落ちこぼれ仲間は優しかった


ぷつんと糸が切れてもうがんばることができなくなった16歳

成績が急激に落ちて陰で落ちこぼれクラスと呼ばれていた特別講習クラスだかなんだかに入れられた

あきらめが充満していた

何人かと話したけど誰も賢くない人などいなかった

ただ色んな事情があって勉強ができなくなった

そこにいる子達はみんなわからないことはわからないと言っていた

すごいことだと思った

わたしはそれまで必死に勉強していたんだというじゃまなプライドのせいで

わからないことをわからないと認めるのがむずかしかった

そんな自分がきらいだった

自分がきらいなわたしともみんな仲良くしてくれた

帰りに一緒にセブンティーンアイスを買って食べた

ゲーセンに寄ってメダルゲームもした

授業で疲れているはずなのに誰も帰ろうとは言わなかった

帰りたくない事情があった

普通のクラスに戻ればやれ成績がどうだとかやれ彼氏がいるとかいないとかくだらない理由で下に見られる

だけどそのクラスにいる間だけはみんな人として対等に見てくれた


あの頃と比べたら賢く生きられるようになったのだと思う

あの頃と比べたら要領のよさもズルも覚えた

あの頃は人のことをこわいとも苦手とも言えなかった。上から目線な気がして

落ちこぼれクラスのあの子もわたしも生きるのが下手だった

人生が下手で落ちこぼれで優しかった

落ちこぼれクラスで話してくれた子たちはみんな優しかった

自分も辛いのに会うたび優しくしてくれた

どんなに生きるのがうまくなってもそれを成功や成長とは思えなかった

それは生きるために手にした武器だった

自分の守り方がじょうずになったけど

その裏で弱いものの立場になって考えることを忘れてしまう

それは、ほんものの弱者だったあの頃の自分を忘れてしまうことだった

あの頃のわたしたちはばかにされて蔑まれていたけどそれでもお互いに優しく接していた

それはどんなものより価値のあるものに思えた



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?