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私は大富豪のまま死んだ。

私のキッザニア人生は大富豪のまま幕を閉じた。

娯楽を一切せず、たとえ周りがみんな買おうが食べたいものも買わず、効率のいい労働をして、弟という弱い立場からお金を搾取して大富豪になった。

そして、一銭も使わずキッザニアにはもう入れない年になってしまった。

紙幣でパンパンになってはち切れそうなキッザニアの布財布を見るたびに悲しくて震える。食べたかったコロッケが脳裏にはっきり焼き付く。匂いまで思い出せるくらいはっきり。

何度も何度も、ものすごく後悔した。もうただの紙切れとなってしまったキッザニアマネーをひたすら見続けた。何時間もただひたすら何度も見た。

私が強引に金を奪い取るせいでぺっちゃんこになった弟のキッザニアの財布も何度も見た。
申し訳ない、ごめん、という気持ちより、すっからかんの財布がとにかく羨ましかった。

キッザニアに入れるさいごの年に一気に散財してやろう。バラの風呂に入って、紙幣を扇子代わりに紙幣をばら撒く勢いで散財してやろう。と企んでいた。

その日を夢見てお金をとにかく貯めた。

働いてもらったお金を大体の友達はすぐ使っていて、「そんなすぐ使うなんてバカ」だと思っていた。

そうやってお金に囚われ始めると、最初は「やりたい」で選んでいた仕事体験も、「効率がいい」で選ぶようになってしまい、回数を重ねるたびにやりたくもない労働ばかり選ぶようになっていた。

基本的にお仕事体験が中心なキッザニアだが、お金を使える娯楽施設もいくつかあったが、私はそこに目も向けないようにしていた。お金を稼ぐ以外は全て悪だと思っていた。

1人コロッケを買わず、黙って立って、他のみんなが笑顔で熱々のコロッケを頬張る姿が8Kの高画質でみんなの肌感まで思い出せるくらい鮮明に覚えている。

私は年齢制限でキッザニアに行けなくなった時、弟にお金の理想の使い方を伝授して、使ってもらう方法もあったが、そもそも家族で引っ越してしまってキッザニアすら行けなくなっていた。

お金がもったいなくてもったいなくて、母にキッザニアの誰かに電話してくれと頼んだ。流石にこれだけお金を持っていたら現金に変えてくれるか、コロッケを買わせてくれるか何かしてくれるだろうと思っていた。

しかし、当たり前だが、ルールはルールなので、母が電話をすることはなかった。

歯茎から血が出るくらい悔しかった。


通帳を見て、貯まった金額を母に自慢している時に気づいた。
私は過去、この経験で相当後悔をしているのに、私は現実世界でも同じことをしてしまっている。

バイトや、バイトの時給にばかり縛られて、ひたすら労働している。時間経過を金額に換算する癖がついてしまった。そのため、やりたいことがあってもそのほとんどが時給労働以下の価値にしかならないと思ってしまいやりたいこともせずにお金のためにひたすらバイトをしている。

バイトばかりしてないで、勉強して。と祖母にお金をもらってでもなお、バイトをしている。今勉強した方がいいことはわかっているのに、お金に囚われてバイトを優先してしまう。

そして、服が大好きだったが、一切買わないと決めて、服屋に入らない意志を固め、食もこの上なく大好きだが、食べたいものより安売りされているもの、期限切れシールが貼られているもの優先で買うようになっている。

貯めることばっかりで、楽しい時間や機会を失って、自分からしなくてもいい我慢をしに行って、使う機会を逃して誰よりも後悔したのに、私はまた同じ道を辿っている。

キッザニアの年齢制限はその世界での死と同じだ。
私はたくさんのお金を持ったまま死んだ。相続する相手もいない。

死んでからはお金はどうにもできない。

それなら、あの時お金をすぐに使ってみんなとの楽しい時間や自分の幸せな時間に使えばよかった。

お金を貯めることが労働の目的になってしまった時点で、働くことすら辛くなっていた。
最初は純粋にお仕事体験が楽しくて仕方なかった。お金をもらうのが嬉しいとかの感情はなく、体験自体が楽しくて幸せだったのに、お金のことを意識し出してから、無言で暗い顔でお仕事体験をするようになった。

たくさんお金を持っていればみんなから憧れてもらえると思っていた。しかしキッザニアマネーをたくさん持っていても、子供には価値がわからないし、親世代は引くし、キッザニアの存在を知らない田舎の子からしたら「おもちゃ」でしかない。人生ゲームの1万円の紙と全く同じものと思ってしまうくらい。

今私が囚われている現実世界のお金だって、どうなるかわからない。
タイムリミットができたり価値が急になくなってただの紙切れになるかもしれない。
もしこうなったら私は気が狂うほど後悔するだろう。

欲しいものを欲しい時に買えばよかった、もっといろんな体験をしたらよかった。と。

お金は、「欲しい」と思った時にどうにかして稼げる手段はあるけど、お金を使って生まれる機会や幸せな時間はその時だけのもの。

お金に囚われるのをやめよう。そして、お金を使おう。

しかし、これほど小さい頃から貯金癖がついているとお金の使いかたがあまりにも下手すぎたり、結局ビビって何にもお金が使えなかったりす流。

長年憧れていたホテルビュッフェを思い切って予約ちゃおう!と思ったが結局できなかった。

まずは、セブンイレブンの「金の角煮」を買ってみよう。定価で。


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