嘘をつく人:12

 


「弁護士さんではないの?」
わたしは尋ねました。

「弁護士の役ですよね?」
ポロシャツの男性は逆に尋ねます。

「ええと、弁護士役なんですよね?」
ナポリタンを食べる止めて。

「どういうことですかK山さん(彼の名前)?」
すると。

 当人はハンバーグを咀嚼しながら。
「損害賠償は10万円でいいよ」
と言いました。

「友だちだと思っていたキミたちのせいで僕は仕事に行けなくなりクビになった。それくらいの請求は正当」

 どういうこと?

 そう思いました。

 当人は美味しそうに食事を続けます。

「100万円貰ったっていいと思っているが、どうせ払えないだろうし分割にしたらキミ、支払い中に逃げるだろう? だから10万円でいいよ」

 彼はそう言ってライスを追加注文しました。

「ここのハンバーグはご飯が進むんだよ」
 なぜか彼が得意気です。

 ポロシャツの男性が尋ねます。

「損害賠償ってなんですか? それがお芝居のテーマですか?」
 ナポリタンを啜っていたフォークを置きます。

 笑顔なのは当人だけで、連れの人もわたしたちも頭にハテナマークが浮かびます。

 明らかにポロシャツの男性は弁護士ではなさそうです。

 そして困惑しています。

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