シークレットラブ
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
レンサイド
「やだ!あはは!からかわないでちょうだい!」
2人でいた時、今かと思って告白したが、彼女はスタスタと行ってしまった。
俺は愕然としてその場に立ち尽くした。
ガバッ!
はあ…夢か。良かった。
新しい朝がやってきた。
だけど凄い汗をかいていた。嫌な夢だった。
俺は20歳の大学2年生。偶然好きになったのが恐らくアラフォーくらいの女の先生だった。名は藤本 知里(ふじもと ちさと)先生。
頑張り屋さんで姉御肌なんだけどどこか不器用で天然な所があり、守ってあげたいのだ。それにとにかく優しい。
だが間違いなく既婚で、最近赤ちゃんが生まれたばかりだそうだ。心理学や占術の先生だ。
自分の気持ちに驚きも良いところだった。寝ても覚めても彼女の事を考えてしまうのだ。
1年生の最初、初めて彼女に会った時からずっと気になっていたのだ。
この気持ちは本人は愚か、親にも相談出来なかった。
唯一大親友のテンだけにこそっと打ち明けて相談した事がある。
テンは誰にも口外しないでいてくれている。
俺も全く出会いがないわけではない。女性を紹介されたり合コンに誘われたり。大学やその他での人間関係は広がっていくばかりだ。
しかしながら少なくとも今はどのご縁にも乗ろうとは思えない。
未来が全く無い、付き合えるはずがない相手を思い続けるより、スッパリ諦めて次を探した方が良い事くらい分かっている。
ただこの恋心は日に日に濃厚になっていくのだ。
知里サイド
困った事になったなぁ…。私は40歳になったばかりで大学で心理学や占術を教えている。
凄い学生に出会ってしまったのだ。
彼は20歳の学生だ。呼び名はレン君としておこう。
もちろん成績はかなりずば抜けている。その上オーラがあり、人目を引くのだ。学校中の人気者で物凄くモテているらしい。
切れ長の瞳にぷっくりした唇、鼻は高い。
顔も小さくスタイルも良いのだ。
彼はよくジャンパーと長いパンツを履いていて、ジャンパーの中にはショートタンクトップを着てへそを出していた。
セクシーな香水をつけてきているし、色気が半端無かった。所作も美しいのだ。
彼のフェロモンにやられてしまったのだ。
私は既婚者で子持ちでありながら凄く不謹慎だろう。片想いだが確かに恋に落ちてしまった。
しかしもう私は大人なので誰にもこの気持ちは誰にも話していない。電話やチャット占いやカウンセラーの先生にももちろん。
自分で乗り越えようと思う。
もちろん旦那さんも子どもの事も大好きで、家族を捨ててしまう気はさらさら無い。
でもいつもレン君が私の中に居て、ポーっとしてしまうのだ。
最近見た夢ー
彼が頑張って誠心誠意を持って告白してくれたにも関わらず、
「やだ!あはは!からかわないでちょうだい!」
って私は笑ってその場を去ってしまったの。
私は昔から変に強がったり素直じゃない所があって正反対の態度を取る所があるのだ。でも夢の中だとしてもこんな事言いたくなかったな。今すぐ抱きしめたい相手なのに私ったらアホすぎるわね。
せめて夢の中だけで良いから彼と2人きりの世界に行き、恋に落ちたかったです。
現実ではこの恋を告白したら末永い若者の未来を奪ってしまうし、困らせるだろうしそもそも相手にされないだろう。
加えて私は既婚者。彼にも彼女が居てもおかしくない、ていうか絶対居るはず。
しかも私、腐っても先生やで?学生に手を出したと噂になればどえらい事になるだろう。
アホな事は絶対の絶対によさないとね。
同じ夢を見た者同士
あの夢を見るようになり、レンと知里はお互いがさらに気になり出し、授業中もよく目が合うようになったりバッタリ会う事も増えていった。
お互いにやめておいた方が良いと感じているがだんだん想いは加速していく。
レンが履修している授業が急に休講になり、知里も出席している心理学と占いの巨匠達の講演会にいける事になったり話をするきっかけも増えていった。
別にどちらかが待っていたわけではないのに帰り道に一緒になって、そのままスクールバスで隣同士に座り、他愛の無い会話をしたり…。
ある日レンはテンに呼ばれ、
「お前気をつけろよ!藤本先生と噂になっているぞ!」
と。
とある学生が、よくレンと知里が一緒にいる事に対して不思議に思い、話に尾鰭がつき始めているのだ。
「テン、ありがとう。気をつけるぞ!」
知里もアホではない。その不穏な空気は察知していた。
レンは実はアイドル活動もしている。知里も先生という事でお互いに顔をさす職業だ。
もし大事になってしまってはお終いだ。
2人の時間
2人は悩むようになっていくが、気持ちは止められなかった。そして何と、これも偶然だが知里の家の近所にレンがたまたま通りかかってバッタリだったのだ。
知里もレンもウォーキングをしたり軽くショッピングをしたり、大きな用事は無かったのだ。
このまま通り過ぎるのはもったいないのでどちらからともなくカラオケに行く事になったのだ。
カラオケボックスに2人切り…。
それもお互いに想い合う男女が…。
広い部屋にも関わらず2人は隣同士ピッタリとくっついて座ったのだ。
流石に良くないかと思い、知里は少しレンから離れたのだ。
するとレンは甘えた感じで知里の横に寄って来たのだ。
レンからは凄い覚悟を感じたのだ。
レンは現役アイドルだけあり、歌もかなり上手い。知里も悪くない。幼い頃から歌手になりたく、今も諦めておらずアマチュアの歌手の顔を持つ。
「2人でコラボしちゃいますかー?」
「良いですねー。」
など言いながら2人でハモったり楽しい時間が過ぎていったのだ。
そしてレンが話を切り出した。
レン「先生、お話があります。」
知里「どうしたのよ?かしこまって。」
レンは知里をしっかり抱きしめた。
知里は驚いたが、どこか落ち着いていた。
お互いに幸せな瞬間だった。
レン「愛しています。誰よりも」
知里の心の声(ダサいはずの私が学校中の人気者に告白されちゃったわ。私も彼が大好きだから嬉しい限り。)
心まで温もりが染み渡っていき、もっともっととお互いを求めたくなるギリギリ直前で知里はレンの気持ちに応えた。
知里はレンの胸をそっと押し返し、
「ごめんなさい。私は既婚者ですし家庭があります。あなたの所には行けません。」
と。
知里もレンと同じ気持ちだった。この時断腸の思いだったのだ。
まるで空腹の時、大好物のフルコース料理を全く手をつけずに店を出るような感覚だった。
彼も常識があるのは知里も良く知っている。
しかしながらまだ彼は若い。
間違った方向に進もうとしている彼を正しく導くのも年上かつ先生の勤めだと知里は考えたのだ。
自分が我慢してでも。
レン「そうですよね。ごめんなさい」
知里は、「いいえ、違うの。私もあなたが好きです、」と今この場でレンをどれだけ抱きしめたかった事か。
知里の正義感の強さと深い愛情がそれをさせなかったのだ。
知里「こちらこそごめんなさい。ありがとう。あなたの気持ちは忘れないわ。」
知里にとってこの一言が精一杯だった。
やがて時は流れ、レンは卒業していった。
律儀にレンは知里に
「お世話になりました。」
と挨拶をし、あっさり立ち去ったのだ。
テン「おい、もう良いのかよ?」
レン「うん。前にも言っただろう。2年前に気持ちは伝えたからな。思うようにはいかなかったがもう良いんだ。」
テン「ほぉ。お前が良いならそれで良いんだがな。」
レン「ただ前を向こう!」
知里は残された気になったが、やっと気持ちが吹っ切れたようだ。レンも仕事で外国に行くらしいし、もう会う事は無いだろうな。
卒業おめでとう。そして社会人、頑張ってね。
エピローグ
時は流れ、知里は60歳。高齢で産んだ息子が20歳を迎えた。
彼は思春期からレンを彷彿させる見てくれで、出来も良かったのだ。
何だかレンと一緒に居るような錯覚に陥るのだ。
レンは40歳か…
どうしてるんだろうな。
あれからは全く会う事も連絡先も知らないまま終わった秘密の両片想いだったな…
我が家の幸せを願います。
ついでにレンの幸せも❤️
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