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15歳の亡霊



好きな四字熟語を聞かれた三者面談

一期一会ですと答えたわたしはニセモノになった

ほんとに好きなのは単独行動

だれも見ていない夜に呟いた


寝落ちしかけたバスの中から見たまんまるの月

どんな日だった?と聞かれても

じぶんの口から出た当たり障りない言葉が当たり障りなさすぎて忘れた


ほんとうは聞きたいこといっぱいある

ほんとうは知りたいこといっぱいある

だけどそれ以上に

知りたくないことがある



可愛く生まれたかった

やさしく生きたかった

愛される人になりたかった

わたしもあの子みたいに華奢で可愛かったら

わたしもあの子みたいに本物だったら

顔で笑って心で憎む

醜いわたしをコロして下さい


いっそのこと壊れてしまえたら

できないからキツい

できないからヘラヘラ笑う

抱えきれない物がのしかかる

だから笑う

わたしさえも裏切ったわたしが

教室の隅で笑ってる


心をナイフで切り刻むばめんを想像した

自分そっくりのスーツに身を包むじぶんをズタズタに

笑われる

嫌われる

生きていけない


薄っぺらいあいつらへの軽蔑感

薄っぺらいじぶんへの嫌悪感

知ろうとすらしない大人への空虚感

なんでなんでしか言えない惨めさ

なにが寂しいのか言葉にできない

もう一歩も動けない



先生はなりたかった自分になれましたか


むかし好きだったもの
今でも側にありますか


学級目標「みんな仲良く」
おとなになったら叶いますか


今怖くて仕方ないもの
大人になったら無くなりますか


ちゃんと生きていれば
ちゃんとした大人になれますか


言葉にできず死んでいった気持ちは
誰が覚えててくれますか



遠くへ逃げたい

遠く遠く

見えなくなるまで

わたしがいなくなっても変わらない世界の

もっと目立たない世界で

ひっそりと

わたしの汚い痕跡ごと

霧になるまで



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