新月と観覧車と赤いピンキーリング1


この作品は実話を元に作られております。不妊治療についての描写があります。不快に感じられる方はご遠慮ください。

2023年初夏、我が息子杏寿郎(きょうじゅろう 仮名)へ愛を贈ります。私たちの元に産まれてくれてありがとう。

この話はビックリするような奇跡の物語だ。
嘘のような本当の話だ。ここまで来るまでの実話を元に作った。

私知里(ちさと)は40歳で初産。35歳から立て続けに流産を3度繰り返していた。その後諦められずに2年前から有名な病院で不妊治療を受けていたのだ。

産声からして杏寿郎は元気そのものだ。
良かった…。

○優しい彼
私の周りはみんな優しい。家族も仲間たちも。そして今回の話の中心になる優しい人がいた。

私は大人気漫画「鬼○の刃」が大好きで、中でも映画化された「無○列車」の主役、煉○杏寿郎さんが好きすぎて、ズルズル沼に入り込んで行った。

不妊治療を本気で頑張り、絶対にどうしても成功させたいという思いの引き金になったのは彼の存在である。もちろん家族達の存在もあるが。

2021年の2月、「鬼○の刃」の知識0で映画館に乗り込んだ私。大ヒットしていた「無○列車」を見るために。
まずは登場人物から映画を見ながら勉強し、途中で物語のどんでん返しになる鬼が出てくるが、展開が早いなあと言う印象だった。その頃謎の眠り病にかかっていたので、一瞬眠ってしまい、気がついたらどんでん返しになる鬼が登場していたのだ。

最後は煉○さんが残念な事になってしまい、エンディングテーマとエンドロールで切なさが掻き立てられて、心に何かが住み着いた。

2度目は2021年の秋に地上放送で主人と「無○列車」を見て、一瞬たりとも目を離さず夢中になった。
「鬼○の刃」の再放送もあり、シリアスな反面ギャグ漫画風で笑えるシーンも多く、虜になってしまった。

主人の一言「お前煉○に似てるなあ!」
と。
顔が似てるらしい。

それが未来を変える引き金になったのだ。

まさか、あの煉○さんに私が似てるなんて。
300億か400億の男と呼ばれた大モテの彼やで?

彼のファン怒れへんか?もしくは私、「何言ってるの?似てへんわ!」と周りに凄くバカにされるんじゃないかと思った。

ただその主人の一言が、煉○さんそのものの息子が絶対欲しい、叶えてやる!という強い思いを引き寄せたのだ。

私は動画サイトで煉○さんが踊っているのを見たり、原作を読んだりで彼にハートを掴まれてしまい、もう彼無しの人生は考えられなくなっていった。

彼と家族になりたい。

ただもう私は主人という素晴らしいパートナーがいるし、今更弟や兄が出来る事は無いし、幸い空いていたポジションが子どもだったのだ。

2013年に結婚し、子どもは1人もいないのだ。

私は不妊治療を結婚直後に半年と、2017年から2022年に至るまで3度転院を繰り返しながら行っていた。

煉○さんと出会うまえ、私は子どもが出来にくいのをコンプレックスだと思い、不妊治療を自分が今の嫁ぎ先に居るために、自分の存在意義を作り、生きていくためだけにしていた。悲壮だった。

加えて私は実家の母とも折り合いがあまり良くなくて、度々嫌味を言われていた。
幼少期から、占い師になる前のOL時代は色んな人からガンガン怒られて来た。私にも責任はあるだろうけどね。

だから恐ろしい幼児虐待のニュースも他人事じゃないし、子どもにも同じ事を繰り返す怖さがあった。その辺に不妊の原因があるのかもと後にカウンセラーに言われた。

しかしながら、煉○さんのような息子が欲しいと決めたら、他の逃げ腰?な理由は全て消えていき、ワクワク楽しみになってきたのだ。

経済的な理由から不妊治療は2022年いっぱいでお終いと主人と約束した。

2021年秋から体外受精つまり、私の卵子と主人の精子を外に取り出し、受精し、私の体内に戻す高度の治療に踏み切った。

人工授精つまり先生に私の体内に主人の精子を入れてもらう簡単な方法は結果が出なかったのだ。

2度目の「無○列車」を見てすぐに初めての体外受精をしたが厳しい結果に。

そして先生にも唸られ、原因究明もされた。

きっと正常な遺伝子を持つ受精卵が無いことは無いが、少ないと分かったのだ。

2022年になり、2度目の採卵をし、1つだけ胚移植可能なつまり私の体内に戻せる受精卵があった。2度目の体外受精をしたがそれも厳しい結果になった。
時は6月になっていた。

胚移植の夜の夢に煉○さんが出て来て、
「今回はそちらに行けません。」
と言われたのだ。彼は青空をバックにして立っていた。
そして結果発表の前夜にも夢に彼が出て来たのだ。

一緒にバーに居て、キラキラと星空のようなデザインのお店だった。
彼と隣同士に座っていて、彼は私の肩をしっかり抱いてくれた。

ただ嬉しい夢の裏腹に、先程も書いたがこの時は厳しい結果に終わったのだ。

多分もうあかんわ。私たちに子どもが出来ることはない。
煉○さんのような息子なんて到底叶わないわ。

諦めない私も諦めモードになっていったのだ。
主人なんてとっくに諦めていた。

最後に今年からの新制度保険適応で6回体外受精をやらないかと病院から提案があった。

保険適応無しで体外受精を続けて遺伝子の検査を出すと凄い金額がかかるので、それをやめて出来た受精卵をどんどん私の体内に移植しましょうと言われたのだ。つまり安上がりの方法だ。

本当にそれを最後にする事に私は決めた。

ただ煉○さんそのものの息子とデートしたり楽しく過ごしている妄想はとどまることは知らなかった。

ちょっと色っぽくて目力があり、ふいに見せた笑顔にドキリとさせられたり、そんな彼が私の隣を歩いてくれていた。それも私が子どもの頃から印象に残っている秘密の場所にも一緒に行ったり観覧車に乗ったり。

厳しい現実そっちのけで妄想にどっぷりハマり、時にはイケナイ妄想をしてしまったり…。本当に彼が生まれて育ってきた時、愛しい、可愛い、セクシーなあまり何かしてしまわないかな?大丈夫かなと思ったりしたのだ。

○不思議な波
2022年夏に、かつて良く行った思い出の場所「万○記念公園」にて「鬼○の刃」のイベントがあったのだ。

大きな観覧車があり、そこでのイベントだ。キャラクターのゴンドラに乗るのだ。
イベント期間は7月から9月末までだったかな?

一度7月17日に主人と行って、クイズありの、主人公たちの喋りありの、素敵な展望で良かったのだが目当ての煉○さんのゴンドラは時間が合わず予約を諦めたのだ。
その時は煉○さんの仲間である不死○実○さんのゴンドラ。この人もなんかご縁があります。

生年月日占いで確か私、彼だったのよ。
不死○さんはめちゃくちゃ気が強く、最初は見た目も性格も怖くて苦手でしたが、じっくり付き合えばきっと優しく、良さが分かる人。

その日はイベント後、お墓参りと私の実家に帰りました。
2020年に母親とはそれなりの和解をした。3年くらい私の遅い反抗期のせいで一度冷戦状態になっていたのだ。

その前後に長年行ってなかった父方の先祖のお墓に、主人の母方の先祖の墓、改めて氏神様へのお参り、トイレ掃除、体を温めるために温水プールに通う、夏から鍼治療やよもぎ蒸しに通う、通年ウォーキング、ダンスなど出来る事は全部やった。

他の事、仕事や趣味の音楽活動では春頃から進展があり、何か人生が変わる予感がしたのだ。
だけどあんまり期待しない方が良いと思う。
とどこか冷めた自分が居た。


8月に主人が流行りの新型コロナウイルスにかかり、看病していた私も偽陽性になった。まさかだ。
不妊治療も延期になったし、主人が死にかけて、私は生まれて初めて救急車を呼んだり必死だった。

そして夢の中で「10月に不妊治療つまり体外受精をすると良いよ」と声が聞こえたのだ。

ふん、また外れるんやろ?気のせい気のせい

と私は意地悪になっていた。ただ気になっていたのでその通りにする事に。

実際その準備のために2022年9/26に病院に行ったのだ。
その辺りからの話が全て偶然とは思えないストーリーになったのだ。

しかも自宅に飾っていた「無○列車」のカレンダーは、10月はしっかりと煉○さんと煉○家が描かれていた。




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