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レビューRadio現場 vol.46 『介護と哲学』feat.前田卓弥さん(12分くらいで読めます)

まずはホストお二人の近況から。

森近さんは、親不知腫れからーの、上半身がハレハレユカイ ということで、お見舞い申し上げます。配信時にはスタアのオーラを発揮して全然腫れが目立たないという流石さ。

吉田さんにおかれましては、岐阜の母校で講演をされたとのこと。
吉田さん、教科書を買わない、遅刻のタイトルホルダーなどなど出身高校での輝かしい履歴をお持ちとのこと。
講演には、なんとお母様も聴きに来られたとか。

さて本日のテーマは、介護と哲学。
介護と哲学には実は近しいところ・オーバーラップするところが多々ある、とは吉田さん。
そして「介護の人は介護のことを介護以外の人に話した方が良い」と、リンカーン的なスピーチからのゲストの呼び込みへと。

ゲストはなんと、マエタクさん。
祭りで織田信長に扮して、街中で馬を乗りまわしたりしない方が、Radio現場に登場!
そして、呼び込む前に入室を果たす、入れ込み過ぎたダービー馬みたいに登場したのが、前田卓弥さん!(以下、前田さん)
「介護現場を哲学の目を通して見つめる」お方。

吉田さん曰く、「介護を極めると、結局哲学に行き着くのでは、という気がしている。科学というよりも」とのこと。

前田さんは、“介護哲学教室 カイゴテラス”の代表をされている。
介護現場での肩書きとしては、施設長補佐で、いわゆるマネジメントをされているそうです。

前田さんの自己紹介は高校時代から。サッカー少年として過ごしたが、部活引退とともにバーンアウト状態になってしまったのだそうで。
吉本隆明氏の言葉を引用するあたり、もう哲学的な話が始まっている!
そんな折、定年間近の女の先生から「優しいから介護の道に進んだら?」と粗〜い感じの進路指導を受けつつ、この道へ進むことに。
介護の短大に進んだものの、勉強が超絶つまらなかったと話されていました。
その学校では、やれシーツ三角折りのタイムアタックだの、やれ立ちオムツが出来てナンボだの、やれ布オムツの当て方を極めるなどの、ずいぶん昔の学習内容。
心機一転のため、4年制の社会福祉学科の3年次に編入を果たした前田さん。
そこで、ソーシャルワークにどハマりされたという。気持ち悪いくらいソーシャルワークがお好きだとか。
やれグループワークの理論やら、やれ人と環境の接点に入っていく姿やら。夢があったと当時を振り返る。
その頃は、恋愛で砕け散った女の子にICFを当てはめて分析しようと試みるような学生さんだったとのこと。
社会福祉学部の故・端田篤人准教授の教えを受けられ、ソーシャルワークに惚れた前田さん(大学の先生にも恵まれてらした)。
ちなみに先生は、フォークシンガーの はしだのりひこ氏の息子さんとのこと。
出身地である長野は、田中康夫元県知事の肝入りで、宅老所が多く存在している地域性。
知事の一声で、1事業所当たり開設に200万の補助を出すという大盤振る舞い。1年で2〜300個増えていたなんてこともあったという。
地元への就職は一旦おいといて、立教大学(コミュニティ福祉学部・略してコミュ福ではなく)の21世紀社会デザイン研究科に進学された前田さん。
非営利組織の経営学なんかをテーマにしていたとのこと。
池袋のキャンパスには、色んな先生がごちゃまぜになっておったという。経営学、経済学、社会学、社会福祉のほうからも。
社会というものは、立体的に捉えないと本質が見えてこないので、一つの学問だけで捉えてはいけない」というポリシーを持った大学の文化であり、そこに影響されて、さまざまな“雑学”をたくさん学ようになって、現在に至る、とのこと。

例えば福祉を研究するならば、社会福祉の視点だけではなく、様々な学問の視点からアプローチをしていくべきという立ち位置。
なんとなく、高齢者の身体に触れるときの注意点、
「点ではなく、線で。線ではなく、面で支える」に似ている。

森近さんの質問。「介護つまんない、と思ったのに、福祉の道を突き進んだ理由は?
そして、このまま社会に出るのが怖かったことの意味は?」
前田さんはこう答えた。「大学に進んではみたものの、あんまり何かを身につけたという実感がなく、ひとまずテキストに沿った教育を2年間して、社会に出たときに、私に何ができるんだろう?ということで怖くなってきた。怖くなってきたというのは、例えば先々の人生を考え、所帯持って子供産まれて、この仕事で生活が成り立つのかな?的な怖さ」だとのこと。
在学中にとある実習受け入れ先施設で、男性職員にこんなことを言われたそうです。
「君(この仕事に就くと)、将来大変だよ」
絶対良くないですよね、これ。誰一人得しないアドバイス。略して、誰得イス。

自分は「這い上がってきた」と話す前田さん。人の話を聴き、人の立ち居振る舞いを観て、己の立ち位置と進むべき道を把握する能力に長けてらっしゃる。そんな印象を持ちました。
大学院生の時には、研究者になりたいという気は起こらず、せっかく培ったノウハウを次の世代の現場に落としていくために踏ん張りたいと思うようになったそうです。
その心のシフトは、大学院が厳しかったから。今でいう公開パワハラ授業で吐きそうだったからなのだそうです。
森近さんにはわかりみが強いようですが、オンエアできないそうなので具体的なエピソードはナシゴレン。
それでも前田さんには、1年生の頃から支えてくれる大人の人たちがいらしたとのことで、エビデンスを隠したまま「すぐ辞めちゃダメだよ、君は天辺獲れる才能があるんだから」的励ましをもらえていたそうです。

学生の前田さんに良くしてくれた地方議員さんの話が面白かった。
吉田さんが現役の議員さんから伺ったところによると、議員さんは7〜8割○ズだそうです。焼きたてホヤホヤの。

「自分の中でも努力をして、毎日3冊くらい本を読み、先生たちの言ってることを何とかして自分の頭で理解できるようになりたい!そんな気持ちが、社会で物事を理解することにつながるんじゃないか」という仮説を持ちながら、いろいろな学問を吸収していった前田さん。
介護の本はあまり読まなかったという。
そして、辿り着いた先が“哲学”であった。

なぜ、哲学にハマったのか?その原点は、故・立花隆氏だとのこと。彼の講義(世界史的な)を受講されたという、なんと羨ましい。
立花氏は、1日に15冊くらい本を読んでいたという。その本を講義中に紹介する時間があり、中でもプラトンを中心とした本。
知の巨人から「君はプラトンも知らないのか?」とボコボコに言われてしまった前田さん。「この辺りのギリシアの思想も知らなくて、物語見えないぞ君は」
昔のインテリっぽい見下し感がたまらなくイイですね〜、と吉田さんの評。
前田さん曰く「立花先生はメチャクチャ優しくて、笑いながらそんな風に言ってくれた」そうです。
そんな 人きっかけで、哲学書を“体に入るまで”読んだという前田さん。
2〜3年読み続けた結果「これは、後からジワジワ面白さが分かるモノだ!」と理解できたとのこと。そこからは、そのジワジワ感のみを求めていったという。

前田さんは、どういうふうに介護の現場を哲学しているのか?マネージャーとしての立場を踏まえて、語ってくださった。
介護の現場は、ピラミッド型の組織で働いたりする環境であるが、その現場で人々はモノを言えずにいる。さらには多様な考え方が生まれる道筋が少ない、という。
思惟の道幅を広げる・選択肢を広げる等、いわばポストモダン的な考え方(固定化しない)。
「べき論」的な大きなストーリーで生きるのではなく、多様性や個別性を認める価値観を介護現場に落とし込んでいこうとされている。

社会に対して大きく発信する、というよりは、せめて自分が関われる範囲でより良く生きていく道筋を残したいと考えている前田さん。

会社のトップは特別でないことの例えとして、「マネジメントなんて、小学校の通学の旗振りの人だってやってる」が印象に残ってます。心が軽やかになった気分。そしてパクろうこの例え。

考えて仕事をする、というけれど、現場には明確な指示が欲しくて、考えるのが苦手な職員が少なからずいる。彼らへの接し方をどうしたらいい?と森近さんの質問。
これに対し、前田さんはこう答える。
A、B、Cという選択肢があってどれがいい?と問えば、「なんとなく、これ」という答えが返ってくる。その“なんとなく”ってなんでなんだろう?とか、君が好きな理由ってどういうこと?とか、どういう時なら決めやすい?など、スモールステップを踏むようにしている、とのこと。

「異常って常ならず、だから多様性ってことなんじゃないの?」と幼少のみぎりから考え続けて、「こんな子供、見たことない!」と大人にはじかれ続けていた吉田さん。
前ならえなどの規則を守っていさえすれば良い教育を受けづづけた子供たちが、社会に出て“考えるのが苦手な”大人として巣立ち続けている我が国。

ミシェル・フーコー「権力は至るところにある」人々を処罰する仕組みは普遍的に存在している。それが教育システムになっていってる
パノプティコンの話だ!ここでつながってくるとは!(個人的な感動シーン)

「なぜなら、そういうルールだから」と「それは非人道的だ」の対決が多い、介護の現場。
“移動の自由”についても考えてみる。

世の中、エビデンスで物事を決めたがるが、ことコロナ禍に関しては“エビデンスがいまだに不明”なことがほとんど。
吉田さんは、道で一生懸命マスクをして、クローズドなカフェではマスクを外しているおかしさを指摘されていたが、私はエビデンスで言うなら、ハンドドライヤーの可否が可の方にシフトしてきた(エビデンスが180度変わったこと)と、施設によって足並みが揃わない現状がおかしくて仕方がありませんのです。

“エビデンスと意味”の対立って、江戸っ子なら“義理と人情”ってことでOKなのかな?

そういや、COCOAのアプリって数日前に削除したっけなぁ。1回だけ濃厚接触で起動したっけ。

前田さん曰く「あと、感染症を誰かのせいにしたり、加害と被害の関係で捉えるっていう付き合い方は良くないと考えていて、誰かのせいにするとキリがなくて」

日本では、叩かれたくない・非難されたくないという風潮が強すぎて、思考停止に陥っているのではないかと、森近さん。
ノイジー・マイノリティへの対処問題。

福祉は息苦しい。
前田さん曰く「例えば、感染症対策を手厚くやりましょうと言いながら人員配置は減らしましょうと言ってみたり、使えないテクノロジーをまじまじと見つめられながらビッグデータを使っていきましょう、とか、
この世界は、もはやデ。ズニーランドくらい訳わかんない夢の話が飛び散って、もうちょっとこういった世界を少しずつ整理したり考えていったりすることが大事なのではないかと思っている」とのこと。

ビッグデータといえば、魑魅魍魎蠢くLIFEが槍玉に上がった。ほんとヤダね、あれ。
LIFE自体が生きていない感満載。 NO LIFE
LIFEは毎月10日前後に森近さんのライフを奪っているらしい。
あれは、高齢者という群れの指標を見ているようなものだ、と一刀両断の前田さん。
フィードバックがドイヒー。「で?」ってやつがとんでくるらしい。
あれで個人を捉えようという発想自体がおかしいし、そもそも統計は個人を深く理解するツールではない
統計は「治る・治らない」が指標ならば有効だけれども、福祉の「良い・悪い」は因子が多すぎて解析には不向き。ていうか、解析に不向きなんだよね、福祉とか幸せとかって。
人生は物語である。物語をデータで理解しようとしても無理筋てなもんで。

前田さんはLIFEについて「あれがなぜあそこまで使えないモノか?を堂々と言えない社会なのかってことには興味があって……この現場の誰もがこれはヤバいんじゃないか?このポンコツさは半端ないんじゃないかと。これを誰も直に伝えてないという」
この件に関しては、誰かが反町隆史になって、言いたいことも言えないこんな世の中はPoisonなので
反町のPoisonは、赤ちゃんの寝かしつけに激アツでリバイバルしてましたね。

Poison好きな前田さん。他の例でいうと、キャリアパス制度なんかも「誰があんな右肩上がりにみんな生きていけると思ってるんだ!」と物申す!
高度成長期のなごり雪みたいなもんですよ、右肩上がりなんて。制度設計が獲らぬ狸のなんとやら。

もうちょっと、時間がゆっくりで生きていてイイんじゃないかと思っている前田さん。
そういや、婚期のクリスマスとかも言わなくなったしねぇ。
本来なら21時スタートなのに、ナチュラルにコピペして20時スタートになっていたことをカミングアウトした吉田さんと優しい前田さん&森近さん。
私も「あ!そうだっけ?1時間遅くなって20時なったんだよな!」くらいのノリで直前までアマプラでガンダム見てました!

東京に来たイギリス人が定刻どおりにやってくる山手線と秩序正しく列をなす日本国民をみて「アメイジングでスケアリー(何それ怖い!)なんでこんなことができるのかサッパリわからない!」と語ったそうで。
いや、陸蒸気の頃にアンタらの国からダイヤの運行方法入手したんだぞ、我が国は!

不寛容な現代社会の風潮。しくじったな!破門だ!→洒落の利いたことを言ったら許される、くらいであってほしいなぁ。

吉田さんは、平家物語の無常感が好き。
ある日、平家物語を頭に浮かべながら新宿南口のスクランブル交差点で眺めていたら、みんなツラい顔をしているのがわかったという。そしてそれと同時に「あと100年もしたら、全員死ぬよね、この人たち」とふと思ったとのこと。
自分を含めて、みんな死ぬんだな、と思ったら、気が楽になったと。
なんなら、そのスクランブル交差点でみんなで話し合いたい、と前田さん。デモっておそらくこんな感じで生まれるんだろうなぁ。

高齢の方は歳を重ねるほど、それぞれに流れる時間を生きていて、いわゆる現役世代の規律に合わせた時間にフィットせず、このミスマッチで我々が勝手にストレスを感じ、虐待をしてしまうとか。
「なんではやく動かないの!」って言いがちだけど、年配の方は急げないし、急ぐ用事もないし、なんなら残された時間もないからそんなに慌ててやりたくないし
生産性なんかもそうだけど、時間についての解明はもっとした方が良いと感じている前田さん。

「のんびり楽しくやりません?」

「もう少し社会に無駄が多くてもいいんじゃない?」

「ここが変だよ 介護現場!」とその打開策は?
手段と目的の優先順位がひっくり返っているのかも。

若手の人材不足については、入口が介護だと入りにくいから、いろんな窓口から介護につながっていくアプローチの方が良いのでは?と前田さんは考えてらしゃる。
「ガチオムツ交換系です!」はNGでお願いします。

「なんにも関係のない人のオムツを替えるのと人生を共に歩んできた人とのオムツ交換は違うし、1人目のオムツ交換と、55人目のオムツ交換もやはり違う」感情面でも環境面でも労働負荷の観点からも。

キャリアパスが上手く描ける筈がない>PDCAサイクルくるくる病の話が面白かったです。
OODAループの方が介護向けなのかもしれない。マネジメントが軍隊方式の方がフィットする介護現場。

わざわざ、頭の上にメガネを仕込んで登場してくれて、ありがとうございました、前田さん。

→私見ですが、哲学とは真理を明らかにすること。
哲学的態度とは、正しいと信じる真理に命をかけられるかだと考えているのです。
己は哲学そのものを考えられるほどではないので、どれだけ形のないものに本気で挑めるかに重きをおきながらの毎日であります。
【ライブ後に私が書いたツイート】
→ 真理が真理であるとはどういうことなのか、現代社会に問われる最も根深い問いかもしれませんね!
【前田卓弥さんのリプ】
→ 真理を求めると言うことが既に哲学的かつ宗教的な営みですよね〜!果てしないなぁ介護
【吉田さんのリプ】

こんな風に、あれこれと考え考え 夜は更けていく。

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