【短編小説】バベルの糸 第2話
北の町にある一部分の外壁が欠落した、少々歪な建物がある。元は何の建物なのかは不明だが、ヨミはこの建物を“北の塔”と言っていた。中に入ると大広場があって、壁に沿って螺旋状に階段があり、上に登る途中に幾つもの小部屋がある。この塔で、タクトは糸の編み方を学んだ。此処には、この世界を構成するあらゆるものを糸で編む“編み人”やその見習い達が集められていた。
数年の間、タクトはかなり苦労をした。特別な才能がある者が此処に迎えられるのだとヨミから教えられたが、自分には編み物の才能が無い