カルピスは青春の味

最近はいわゆるおうち時間が増え、家の中で楽しめることを多々試してきた。

時間のかかるピザやパンを作ってみたり、観たかった映画を観たり、録画したドラマを何度も見たり。

そんな日々にも少し飽きてきたころ、私はあるYouTubeにハマってしまった。

「ティモンディベースボール」

そう、あの今を時めくティモンディが済美高校の野球部時代を振り返るもの。

高岸のあの明るい性格からか、2人が楽しそうだからか、なんだかクセになって何度も見た。

済美高校の地獄の練習、絶対に聞き取れない声出しなど。

自分にもこんな時代があったなと、懐かしい気持ちにもなれたからかもしれない。


私は中学、高校とバスケットボールをやってきた。

特に高校なんか年に休みは数日しかなく、バスケしかしていなかった。

そんな一応の青春をささげた某県立高校のバスケ部の振り返りたくない思い出を振り返ってみようと思う。

1.謎の声出し

済美高校ほどではないが、声出しは独特だったように思う。

基本の挨拶は「ちわっす」

男女ともに「ちわっす」である。

某高校のバスケ部の歴史はかなり長く、今ではもう創部100年くらいになっていると思う。

もともと旧制高校→男子校だったので、男子の部があって後から女子が加わった。女子はおそらく創部50年くらい。

多くの部活が男女一緒に練習していたと思うが、特にバスケ部は格別。

男子と同じメニューをこなし、男子と一緒に試合をし、男子と同じように挨拶をする。

女子が「ちわっす」というバスケ部を私は見たことがない。

すべての挨拶が基本「ちわっす」なので、廊下で監督や先輩とすれ違ったら「ちわっす」、練習が始まる前にコートに挨拶をするときも「ちわっす」である。

もう一つは「したっ!」

「ありがとうございました」の「した」である。

監督の話が終わったら「したっ!」

練習が終わったらコートに向かって「したっ!」

なんとなく、バスケ部っぽくない。

2.原始的な練習

練習もとにかく原始的な体力づくりのメニューが多かった。

夏のメニューは地獄。バスケ部なのに日焼けをする。

周りに坂道や階段、ランニングコースが多数ある土地だったので、坂道では坂ダッシュ、階段では階段ダッシュやおんぶ、ランニングコースではインターバル走をした。

帰ってきたら体育館の中でサーキットトレーニングが基本。
10種類くらいのメニューを回る。
中でもボーリングのピンを両手に持って肩の高さで腕を広げ、ピンを当てるのが地味に辛かった。
(ボーリングのピンはなぜあったんだろう…)
マットの台車を使って腹筋するメニューもあった。

もう一つ辛くて記憶に残っているのが「積み木」と呼ばれるメニュー。
文字通りあの積み木を使うのだが、遊ぶのではない。
一方の床に積み木が並んでおり、それを反対側にスライドステップ(かに歩きみたいなもの)で持っていく。
積み木は小さいので屈まなければならず、とてつもなく下半身に負担がかかる。

メニューは常に突然監督から指示されるので、「積み木」と言われた瞬間、全員の表情が曇る。

神社の階段をダッシュするメニューもあった。

ありとあらゆるお金のかからないもので鍛えるのであった。

3.青春の味

青春の味と言えば決まっている。
私たちにとっては「カルピス」だ。

夏合宿(5泊6日の地獄の練習)で、唯一与えられる飲み物がカルピスである。

みんなでカルピスの原液を持ち寄り、マネージャーや卒業生達が大きな発泡スチロールの中でうすーい味のカルピスを作ってくれる。
それを柄杓ですくって昭和の給食にあるようなアルミのお椀で飲む。

正直言ってあまりおいしくはないのだが、それはもう練習の合間のほんのわずかな至福の時である。

ハードな練習の合間にカルピス?と疑問だが、乳酸菌が良いらしい。
あの1964年の東京オリンピックで銅メダルを取った円谷選手もカルピスを飲んでいたらしいとは驚きだ。

そういえば、今ごろ東京オリンピックが盛り上がっているはずだったな。
相変わらず東京は人が多いけど、なんだか物寂しい気がしている。

久しぶりにカルピスでも飲んでみよう。サワーとともに。

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