待つ人たち

遠くで聞こえるフェスの喧騒を聞きながら俺は代々木公園駅4番出口でタカヒロを待っていた。今日は彼氏であるタカヒロと代々木公園で開催されている台湾フェスに行こうという約束だったのだが、約束の15時になっても現れる気配が全くない。そもそもこの15時という時間も元々は12時集合だったのだが今日の10時頃にタカヒロから連絡があり「ごめん!集合14時にしてくれる?(緑のゲロ)」とのことだったので14時にしたのだが、なんかいつの間にか集合は15時になりただいまの時間は15時40分。俺は40分も駅の出口で突っ立っていることになる。


「Good News!一本早い電車乗れたので俺の遅刻が5分短くなった事をお知らせするぜ!」

というLINEを受けたのが14時55分。そこから15時10分に電話したところ

「もしもし、タカヒロ?まだ?もうフェス終わっちゃうよ。」

「まだ終わんないでしょ。10時に始まったなら18時まではやってるよ。」

「そうなの?」

「いや、知らないけど。」

「なんなんだよ。」

「とにかくもう着くよ!代々木公園駅の4番出口でしょ?あと5分以内には着くよ!」

「じゃあ待っとくよ。」

「うん。もう改札だから!遅れようがない!」

この会話を最後にタカヒロからの連絡は途絶え、俺はそれ以来ずっと歩いて数分先で開かれている台湾フェスの喧騒を聞きながら東京ダイナマイトのwikipediaを見て、そこから関東連合のwikiに飛び、更に日本の未解決事件のwikiを見たりして暇をつぶしている。

タカヒロは昔からこういうとこがあり遅刻の常習犯だ。遅刻しているのに服屋で試着をしていた時もある。良い感じのがあったからつい寄ってしまったらしい。どういうことだ。相手を待たせておいてあらこの服素敵試着しちゃおうかしらと思えるのは人を殺せる人間くらい頭がおかしい。俺はいよいよ痺れを切らし代々木公園駅から代々木上原で乗り換え新宿駅で降り発展場に向かう。この時間なら昼料金で少し安く入れないか?


「2900円です。」

「え?昼料金じゃないんですか?」

「お客さん。もう16時だよ。16時は夜。ご飯屋さんもそうでしょ。」

「はぁ。」

服を脱ぎ適当な個室で寝待ちをする。30分ほど待つが誰かが手を出してくる様子もない。待つことばかりだ、人生は。下半身を丸出しにしながら人生について考えることも珍しいが、考えずにはいられない。果報は寝て待て。どれだけ?少なくとも発展場で待って結果を得られることは少ない。あー、嫌になっちゃう。個室内で手足をバタつかせて暴れようかな。やばい奴と思われるだろうが、まぁ、いいか。誰か俺を心配してくれ。うおーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!オラオラオラオラオラ!!!!!!

「だ、大丈夫ですか?!どうしました!?」

外を通りかかった人が声をかけてくれた。薄暗闇の中で目が合った。

タカヒロだった。

お互い声を上げそうなほどびっくりする。タカヒロは目を瞬かせて動けないようだ。お互いめちゃくちゃしっかり裸だ。久しぶりにタカヒロの裸見たな。いち早く我に返った俺はタカヒロに言った。

「遅いよ。」

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