2023/05/16

地元岐阜から東京に移り住んだ時に最初に選んだ場所は足立区の綾瀬という所だった。選んだマンションは真横に高速道路、真向かいに謎の煙を吐き出し続ける魔晄炉みたいな工場があって窓を開けるとちりやほこりが入ってきそうで空気の良い地元から都会に来たという確かな実感が得られたが窓も開けられず魔晄炉のせいで陽も差さないので俺は部屋の隅に溜まる埃のようになるしかなくてわざわざ東京に出てきたのに埃になるのかと意味が分からなかった。
足立区を不当に貶めるつもりはないが足立区は個人の傘や自転車をレンタル制とする画期的なシステムを取り入れていて、その証拠に店先の傘立てに置いた傘は買い物後に見るといつも無くなっていたし、駐輪場に停めていた自転車も使おうと思ったら無くなっていて2日後くらいに戻ってきていた。足立区民は傘立てに傘を入れたがらないのでスーパーの床はいつも濡れている。足立区のスーパーはゆっくり歩いた方が良い。

そんな場所で本当にいろんなことがあり結局俺は足立区を出ていくことになったのだが、どうせなら中央線沿いに住みたいと思っていた。高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、どれもド田舎岐阜にいながらテレビで聞いた事がある地名ばかりだ。タモリだって橋本環奈だってこれらの地名は知っているだろう。橋本環奈は笹塚で飲んでいるとSEX依存症のゲイが言っていた。そんな誰もが知っている場所に住むことに憧れて新居を探していたら上石神井に住むことになった。杉並区のカラフルさに憧れて結局練馬区に辿り着いてしまった俺はやはり風に吹かれる埃でしかし杉並区に近づいてはいるのでそれは喜び、このあたりでiPhoneに記憶させた地元岐阜県多治見市の天気予報を消した気がする。
東京という街は駅一つ一つがそれぞれ違う顔を持っており、まるで東京という街が一つのリトルワールド(愛知県犬山市にあるテーマパーク)のようである。新しい街が楽しいあまりにローションを使ってシコったりしてしまったけどローションでシコると後片付けが面倒なのとローションとちんぽの境界線が分からなくなってしまって俺はちんぽをシコっているはずなのにローションをシコってる気がしてしまって怖くて不安でやっぱり東京は恐ろしくて他人の目とかそういうのを気にしてしまう街で悪意に晒されることも時々あってゲロを踏んでしまったとやりすごそうと思っても結局俺はどこにいようが埃なのだと再認識してしまう時もありました。

ゲイで根無し草の俺がありとあらゆる物に流されて辿り着いた街は少し気に入っていて、上石神井は駅のホームから踏切を待つ人たちが見えるのだが夕方ごろに帰るとスイミングスクール帰りの子ども、丸坊主の中高生、買い物袋を提げて歩く主婦が皆一様に踏切で待っていて俺とは全然関係ないこの街で全然知らない人間の生活が当然あって踏切を渡るという事は全員に目的地があって場所から場所へ”渡る”という行為はきっと重要なことなのだと根無し草は思う。
人の全ての行動は幸せになる為の行動であるとどこかの哲学者が言っていたがここから見える人たちもそれぞれ一生懸命に生きているのだろうか、などと言う謎の上から目線、薄汚い選民思想が浮かんできて俺は相変わらずこの街に馴染んでおらずまた俺はいつまでもこの街にとって異人なのだという事だけは分からされる。
ちなみに俺は仮性包茎なのですが仮性包茎と自称する事は実は簡単で、自分の創り上げたものが傑作です、と言う方が難しくて恐ろしくて自虐のなんと楽な事かを思い知らされる毎日であるが俺だっていつまでも部屋の隅の埃でいるわけではいかなくて歯医者の予約をしないといけないし布団もそろそろ干さないといけないし謝らなくてはいけない人がいる。幸せになる為の行動は頭では分かっているはずなのにローションを使わずにシコってもかなり気持ちいいので俺は家に帰って少しゲームをしたら日付が変わるくらいの時間になってシコったらいつの間にか寝てしまってそんな毎日です。

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