日常#57

日常というタイトルで書いている日記ですが、これを日常として書くにはあまりに僕の日常がふしだら、ニッチ、アングラなことになってしまう、つまりは非日常なことを体験してきました。
これを非日常と感じているのは自分の経験値の不足からでしょうか? 簡潔に言うとストリップ劇場に行ってきたんですが、一度は行ったことある人はどれくらいの割合いるんでしょうか? さらに言えば、ゲイであることを自覚してから行った人はどれくらいいるんでしょうか?
とりあえず、一旦書きます。
熱が冷めてしまわないうちに。

僕の中高の友だちにひとりエロがとても好きな友人がいて。セックスが好きというわけではなく、エロというジャンルへの探究心が溢れているという意味で。
文学好きな彼は飄々としていて時々ふらりとDisdordに入ってきて、最近開拓したエロの世界の話をしてくれる。未知の世界の話はやっぱり楽しいから僕は彼の話が好きだ。その中の一つとして彼が話してくれたのがストリップ劇場で、僕が喰い付いて話を聞いていたら今度一緒に行こうよと誘ってくれた。
そんな彼がふらりと東京に遊びに来て、東京にいる高校の同級生と徹夜スマブラマリパ、明け方の泥のような仮眠、だらだら駄弁りタイム、のろのろ朝食を経て特にすることもなくなり時間を持て余していたところで「俺今からストリップいくけど、行くか?」と言ってくれて、その誘いから15分後にはもう自分は人生初のストリップ劇場にいた。

受付で学生証をみせ、3000円を払う。通常だと5000円だ。こんなところでも学割が効くのは少し面白いなと思う。
彼はトイレに行ってくるというので、先に地下へと続く階段を降りて重たいドアを中を伺いながら開ける。裸足で履いているサンダルの上ををエアコンの冷気が這っていって緊張する。
そこにはもう踊り子さんが全裸で踊っていて、恥ずかしげもなくステージの上でV字開脚をしていた。
会場は60人ほど入っていて、T字型のステージを囲うように客席がありその周りに立ち見の客がいて思っていたよりも人が多かった。客の5割ほどが還暦は超えていそうなおじさんで、4割ほどがそれ以下のおじさん、驚いたことに女性の客もちらほらいた。自分のような若い人はおらず、物珍しそうに一瞥したのち壇上に視線を戻した。
T字型のステージの先端が盛り上がり、回転し、踊り子さんがディスプレイされたフィギュアのようだった。一番前の客席に座っている人たちの鼻先をかすめそうなほどに伸ばされた脚はとても美しくて、アクロバティックなポーズをして陰部を見せつける度に拍手が起こって、自分もそれに倣った。楽しい。
少しでも手を伸ばしたら触れられる距離で仕切りもなにもないのに誰一人として踊り子に触れるような素振りもみせなかった。
こういうアングラな場所はもっと無秩序でいかがわしい場所だと思っていたからその民度の良さに驚いて、少し好きになった。
とはいっても自分はゲイだから女性の体をみてもそんなに興奮はしなかったが、壇上の踊り子に熱い視線を向けるタイプなストレートのおじさんたちを見て、あぁこれでムラムラしてるんのかな~と思って、そこには少し興奮した。まさかストリップ劇場でそんな見方をされているとはつゆほども思わないだろうな~。

ただ踊り子さんが服を脱ぎながら身体を魅せつけるだけだと思っていたらそうではなかった。こちらで言うところのいわゆるGOGOBOYのようなパフォーマーだと思っていたが、それとは違った。
踊りや衣装に物語性をもたせたり、曲に物語性を任せて踊りに専念する人がいたり、マジックをしたり、小道具を使ったり、サーカス顔負けのエアリアルティシューを披露したり。劇場という名前に負けない芸術性だった。

流れとしては衣装を着た踊り子さんが登場して、二部か三部構成のパフォーマンスをして(そこで完全に脱ぐかはそれぞれ次第)、それが終わったあと一度舞台袖に捌けて、Tシャツ一枚で再登場し、縦長に一度折ったチップを貰う。それを二三人したあと、電気がついてチェキ会が開かれるといった具合だ。そのチップをマイクのようにして踊る表情はもちろん笑顔だが、その下で何を感じているのかと想像すると、心臓を子猫にザラリと舐められたような気持ちがした。邪推邪推。

自分が気に入った踊り子さんが一人いて、白雪さんという方だ。年齢は知らないが、おそらく若い方で、肉付きのいい豊満な身体と純白という言葉がよく似合う肌とそこに映えるタトゥーが扇情的だった。自分は性別関係なく肉付きがいい人を性的だと感じるんだなぁ~という発見だった。調べるとデビューしてまだ一年半ほどで少しの緊張がみえる、それでいてベテランの方と比べても遜色ないパフォーマンスがとても良かった。

彼女のパフォーマンスが終わったあとに次のパフォーマンスをみていたら黒のワンピースを着た女性が目の前を過ぎ去って、白雪さんだった。さっきまで一糸まとわぬ姿を見ていたから服を着ているところを見ると逆にドギマギしてしまう。
白雪さんの次にパフォーマンスをしている人はおそらくベテランの方で、誘ってくれた彼は彼女の追っかけをしているそうだ。
確かに堂々としていてアクロバティックなポーズをしていてもブレることはない。ふと白雪さんの方を見ると彼女の舞台を見る視線は真剣で、ああきっと憧れて尊敬している人なんだろうなと思った。
彼女がこの先ずっとストリップの踊り子を続けるのか、どうしてこの道に入ったのか、大勢の前で恥じらいなく露出する彼女がいつか誰かの前で恥じらいながら服を脱ぐ時が来るのか、どういう思いでパフォーマンスをしているのかなど色々考えていたけれど、安全圏の部外者からの詮索はどうしたって鬱陶しくて、彼女からすれば反吐が出るものであろうからどうかこれが届かないようにと思いながら書いている。ただ明るい道であってほしいなとは願う。

その後にパフォーマンスをした人は白色のウィッグを被って真っ白なドレスと肌を着て、ロボットダンスを披露した。彼女が他の人と違ったのは身体にタトゥーが入っていないことだった。
身体を商品にする方はよくタトゥーをするというイメージがある。こちらの世界で伝説のAV男優のKONG兄貴も右肩にタトゥーが入っている。アレはエロい。やはりタトゥーが入っている方が印象に残って覚えやすい。回転するディスプレイ台の上の真っ白な肌は彼女のプライドだと感じた。

効きすぎた冷房に耐えるのが限界を迎えそうな頃、彼の追っかけの人の第二ステージが終わったから劇場を出た。夏にストリップ劇場に行く人は羽織るものを持っていった方がいい。ストリップ劇場を出たあと、街を歩く女性たちがいきなり服を脱ぎ始めるんじゃないか錯覚した。多分これは行った人皆なる。醤油ラーメンを食べて、彼と別れて、帰宅した。
また行こうかなと思う。



次の日の夜、自分のバイト終わりに彼と合流してうちに泊まりに来た。
今日はねぇ、おっパブにいってきたんだよ! という彼の話を聞いておっぱい談義を繰り広げ、乳首開発論を展開し、前日のストリップ劇場に行く前にさらりと彼にゲイだということをカミングアウトをしていたから、そのことについて色々質問をされた。中高で可愛いと思っていた人をクイズ形式で当てさせたり、ゲイのセックスについて聞かれたり、ゲイバーに行きたいがどこに行けばいいのかを聞かれたり。

そうして夜が更けていくうちに彼にどうしてそんなにエロが好きなのか、ということを聞いていくうちに彼の身の上話になった。
軽率に聞いてしまったことを後悔した。
彼の口からぽつりぽつりと漏れるその話はフィクションの世界の話だと思っていた。サマーウォーズの中でしか聞いたことがない状況だった。
彼は自分が父親だと思っていた人と母親は結婚していないのだ、父親には別の家族がいると語った。昔から父親が自分にそっけない、冷たいと感じてきたらしく、その事実を母親から聞かされたのだと言った。彼は妾の子だった。
古くから妾となる人のほとんどがそうであるように自分の母親はとてもきれいな美しい人だと彼は言って、ずっとずっと幼い頃からその母親に欲情してきたと告白した。そして、母親がお水だということも。未だに母親のことが全くわからないとも。
その相手に包丁を投げつけられることはよくあるし、ご飯はもっぱらカップ麺。そうした生活から自分は本に逃げてきたと語った。自分が作った味噌汁を彼が飲んだときに言ったこんなに美味しいもの食べたの久しぶりだなぁという言葉に絶句してしまった。
俺の母親の母親、まぁおばあちゃんから母親も酷いことされてきたらしいからさ、まぁ今思うとさ、母親も不憫だと思うんだよねと言う彼は優しすぎると思う。

彼はそうした過去があるからか、自分の愛情の形はまるっきり性欲と同じで愛が何かが全くわからないと言った。だから金を対価とする資本主義のエロが性に合うのだと言った。
中高で恋愛をすることはなく、性欲をこじらせて、家庭の軋轢に耐えて、一年の浪人生活を経て、今こうして大学生活を送っているそうだ。自分がそこまで歪まなかったのは中高で尊敬できる同級生たちに出会えたからと言っていたが、彼だからだと思う。そうなる必要はなかったのに。親が学費を出すことは厭わなかったことはひたすらにありがたいことだと言っていたが、それで補えないほどの傷を負っているに違いなかった。
性欲は伴っていないけど、僕が彼に抱いている感情は友情であり、愛情だということを伝えた。そういう愛情もあるのだと。
泣いてしまいそうになったが、彼の苦しみを少し齧った程度の自分が泣いてしまってはよろしくない。
抱きしめてあげたいと思ったが、インスタントな優しさは彼にとって毒になるような気がしたからやめた。
代わりにこの人が書く文章は全部全部混じり気なく愛だと思うからと言って、本棚から一冊贈った。その作家の本を何冊か読んで、愛というものを落とし込んでほしいなと願って。

朝になって、10時くらいから活動し始め、昼ごはんは麻婆豆腐を作った。美味しいねと言ってくれるのがどうしても悲しくて、寂しかったけれど表に出してはいけない気がして、当たり前やろ、俺が作っとんで?と言った。

浅草のストリップ行ってくるわ~という彼を見送り、一人になった部屋でチープな願いだけれど、この世のすべての人が幸せであってほしいと本気で思った。

また書きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?