 まぁみんな似たようなことを書いてくれましたが、設問に「授業で学んだ言葉や考え方を使って」とありますから、「有効数字」などの用語を適切に使っていたかどうかで適当に差をつけて採点しました。

◇      ◇      ◇

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