2021/11/16

今日、会社の先輩がけっこうな遅刻をかましてきた。フレックスのコアタイムに入っても連絡がなかったためそれなりにチームメンバーがざわざわし始めたところで先輩は出社してきて、「すんません、昨日ちょっとデートしてて…」と遅刻の理由を宣った。それを聞いたおじさん連中は、ふぅん、デートかよ、お前もやるな~といった反応を示していた。お気づきの皆さんもいるかもしれないが、こんなもん完全にSEXに熱中し過ぎましたという暗喩で、おっさん方はそれを察したのだろうが俺としてはなるほど、そういうのもあるのかと孤独のグルメを決め込むしかなかった。

好きな人と寝るってのは世間においての幸せの定義の中では結構な高ランクに位置していて、今回の先輩のように大遅刻をかましてきてもなんとなくその幸せの手触りに絆されてじゃあ遅刻もしょうがないかぁとなってしまうらしい。いやプライベートな事柄を仕事に混同するなよと言われてしまえばそれまでなのだが、今日の先輩の遅刻はそれで許された雰囲気になっていた。じゃあ俺も昨日は男と激熱SEXしてたんで11時出社しますわと言いたいところだがそんなことを言ったら俺の社内での立ち位置は見事に急転直下だろう。好きな人と寝るって言ってもそれをファンタジーで幸せなものとして捉えてくれるのはやはり男女間の話であり、同性間のそれはどこか背徳的でジメジメとした印象が付きまとう。俺の好きな人と寝る行為は正義の側にはなくて、かといって悪ではないのだけど、どうしてもカラッとした印象を人に与えることはない。
しかし会社の先輩どもはそんな俺の内情なんて知るわけないので、俺に対して「好きな女はいるか?」とか「結婚すると色々楽になるぞ。」などと先輩ポケモンマスターのような顔をして人生のいろはを教えてこようとしてくる。会社でする恋愛話に俺は、良いですよね、結婚。早くしたいです。なんて理解を示すふりをしながらも、この無意味な問答に奥歯に引っ付いたキャラメルみたいな粘っこい後ろめたさを常に感じている。

俺としては大手を振って恋愛することを望んでいるわけじゃないが、とりあえずはあの先輩ポケモンマスター達をぶっ殺すことだけ許してくれないだろうか。かといって自分の居心地の良い場所だけに浸かることを良しとするとそれはそれで感覚が鈍る気がする。難しい問題ですね。自分のコンプレックスとか環境とか将来の不安とかは結局どうやっても全部解決できないからみんな悩んでいる。人には人の地獄があっておいそれと相手を羨んだり哀れんだりしないように気を付けて生きていかなければならない。悩んだって解決しないことなら好きなものを食べて好きなものを見て好きな人と寝ればいいのかもしれない。異性愛者だろうが同性愛者だろうが一文無しになろうが月が輝かなくなろうが地球が死の星になろうが、どうしたって好きな人と寝れたら人は幸せなんじゃないだろうか。

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