歌ってみたでのサンプリングレート設定の決め方4選

 note始めたんですよ。

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 せっかく始めたので、最初はちょっと今気になっていることを。
 私、普段は歌ってみたのミックスなんかもしているんですが、ちょっと気になることがあるんですよね。

 それは、送られてくるファイルがほとんど44.1kHz/16bitだということ。
 誤解しないで欲しいんですが、別に悪いことじゃないんです。サンプリングレート、ビットデプスの設定はレコーディング、あるいはそれより前に決定されるもので、本来は録音する人、つまりこの場合、歌い手さん本人が好きに決めるべきことです。ミックスするだけの人間がどうこう言うような問題じゃないんです。
 ですが、もし特に何も考えずに設定している、あるいはそもそもデフォルト設定のままだというのなら、これから書くいくつかの判断材料を気にしてみてください。

サンプリングレート変換は鬼門

 その前に、まず前提知識として知っておいて欲しいのは、サンプリングレートの変換はとてもデリケートな作業だということです。
 こちらをご覧ください。カナダのマスタリングスタジオさんが公開しているデータです。
 96kHzから44.1kHzへの変換結果を表したものです。iZotopeはさすがです。Cubaseは最近まで酷いものだったんですね。さらに無茶苦茶なものまであります。
 注意しなければいけないのは、これは有志が持ち寄ったデータをそのまま掲載しているということです。最新のデータが存在しないものもあれば、ミスや悪意があるものも含まれているかもしれません。
 しかし、ツールによって大きな差があることはお分りいただけたかと思います。
 サンプリングレート変換は最小回数に留めるべきですので、先を見越した設定が必要だということなのです。
 ビットデプスの変換はさらにややこしいんですが、詳しくはまたの機会に。最後の方におまけ程度で書いておきます。

サンプリングレート変換する時・しない時

 とは言ってもサンプリングレートの変換を避けては通れない時はあります。例えば……
●録音のサンプリングレートにカラオケ音源を合わせる
●エンコード時のサンプリングレートに納品データを合わせる
 歌ってみただとこのくらいでしょうか。
 特にボーカルファイルを変換するのは避けたいものです。歌ってみたの主役はボーカルなのですから。

決め方その①「リスナーが聴く形式に合わせる」

 最後の形式に合わせるのですから、極限までサンプリングレートの変換回数を減らせるはずです(ミックスやエンコードを行う人と連携が取れていれば)。
 YouTubeは48kHzです。投稿の仕方にもよりますが、音質重視でエンコードされた場合、最終的に48kHzしか存在しないopusという形式になります。
 ニコニコ動画は48kHz又は44.1kHzです。48kHzで投稿されれば48kHzに、44.1kHzで投稿されれば44.1kHzになります。

決め方その②「ミックス師さんに聞く」

 これをやっておけばトラブルは無いはずです。依頼前に読んでね!的な文書の中で、サンプリングレートやビットデプスを指定しているミックス師さんもいます
 実際、レコーディング現場のエンジニアさんの中には“96kHzの音が好きだから”といった理由でセッションのサンプリングレートを決定する人が割といます。音質の良し悪しではなく、サンプリングレートの音の方向性(あるいはそのスタジオで稼働しているクロックという機材の設定による音の方向性)で決めているわけです。

決め方その③「カラオケ音源に合わせる」

 これも一理ある考え方。例えばボカロPさんが配布している音源のサンプリングレートに合わせると、確実に変換回数を減らせます。
 昔はみんなピアプロ、みんなMP3でしたが、近年はWAV等の無圧縮、中には32bit floatで配布してくれている方もいらっしゃいます(ありがとうございます!)。主役はボーカルとはいえ、カラオケ音源もできれば劣化させたくないですよね。

決め方その④「もっといい音で録りたい!」

 例えばプロのレコーディング現場では、ハイレゾ配信(96kHz/24bit等のハイレート)やMVのパッケージ化(DVDやBDはCDよりもハイレートの場合が多い)の予定が無いにも関わらず、96kHzや88.2kHzでセッションが回っていることがよくあります。CDでは最終的には44.1kHzにダウンコンバートされることになりますが、レコーディング・ミックスダウンを行い、マスタリングスタジオに持ち込むまでだけでも、ハイレートによる恩恵は大きいのです。
 宅録でハイレートの恩恵がどこまであるかは議論の余地があります。ノイズが綺麗に録れるだけ、等の主張もありますが、個人的には無意味では無いと思っています。まずは録ってみて、聴き比べてみましょう。

おまけ&最後に

 レコーディング現場のエンジニアがこんなことまで考えているかというと、大抵あんまり考えていません。
 これまでの経験によって最適解を導き出している方もいますが、そうでない方もいます。クライアントの都合、複数のスタジオ間でやりとりする際の都合、社内規定、慣例 etc...
 サンプリングレートの設定一つ変えても、目を見張るような変化は無いでしょう。しかし、趣味で、個人でやっていることだからこそ自由に出来る箇所でもあるのです。

 ちなみにビットデプスは、サンプリングレート以上に変換したくないところです。特に下げるのは絶対に止めてください基本的に24bit、理解出来ている人は32bit floatでも構いません。32bit integerやそれ以上は、非対応のツールも多いので各所に要相談でしょう。
 ここはiPhoneのGarageBandで録音している人でも設定できるところですね。


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