パウロ・ローシャ「青い年」

不思議な映画だ。ストーリーは他愛もない。、 田舎から出てきた青年ジュリオが女中として働く田舎町(海沿いの町?)出身のリイダと恋をして、彼女に結婚を断られ、彼女の働くアパートメントの玄関で彼女を刺して殺してしまう。
しかし、映画開始早々にウトウトしてしまった自分の目を覚まさせる鮮烈なショットが続けざまに目につく。
2人が乗る川を渡るフェリーからの2人の背後に川の流れをとらえたショット。
ジュリオの叔父からもらったセーターを取り返そうとジュリオの手に噛み付くリイダが顔を上げると、風が吹く草野原を背景にしたショットはただ事ならない気配を放ってくる。
リイダが刺されるショットは女主人が閉めたドアの向こうからのリイダの声(なぜか艶めかしい)で彼女に何か起こったことを知らせる、車道にさまよい出たジュリオの前に複数の車が立ちはだかり、ジュリオの背後に複数の車、それを斜め上部からさらにほぼ真上からとらえるラストシーンなど、古めかしい演出もある(ラストシーンは嫌いではない!)。
しかし、何か得体の知れない力が目を離させない。
ジュリオが酔って叔父にクダを巻くシーンでは、同じレストランで飲んでいた見ず知らずのイギリス人の男がジュリオが叔父に殴られるのを見て、叔父を羽交締めにして、店を追い出される。その後から店を出たジュリオとイギリス人の男はお互い理解できない言葉で思い思いのことを喋りながら夜の街を徘徊する。そして、建物にもたれかかっていた2人の娼婦をイギリス人がそれぞれの相手に振り分けて、建物の中に消えていく。何なんだこのシーンは?
最後に、ツィターが奏でる耳にこびりつく劇伴の響きもこの映画の不思議な魅力の要因になっていることも覚えておきたい。
さらに加えて、リイダ役のイザベル・ルートの可憐な色気にやられてしまいました。
とにかく忘れないうちにとつらつら書いていたら、電車を乗り過ごしてしまった。

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