おもち

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おもち

小説を投稿するためにアカウント作りました。 実体験をもとにした恋愛小説と、ちょっと不思議な掌編小説をのんびりと書いていきます(*ˊᗜˋ*)

マガジン

  • 【短編小説】バベルの糸

    紡がれていく世界の、その先へ──。 約20000字の短編小説です。 全22話、数話ずつ投稿していく予定です。 ◆あらすじ◆ この世界は、糸で創れる。現実世界を忘れるほどの、美しい世界。 糸の世界に生きる少年タクトは、世界を創る“編み人”として、出会いや別れ、恋を経て人の心の在り処を求めて歩いていく。

  • 【掌編小説】

    数分で読める掌編小説をまとめます。 ちょっと不思議な物語が多いです。

  • 【連載小説】神様に何を誓ったか?

    彰は、一型糖尿病を患う紗椰にプロポーズした。家族になった紗椰を必ず守ると決心した彰だったが、結婚生活の中で不治の病を抱える紗椰と生きていくという意味を徐々に知り⋯⋯。 先の見えない人生を歩む、二人の物語。

最近の記事

【短編小説】バベルの糸 第14話

 昼間に星は輝かないし、流れる事もない。それは糸の世界でも現実世界でも変わらない自然の法則だった。  今日は雪も降っていない。そこに在るのは、丘の大地を彩る花だけだった。  ショートヘアが風に靡く。色鮮やかな花びらが舞う。この世の全ての花は、きっとこの可憐な少女を飾るためだけに存在している。恋は盲目とはよく言ったものだ。こんな時ですら、人は人に見惚れるのだから。 「ワラビ⋯⋯」  ワラビは、タクトを見た。目の前に居るのに、ワラビの目はまるで遠くを見つめているようだった。

    • 【短編小説】バベルの糸 第13話

      「あー、疲れた。お前、重くなったな。チビだった癖に。今もそこそこチビだけどな」  北の塔の大広場にある長椅子に座り込んだレンは、息を切らしながら階段沿いの部屋達を見上げた。 「⋯⋯本当に静かだな。人の気配が殆どしねぇ。どうなってんだ」 「レンさん、疲れてるところ悪いけど、すぐに僕の部屋まで来てください。ワラビが待ってる」  レンの背中で少しだけ体力を回復させていたタクトは、駆け足で階段を登った。レンも後に続く。 「ワラビ、入るよ」  ドアを開けた。  床には、いく

      • 【短編小説】バベルの糸 第12話

         ワラビを連れて北の塔に帰ってきたタクトは、極度の恐怖と病気による疲労で呼吸を荒くしたワラビを自室に入れた。  此処を出る前と戻ってきた今では、編み人の数が明らかに減っていた。部屋に閉じこもっているのではない。人の気配が、確かに消えつつあった。 「ワラビ、此処を離れないで。助けを呼んでくるから、必ず此処に居るんだよ」 「⋯⋯何処へ行くの?」  ワラビはずっと泣いていて、声が枯れていた。タクトはベッドに座るワラビの頭を優しく撫でて、手を握った。 「レンさんの所。知ってる

        • 【短編小説】バベルの糸 第11話

           カシワが失踪してから数週間が経っても、音沙汰は無かった。北の塔では相変わらず編み人達が黙々と作業をしている。  この町の雪は、最近ではタクトが一人で編むようになった。タクトはこの町の冬を彩る、立派な編み人になりつつあった。  ワラビが目を覚ましたのは、カシワの失踪から二ヶ月ほど経った頃だった。 「タクト、カシワさんが行きそうな場所に心当たりはないの?」 「分からない。カシワさん、“踊る少女の影”の話はよくしてくれたのに、自分の話は何もしてくれないから」  周辺の探索は

        【短編小説】バベルの糸 第14話

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        • 【短編小説】バベルの糸
          15本
        • 【掌編小説】
          5本
        • 【連載小説】神様に何を誓ったか?
          15本

        記事

          【短編小説】バベルの糸 第10話

          「物は言いようだな、リュウ。仮にそれが真実だとしても、お前は今のこの糸で紡がれた世界よりも、人を撃ち殺していた世界の方がよかったのかい」 「そうは言ってない。俺は人の尊厳が守れるのなら、どんな世界でもいいと思ってる。でもそれはあの時代でも、この世界でもない。何かに取り憑かれて何も考えられない世界では、人の尊厳は守れない」 「⋯⋯それで、ヨミ様に会ってどうする? あの丘の花を枯らせるつもりか」  リュウは北の塔の少し奥に見える丘を見た。同時に、風が吹いた。妙に心地がよかっ

          【短編小説】バベルの糸 第10話

          【短編小説】バベルの糸 第9話

           カシワとリュウは、鉄道等の製鉄部品を作る工場団地を歩いていた。内戦時、此処は武器を作るための工場として国が管理していた。今は、限られた機械しか動いていない。此処で製造していたものの大部分は、糸で創られるようになっていた。  カシワは無表情で工場の様子を眺めていた。編み人ではないリュウには、カシワの心境を推し量る事は出来なかった。 「あの日、お前もあの戦場に居たのなら、兵士達がどれだけの殺意を持って銃を構えていたか覚えているだろう。当時俺達は新米だったが、奴等を殺したい気持

          【短編小説】バベルの糸 第9話

          【短編小説】バベルの糸 第8話

          「ヨミは何処だ」  荒々しい声が聞こえた。タクトが部屋を出て大広場を見下ろすと、大柄な男が広場の中央に立っていた。 「ヨミ様は、此処にはいらっしゃいません。どうか、お静かに願います。どうか⋯⋯」  編み人の中でも年配の女性が必死に男を宥めていたが、男の怒りは収まりそうになかった。 「なら何処にいるんだ、教えろ。国賊の屍に花を添えるとはどういう了見だ」  タクトにはあの丘に咲かせた花の意味と意思が、あの男に伝わるとは思えなかった。だが、あの日以来また眠り続けているワラ

          【短編小説】バベルの糸 第8話

          はとぽっぽ

          どうもこんばんちわん。 おもちときうものです、、 スマホ変換の誤字は独特ねー 飲みながら書きました企画、もう何年目なんかな マリナさんごぶは は ご無沙汰してます! 最近なんですけどね、今働いている会社で主任になりまして。 357歳になって 違う仙人か 35歳になって初めての役職でよほほーってかんじです。 うれしはずかしびっくりですねん。ほめてほめて。 もう一つ最近の話 今ぼくはUR賃貸の団地に住んでまして、築年数は割と古いのですが高層階角部屋で鉄骨鉄筋今クリーも

          はとぽっぽ

          【短編小説】バベルの糸 第7話

          「タクト、花言葉って知ってる?」  凍えて死ぬような寒さなど本当はこの場所には無いのだが、それでも吐く息は白く、二人がその身を縮ませて寄り添う理由になった。 「そういう言葉がある事は知ってるけど、詳しくは知らない」 「例えば、私がカシワさんによく渡している、ミヤコワスレ。あの花の花言葉は、“しばしの別れ”」 「⋯⋯そうなんだ」 「花にはそれぞれ、誰かの人生を象徴するような花言葉があるの。世界中の花を此処に集めて咲かせたから、此処には数え切れないほどの人生が咲いている

          【短編小説】バベルの糸 第7話

          【短編小説】バベルの糸 第6話

          「ワラビなら大丈夫だって、何度言えば分かるんだ」  カシワと雪を編みながら、タクトは上の空だった。丘に種を蒔いたあの日から一ヶ月が過ぎたが、ワラビは相変わらず寝込んだままだった。 「ワラビの代償だよ。あいつは病気で、本来なら一生寝たきりの人生だった。ヨミ様がワラビの生命力を、この世界の花と結び付けたんだ。だからあいつは起きて活動できる日があって、花を編める。この前は大きな仕事をしたみたいだから、その反動だろう。編み人としてのワラビの代償は、ワラビ自身の寿命だ。たが、あれく

          【短編小説】バベルの糸 第6話

          【短編小説】バベルの糸 第5話

          「おはよう、タクト」  朝にワラビと会うのは初めてだった。タクトの部屋にやって来たワラビは、今日は年に一度あるかというくらいに体調が良いのだと言った。 「ワラビ、今日は何を編むの?」 「またお花だよ。今日はちょっと特別な花を咲かせる。此処の近くに、丘があるでしょ? あそこをお花畑にするんだよ」  北の塔から数キロ先にあるその丘は、かつて内戦で戦死した身元のわからない遺体が埋められている。お世辞にも縁起の良い場所ではなかった。 「⋯⋯ワラビ、あそこがどういう場所か分か

          【短編小説】バベルの糸 第5話

          【短編小説】バベルの糸 第4話

           その年の冬は、多くの雪が降った。  この国には、数人ほどの雪の編み人がいた。今年はその内の一人に、タクトが加わった。  外に出て白い空を見上げたタクトは、頬に落ちた雪の冷たさに歓喜した。自分にも、世界を構成する美しいものを編む事が出来た。生きている意味が分からなかった幼い頃の記憶から、やっと決別出来る気がした。   編み物の技術は人一倍努力して学び、鍛錬を重ねた。伸び悩む期間が何年も続いたが、ある日を境に糸を自在に編めるようになった。   何かを代償にしている自覚はなかっ

          【短編小説】バベルの糸 第4話

          【短編小説】バベルの糸 第3話

           内戦が終わって二十年ほど経つこの国の人々には、内戦の悲惨さと同じくらいに“救い”の記憶があった。  時折、タクトはカシワという左腕の無い中年の男と糸を編んだ。カシワはタクトと編み物をする時は、必ずといっていいほどその話をタクトに聞かせた。  終戦間際の戦場。彼方此方に死体が転がる惨状で、生き残っていた兵士達は疲弊し、国民は苦しみ飢えていた。カシワは左腕を失い、死を待つだけだった。  そんな地獄絵図の中で、一つの影が揺れた。影は、少女の姿をしていた。影には色があって立体的だ

          【短編小説】バベルの糸 第3話

          【短編小説】バベルの糸 第2話

           北の町にある一部分の外壁が欠落した、少々歪な建物がある。元は何の建物なのかは不明だが、ヨミはこの建物を“北の塔”と言っていた。中に入ると大広場があって、壁に沿って螺旋状に階段があり、上に登る途中に幾つもの小部屋がある。この塔で、タクトは糸の編み方を学んだ。此処には、この世界を構成するあらゆるものを糸で編む“編み人”やその見習い達が集められていた。  数年の間、タクトはかなり苦労をした。特別な才能がある者が此処に迎えられるのだとヨミから教えられたが、自分には編み物の才能が無い

          【短編小説】バベルの糸 第2話

          【短編小説】バベルの糸 第1話

           朝目覚めた時にカーテンから射し込む光も、温めたスープも、出掛けようと手を触れた扉も、「行ってきます」という、その声も。  全部糸で編めるのだと人が知った日から、全ては糸で、編み物のように創られるようになった。  糸の汎用性は、世界を創れてしまうほどに優れていた。目に見えるもの、触れるもの、匂うもの、聞こえるもの。それらは複雑に絡み合った糸だった。少なくとも、タクトが生まれた時には、世界を構成する大部分は糸だった。だからタクトは本当の世界、現実を知らなかった。知らなくても困

          【短編小説】バベルの糸 第1話

          【短編小説】バベルの糸 プロローグ

           彼は大人しい子でした。そうですね、編み物は⋯⋯実はそれほど得意ではなかったようです。  彼が得意だったのは、あやとりです。いつも一人で、夢中になって遊んでいました。  編み物は、やり始めた頃は苦労していましたが、何年か経った頃には立派に編めるようになりました。才能はあったと思います。不得手ではあったものの、編み物は誰にでも出来る事ではありませんから。  彼よりも編み物が上手な者は沢山いました。だから彼が居なかったとしても、あの世界は成り立っていたでしょう。  ただ、彼のよう

          【短編小説】バベルの糸 プロローグ