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思惟かねの今日のwikipedia(リメイク版)

かつてTwitterで(ほぼ)日刊で続けていた、私の初めてのVTuberとしての活動。
それが#思惟かねの今日のwikipedia

私の趣味であるWikipediaサーフィンが高じ、暴走する知識欲のままに読んだWikipediaを数ツイートにまとめて皆さまに雑学と知的刺激をお届けするという趣旨の活動でした。

これは一度は3ヶ月で力尽き自然休止した私のかつての活動を「やるぞ!」…と再開しようと書き溜めをしたものの結局力尽きた、その残骸を供養する場所であり、これをふと目にした皆さまに1分で読める雑学をとめどなく散発的に提供するよく分からない記事です。


アーサー王

Fate/stay nightなどで日本でも知名度の高いアーサー王の伝説。歴史という大河の中で見た彼は、一体どのような王だったのでしょうか?
アーサー王は6世紀初頭、イングランドに存在した王とされます。この頃イギリスは暗黒時代というべき混迷期にありました。

アーサー王以前のイギリスは、土着のケルト系民族を武力制圧したローマ帝国の支配下にありました。このローマ領がブリタニアです。しかし、そのローマ帝国を西からゲルマン人の民族大移動が襲います。脅かされたローマは、遠方のブリタニアを維持できずにイギリスから撤退してしまいます。

ローマ去りし後、土着のケルト系民族(ブリトン人)は、ローマ帝国の武力統治で疲弊した中、イギリスへも押し寄せる異民族の侵略に抗うことを余儀なくされます。こうした暗黒時代の光となった、ブリトン人の英雄君主がアーサー王なのですね。


ただ、その後ブリトン人がどのような運命をたどったかは、異民族であるアングロ・サクソン人の名が現在のイングランド(英国南部)の語源となっていることからも察せられる通りです。アーサー王はブリトン人の最後の戦いを率いたとも言えましょう。

もっとも、アーサー王が実在したかは歴史的には疑わしいです。聖杯や円卓の騎士といったエピソードは後世の創作で、どころかアーサー王自身の存在も信頼できる記述に乏しいのが現実です。また現在のイギリス人はアングロ・サクソン系が大半であり、そういう意味ではアーサー王は「異民族の王」と見ることもできます。


それでもなお、アーサー王というモチーフがあらゆる場所に見られるほどイギリスに根付き、騎士王の代名詞として語り継がれているというのは、歴史的事実と必ずしもイコールではない「文化としての歴史」の奥深さといってよいのではないでしょうか。



コンタクトレンズ

メガネがトレードマークの私ですが、コンタクトというのも時には便利なものです。同じ視力補正器具であるメガネとコンタクトって、どんな違いがあるのでしょうか?

コンタクトのメリットの一つが視界の広さと歪みの少なさです。これはコンタクトはレンズが目に接していることに起因します。
コンタクトは目とレンズの間に隙間がないため、視界の歪み(特に視界の端)がとても小さく、また視界を広くカバーできます。普段は意識しませんが、メガネというのは特にレンズの縁の知覚は結構歪んで見えているんですね。メガネからコンタクトに変えた時、クラッとくるのはこのギャップのためです。

また、度数が強い人の場合、メガネでは厚く重くなってしまうか、圧縮レンズのように高価になってしまうところを、コンタクトは目に接しているためにレンズが小さくでき、軽く安価にできるというのもメリットです。またこの軽さは運動の際もとてもありがたいですね。

一方でメガネのメリットは健康面です。私たちの網膜は血管を持たず、代わりに涙などで酸素や栄養を得ています。コンタクトは目にフィットするがために、この供給を妨げてしまいます。衛生面もさながら、コンタクトの長時間使用がダメなのは主にこのため。当然メガネはどちらの問題とも無縁です。

他、メガネには読書などで目が内側へ向く時(輻輳と呼ばれます)、レンズが光をより内側へ屈折させるためあまり目を内側へ寄せなくていい=疲れにくいというメリットもあります。最近はブルーライトカットのレンズなども多いので、長時間の読書やPC作業はメガネの方が向いているといえますね。

ちなみに日本人のうち、約70%はメガネかコンタクトを使っており、うちコンタクトとメガネを併用しているのは15%ほどだそう。
私も歴戦のメガネっ子ではありますが、メガネを知り、コンタクトを知り、上手く使い分けてこそ一流のメガネっ子。皆さんもどうぞお試しを。


バジル

イタリア料理を代表する食材といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?まずは真っ赤なトマト、さらに濃厚なチーズの白…とくれば、次に浮かぶのはおそらく緑色の「バジル」ではないでしょうか?

バジルはイタリアで最もポピュラーなハーブの一つで、バジリコともいいます。トマト、チーズ、バジルのトリオはイタリア料理の鉄板。ピッツァ・マルゲリータ、カプレーゼ(モッツァレラ・チーズとトマト、バジルのサラダ)などは大変美味。その緑白赤の色の並びはまさにイタリア国旗そのものでもあります。

バジルの特徴は何といっても独特の香り。この香りはバジルの香りの主役であるエストラゴールを中心に、リナロール、シネオールなどの成分から成ります。リナロールラベンダーやベルガモットにも含まれる鼻に抜ける華やかな香りシネオールユーカリなどに含まれる爽やかな香りです。

ラベンダーやベルガモット、ユーカリなどが、実はバジルと共通の成分を持つというのは驚きですが、言われてみればあのスッキリした香りは確かによく似てますね。私もそうなのですが、バジルが好きな方は、きっとベルガモットやユーカリなど、よく似た香りも好きなのでは?

そんな香り成分と共通性と人間の好みに思いを馳せながら、マルゲリータやジェノベーゼを食べてみると、また味わい深いのではないでしょうか?
書いていたらすごくお腹が空きました。私も今日はイタリアンにしようっと。



アドレナリン

ゲームやスポーツで興奮した時「アドレナリンが出る」という話を聞いたことはありませんか?時折耳にするこの「アドレナリン」とは何者なのでしょうか。結論から言うとアドレナリンはホルモンの一種なのですが、その有用性から薬剤としても用いられる物質です。

人体では、アドレナリンは危険な状況に陥った時に分泌され、例えば全身の血液を心臓や筋肉などに集中させ、体を素早く動かせるようにしたり、瞳孔を広げて視覚を強化する他、痛みを感じにくくさせる働きもあります。こうして命の危機に対して、全力を出せるようにするんですね。

いうなればアドレナリンは体のリミッター解除のトリガーです。スポーツやゲームが白熱すると、体はそれを危機的な状況と理解してこういう反応をするんですね。
そしてこの性質を利用したのが薬剤としての使用で、特に救急救命の現場でアドレナリンは非常に重要な役割を果たします。

例えば心臓停止などでは、アドレナリンが心臓への血流を増やし、心臓を活性化させる作用が効果を発揮します。また逆に心臓や筋肉以外へは血流を減らす働きがあるため、アナフィラキシーなどのショック症状には末梢血管を収縮させショック症状を抑えるために投与されます。

ちなみに有名なFPSにであるLeft 4 Deadにはアイテムとしてアドレナリンが登場しますが、ゲーム内での効果である運動能力UPや痛覚の麻痺、瞳孔拡張による視覚の変化などはまさにアドレナリンそのものですね。小さな傷による出血を抑える効果なども見込めるでしょう。

このようにアドレナリンは人体のリミッターに関わる重要なホルモンであり、適切に使えば大変有用な薬品でもあるわけです。
皆さんも運動中にこうした体の変化を感じたら「アドレナリンが出ているな」と思って意識してみると、また少し自分の体に詳しくなれるかもしれませんね。


ショック

驚いたり衝撃を受けた拍子に死んでしまうことを「ショック死」なんて言ったりしますが、これは誤用なのをご存知ですか?実はショック死というのは立派な医学用語です。例えばいわゆる出血死。これは医学的には「出血性ショック死」と言います。

ショック症状は日本語で末梢循環障害と訳されます。酸素を運ぶ血液が体の隅々まで行き届かなくなることで、生命活動が困難になる極めて危険な状態です。代表的な原因は大量出血ですが、火傷や敗血症、心不全、アナフィラキシーなどなど、ショック症状に陥る原因は様々です。

例えば出血性ショックでは血液自体が減少したことで酸素が行き届かず生命活動が維持できなくなるのに対し、敗血症やアナフィラキシーでは細菌感染による炎症や免疫による反応が全身の毛細血管を広げてしまい、血液が十分に循環できなくなることでショック症状に陥ります。

ショック症状の治療は、体の血流が正常なバランスを取り戻せるよう、様々な証拠から原因と状態を診断し、それに合わせて適切な処置を行うことがポイント。幾多の検査値から投薬を選択し、危機の中で命をつなぐその技術は、まさに現代医学の結晶の一つといえるでしょう。

ちなみにハチに刺された際などに陥るアナフィラキシーショックに対しては、前回紹介したアドレナリンが投与されます。アドレナリンは心臓や筋肉以外の末梢への血流を減らす(血管を収縮させる)作用を持つため、アナフィラキシーの症状を「中和」することができるのですね。

こうして人間の仕組みや薬の仕組みを知れば知るほど、人の体の複雑さや医学というものの偉大さが理解できます。医学というのは一見とっつきにくいですが、実は最も身近にある学問の一つであり、人類の歴史の結晶といってよい知識体系であることをぜひ知ってください。


自律神経系

TVの医学番組などでも耳にすることの多い自律神経。この3日間の医学と人体シリーズの締めくくりとして、その本質に触れてみましょう。
自律神経とは、一言でいえば「人間の体内の様々なバランスを取るシステム」のことです。

人間は体内のバランスが崩れてしまうと、時に生きることさえ難しくなってしまいます。例えば昨日紹介したショック症状は、体中の血流のバランスが崩れた状態のこと。それを防ぎ、例えば血圧や血糖値といった重要な数値を絶え間なく調整しバランスを取っているのが自律神経です。

自律神経は交感神経と副交感神経という二系統の神経から成るのですが、この2つがちょうどプラスとマイナスのように、それぞれ逆の働きを促すことで体のバランスを保ちます。

例えば交感神経が活発になると、肝臓はグリコーゲンを分解し血糖値を上げますが、逆に副交感神経が優位になると肝臓は血中の糖分をグリコーゲンに変え、貯蔵し始めます。こうして血糖値が一定に保たれるのです。面白いのは、こうした自律神経の働きは、一見バラバラに見えるそれぞれの臓器の働きを調和させ、見事なチームプレイを生み出すという点です。

例えば、交感神経優位となることで血糖値が上がると、同時に筋肉は糖分を取り込みパワーを出しやすく、肺は酸素を取り込みやすくなり、糖分と酸素を運ぶ心臓は活発化して血流が増え、逆に不要な消化器官への血流は絞られ…と、体は見事な連携で激しい運動に向いた体制を整えるのです。

ちなみにこの体を運動に向いた状態へ移行させる物質こそ、既にお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、一昨日に紹介したアドレナリンです。全身を制御する、一見複雑な交感神経は、アドレナリンとノルアドレナリンというわずか2種類のホルモンで制御されているんですね。驚きです。

というわけで、人間の体が実に見事なバランスとチームワークで成り立っていること。そしてそれを司る一見複雑な自律神経系が、実は意外と単純なシステムであることがお分かりいただけたでしょうか?人体は身近な小宇宙。知れば知るほど面白い。皆さまにも共感頂けたならとても嬉しいです。



リバティ船

戦争という悲劇は、一方で平時には考えられないほどの技術的進歩を生み出します。その象徴の一つが、アメリカが第二次世界大戦で大量建造した規格型の輸送船、リバティ船です。今日は彼女がもたらした偉大な成果と、その負の側面を様々な角度から眺めてみましょう。

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リバティ船の特徴は、その建造の容易さに尽きます。WW2で大量の物資を海上輸送する必要に駆られたアメリカは、単純構造の船を大量建造することで輸送力を爆発的な増大を計画しました。そのためリバティ船には工期短縮を第一としブロック工法や溶接など、当時の先進的な建造技術が導入されました。

巨大な鉄の塊である船を小さなパーツに分けて建造し、後でつなぎ合わせるブロック工法は、本来リバティ船のような1万トンクラスの船を建造できない小さな造船所も建造に動員することを可能にしました。そのブロック組み立てを高速化したのが、最新の製造技術として導入されたアーク溶接です。

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この結果、リバティ船は平均42日という異常な早さで建造が可能となり、最盛期は1日に3隻が就役したというから恐ろしいです。建造総数は2710隻、つまりリバティ船だけで2710万トンが新たに建造されたということ。戦前のアメリカの商船保有トン数が1200万トンほどだったといえば、この異常さがお分かりいただけるでしょう。

しかしその裏で、5年の戦争の間に米英を合わせて1500万トンもの船が失われたという事実も見逃せません。世界第2位の商船保有国だったアメリカの商船が全て沈んでなお足りぬほどの、通商破壊による恐ろしい商船の損耗がリバティ船の大量建造の裏にはあったのです。

話を工学に戻すと、リバティ船の大量建造を可能とした技術にもまた負の側面があります。先進的な技術とは、裏を返せば未成熟ということでもあり、リバティ船は溶接技術や冶金技術の未熟から、多くの技術的教訓と引き換えに、1割近い200隻以上を船体の欠陥による事故で喪っています

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しかしそれでもリバティ船の建造は止まることなく、代わって徹底的な原因究明と、対策を施した新たなリバティ船の建造が続けられました。全ては戦争という異常事態あってのことで、この空恐ろしい試行錯誤が、人命と引き換えにどれほどの技術的進歩をもたらしたかはいうまでもありません。

リバティ船の沈没原因となった技術的な解説については、また次回に筆を譲りましょう。
リバティ船の偉大な成果と、その暗い影。想像を絶するその事実の裏に、戦争というものの狂気を感じ取らずにはいられないのは私だけでしょうか?
という所で、今日はこの辺で。

(脚注:書き溜めはここで途切れている)



あとがき

…私のVTuberとしての最初の活動であり、ひっそりと過去のツイートに埋もれ、消えていった#思惟かねの今日のwikipedia供養はこれにておしまいです。
はー、そうなんだ」と少しでも感心してもらえたのなら、世界の様々な事物の面白さを欠片でも伝えられたのなら、ただただ嬉しいです。

既に世界に存在する情報を文字を通して読み込み、自分の中で理解し、それを自らの言葉でストーリーとして語るということは、やってみると思いの外難しく、手間のかかることでした。
けれどもそれと同じくらいに楽しいことでもありました。

今私が励んでいるnoteでの執筆活動を、こうした迷走の中での努力で得た知識や経験が支えているのだと思うと、それをこうして皆さまのお目にかけられることは、やはり喜び以外の何者でもありません。


皆さんもできることならば、日々新しいことを知ろうとして下さい。
そしてそれを理解し、自分の言葉で表現する術をぜひ磨いてみて下さい。
それはきっと、あなたの人生をとても豊かにしてくれるものですから。

#思惟かねの今日のwikipedia は終わっても、私の、私たちの知識の探求は命ある限り続きます


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また次の記事でお会いしましょう。

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