ホモ4人と行く!ちんちん舐めてくれませんか?!の日光温泉旅!

「ホモ4人と行く!ちんちん舐めてくれませんか?!の日光温泉旅!」
というLINEグループに誘われたのは俺が会社のトイレでシコっている時であり中国人が靴下を食べさせられているハメ撮りにいたく興奮している最中だったのでその文字列には特に目を向けていなかったがよくよく見てみるとそのグループ名はゲイ団体旅行の真実を的確に照らし出したものであり俺が今、日光の山中を暗闇の中歩いているこの状況はよく考えれば予測できる事態だったのかもしれない。

このLINEグループに誘ってきたのはしし丸という男でこの男は縦横無尽三面六臂の一騎当千焼肉定食といった様相で人と人を繋げるのが上手く一体こいつはいつ休んでいるのだろうと全く必要のない心配をしてしまうほどカレンダーが青と赤の日には必ずと言っていいほどどこかに出かけている。
そんなしし丸という男が誘ってきたのが今回の日光温泉旅でしし丸以外のメンバーはくま、たーくんといったメンバーで揃いも揃って親から名付けてもらった名前を隠し30代を迎えてなお自らの呼称にくまやたーくんなど名付ける気概はインターネット文化の薄い人間には理解しづらいだろうがそれなりの勇気と覚悟を持っていると思ってもらって良い。

俺を含めたこの4人が何の繋がりかと言えばそれはしし丸繋がりとしか言いようがなく、俺はくまとたーくんの事はよく知らずそれは恐らく向こうも同様であろうから俺たちの間をしっかり繋ぎ止める役割を果たしてくれるのはしし丸という男に全てがかかっておりつまりそれはこのグループが非常に不安定かつ最悪なものであることを意味しているのだが、こういった誘いはしし丸と付き合っていればよくある事で俺という放っておけば休日は家でベットとゲームの間を往復する事しかしない人間からすれば外界に触れる機会をくれるありがたい誘いではあるのだ。人間は自ら動く人間と待ちに徹する人間に別れ待ちに徹する人間が多いからこそ自ら動けば人生が豊かになりますよ、という啓蒙も存在するがうるさいから黙っていて欲しいと思う。俺は待ちに徹するデメリットを理解した上でそれを選んでいるのだから余計なお世話である。全ては俺のエゴでありしかしそれが全てである。絶賛放映中の『エゴイスト』という映画は俺が主人公かもしれない。

「誘ってくれてありがとう。参加します。」

「(犬がグッってしてるスタンプ)」

「他の2人よく知らないんだけどどんな人なの?」

「くま君は俺たちの2つ下で31歳かな。たーくんは、ほらこの前店子が現金持ち逃げしたゲイバーで働いてる子だよ。」

「なんだか全然分からないけど分かりました。」

「多分気が合うと思うよ!」

このしし丸という男が言う「多分気が合うと思うよ!」という言葉は全くもって信用ならない言葉であり、以前この言葉をもらって会った人間に金を盗まれた事がある。仲介であるしし丸に黙ってSEXしたのだから仲介料かと思って特に彼に報告はしていないのだが、SEXして寝落ちしてしまった後に相手の姿はなく気づけば財布から現金がなくなっていた。カード類に手を付けられていなかったのは不幸中の幸い、または相手の手心だがその彼がこの前抜きありのマッサージを個人でやっていると人伝に聞いた時はあぁ抜きありってそういう…と思ったのは記憶に新しい出来事である。
とにかくこのしし丸という男に人間関係のバランス感覚というものは一切なく、ただ表層的に相手の人間性を舐めてそれで気に入れば懐に入れるというなんとも大胆な男でありしかしその大胆さは俺にはないものでこういったイベント事に誘ってくれる貴重な友人と言える。

グループLINEでは当たり障りのない会話をし最低限の日取りと旅程の打合せだけを済ませ旅行当日を迎えることになった。
旅行といっても30代を超えた男連中が旅に求めるものなど日常からの逃避などという曖昧なものではなく単純な休養、つまり酒と温泉だけであるので観光地の巡りもそこそこにして我々は早めに宿にチェックイン、そして15時頃から缶ビールのプシュという快活な音を4人の泊まる大部屋に響かせることになった。

くまとたーくんという男はしし丸の紹介の割にはマトモな男たちであり、いやより正確に言うならば初めましての状況下での扮装的なやり取りはそれなりに上手なようで旅の午前中で違和感を覚える会話はなかったかのように思える。いやしかし思えば俺たちは全員30代を超える男性連中でありそこそこの社会経験と残業代のつかない肩書きを持っているのだからそんな事は至極当然と言えば当然なのだが当然のやり取りが当たり前に出来る訳ではないという事はゲイの社会に生きていれば肌感覚としてなんとなく掴んでくるものだ。

くまとたーくんはそれぞれ彼氏がいるようでこの旅の中でも思い出したかのように彼氏の愚痴を挟んでいたが、今まで男性と付き合った人数が0である俺からすれば遠い世界の話でありながらしかし含蓄のある話として傾聴せざるを得ない事でもあった。
そこそこに酒を飲み旅館が個室まで運んでくれる夕食を食べまた酒を飲んでいるうちに俺は少し夜風に当たろうと外へ出たのだが部屋に戻ってくるとしし丸とたーくんの姿が見当たらなかった。

「あれ?くまさん、しし丸とたーくんさんどこ行きました?」

「お風呂行きましたよ。僕たちも行きましょう。」

「そうですね。待ってください、準備します。」

そうしてカバンを漁っているとくまが質問をしてきた。

「ポジションどっちなんですか?」

タチかウケのポジションを聞く会話などゲイの間ではポピュラーな会話などで別に気にする事ではないのだが、俺はその質問の唐突さと声色に纏う妙な湿り気が気になった。

「なんでそんな事聞くんですか?」

「いや、気になったもので。」

「はぁ。まぁどっちでもいいじゃないですか。」

「しし丸さんも知らないみたいだったので。」

しし丸?なぜここでしし丸の話が出てくるのだろう。くまとしし丸が俺のSEXポジションを話し合う意図が全く見えない。

「僕は彼氏がいるからという理由でSEXしない人間には見られたくないんですよね。他人の為に我慢する人間だと他人に思われたくない。あくまでSEXするかしないかは僕の価値観に依っていたいんです。」

「は?なんの話ですか?」

「いやだからゲイ4人で旅行してるんだからそういうことでしょう、という想像も働いてこないですか?少なくともしし丸さんもたーくんさんもそういうつもりですよ。」

「いやあなたもたーくんさんも彼氏いるじゃないですか。」

「僕は彼氏いるからSEXしないという男ではないんですよ。さっきも言いましたけど。それに僕はあなたの態度が今日一日気に入らなかったんです。」

一体全体なんだと言うのか。当然のやり取りが当たり前に出来るわけではないと言うのか。

「なにが気に入らなかったんですか?」

「あなたは何も分かっていないのに分かってるフリをしてるでしょう。今日がそういう集まりだと事前に言ってなかったのはしし丸さんも悪いですが、しかし普通わかるでしょ。分かった上で無視してるのか分かりませんが、だとしたらより醜悪ですよ。自分がまともだと決めつけて僕たちを値踏みしていた。その態度が僕は鼻につきました。」

「いやぁ、参りますね。なんなんですか、一体。俺は普通の旅行を楽しんでただけですよ。くまさんの言ってることは俺からすれば荒唐無稽。それに普通、という観点から言えば彼氏いるのにSEXしようとしてるあなた達の方が普通じゃないでしょ。」

「それが分かったフリって事ですよ。彼氏がいるから他人とSEXしちゃダメって誰が言ったんですか。少なくとも僕は言ってませんよ。」

「彼氏さんは良いって言ったんですか?」

「いや言ってませんけど。」

「じゃあダメじゃないですか。何を言ってるんですか。」

「そうだとしても僕はあなたの態度が気に入らないんですよ。しし丸さんにおんぶに抱っこで何も選ばない。右から流れてきたものを取り上げただけで自分が選んだと思っている。きっとゲイになったのだって何の苦労もなくただなんとなくそうだったからゲイを名乗っているだけなんでしょうね。俺はそういうのが気に入りません。待っているだけの人間が自ら選んでいる人間を冷ややかに見るのは我慢ならんのですよ。」

「そうやって自分が能動的な事を免罪符のように扱っているようですが、世の中で一番大切なのは誠実さですよ。俺たちは選ぶことも選ばないこともできるし、東京から沖縄まで2時間で行ける、冬には温かい飲み物がコンビニで売ってるし、夏は涼しい部屋で夏の陽射しを触れるんだからあとはもう何もいらないんですよ。それなのに不誠実にも浮気をしようなんてあまりにも驕っているとは思いませんか?」

「小さい男ですね。自己評価が低いからそういう考え方しかできないんですよ。自分が好きなように振舞って周りに与える影響にも責任を持つ、それで良いじゃないですか。エゴなんて皆んな持っていて誰もがエゴイストなのに自分だけはそうじゃないとあなたは心のどこかでそう思ってるんじゃないですか。」

「ああもう最悪ですね。何が最悪なのか分かりませんがあなたは最悪です。この考え方にしし丸もたーくんさんも同調してるのだとしたらほんとに最悪です。俺は戦いますよ。つまりここから去ります。ありがとうございました。楽しい旅でした。」

「今からどこ行こうって言うんですか。ちょっと待ってくださいよ。」

俺はくまの静止を振り切り荷物をまとめて外に飛び出した。今から最寄りの駅に向かっても今日中に家に帰ることは出来ないのだろうけど別にそれで良かった。山奥の隠れた旅館を選んでしまったが故に俺は徒歩で暗闇の中を下山することになってしまった。
俺が歩きながら考えていた事はくまへの憤りとあと複数プレイしてみたかったな、という少しの後悔があってそれ自体が自分自身でも嫌で俺はクマ避けとしてバカボンの主題歌を大声で歌いながら街を目指すのだった。

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