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たけのこ物語

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

1.転校生

こんにちは。私は知里(ちさと)。今日から小学5年生です。
私は去年引っ越してきてクラスのみんなから大事にされたり友達になってもらえて楽しい日々を送っていました。

でも小学4年生が終わりに近づき、気が付くと1人で居る事も増えてこれまでの友達からも塩対応を受けてしまいました。グループを組む時も難儀してしまいました。私は何かしてしまった心当たりは無いのに…。強いていうなら他の子たちと趣味や趣向があまりに違った事かな?私も趣味や趣向を変えたりいろんな人の価値観を受け入れないといけないかもな。そこが反省です。

でも起こってしまった事は仕方ありません。今後に反省を活かしたいです。もう少しでクラス替え…それに期待したいです。

5年生の教室に移動し、自由席で着席になりました。

「やあ、初めまして。どこに座れば良いんだろうか?」
爽やかに話しかけてきたのは見慣れない男の子?でした。
男の子なのは分かるんですが、非常にあか抜けていてスタイル抜群で女子よりも女子力が高い子でした。

「あ、初めまして。どこでも良いと思いますよ。」

多分彼とは住む世界など何もかもが違う気がするし、男の子とはこの学校に来た時からあまり仲良くはしていなかったからね。必要な事だけ答えて私は適当に着席しようとしました。

すると
「良ければ隣に座っても良いか?」
と彼が満面の笑顔で声をかけてきました。

「は、はい。良いですけど。」

「お名前は?」
「私は知里です。あなたは?」
「俺の名前はレン。よろしく頼む!」
彼はハキハキと答えました。

女の子で仲良くなれそうな子が居たらいいのにな…とその後私の頭の中はそればかりでした。

最初の1日が終わり、私は帰路に着こうとしました。
すると三つ編みの女の子とレンが一緒に帰ろうと声をかけてきてくれました。

三つ編みの女の子は昨年から知っています。隣のクラスの人気者で、カンちゃんとみんなから呼ばれている子でした。この子もあか抜けていて顔も小さくてスタイル抜群です。
アイドル級の2人としけた私、本当に大丈夫かな?

また裏切られても嫌だしな…。声をかけられたら対応するくらいにしておこうかな。

私は妙に冷静な気持ちでした。

それもレンは隣に住んでいるようで、カンちゃんは近くのマンションに住んでいました。
そう言えば春休みにお隣に新しい人が引っ越してきたからうちに挨拶に来ていたなあ。子どもであるレンの姿は無かったけど。

2.新しい日々

数日経って分かった事ですが、レンはアイドルグループに入っている子でした。実はカンちゃんも。

やはり私とは住む世界が違うと感じたのは間違っていませんでした。
そりゃあ感じが良いはずだな。

また私に飽きたら他の明るく元気な友達を作るのだろうな。

私は無理に友達を作る事はせずに休憩時間は図書館や音楽室に通おうと決めました。

とある昼休憩
図書館について本を選び、着席してさあ読むぞ!という時にレンとカンちゃん、他数名が図書館に飛び込んできて私を連行しました。本はカンちゃんが片づけてくれました。

「ちょっとちょっと…何するの?」
私は戸惑ってしまいました。さっきの本、読みたかったのに…。

「みんなでドッチボールをしよう」

レンとカンちゃんはこの数日でクラスの中心になり、クラスの子プラス他クラスの子も巻き込んで大ドッチボール大会を休憩時間に企てたようでした。

私はグループで遊ぶのは苦手でどちらかというと失敗して責められる事が多かったから参加したくなく、数日はトイレに行くふりをして図書館に行ったりもしてました。

それに気づいてか否か、レンやカンちゃんは一切私を責める事無く、諦めずに私を誘ってくれました。

失敗しても全く責められる事は無く、他の子もいい子ばかりで褒めてもらえる事の方が多かったのです。

凄く出来の良い子達ばかりでした。

そのうち私の方が申し訳なく、図書館に逃げ込んでいた事を反省しました。ごめんねと心の中でつぶやき、進んで大ドッチボール大会に参加するようになりました。

毎日心から楽しい…。ありがたい。

3.係決め~タケノコとの出会い

クラスで係を決める日がやってきました。私は生き物が大好きで、生き物係に立候補しました。

そしてなんとレンも手を上げて居ました。

レン、やっぱやめとこうと手を降ろしたりしないだろうか?
と私はマイナス思考になりましたが、彼は手を降ろすこと無く満面の笑顔でこちらを見てくれました。

司会「ではレン君と知里さん、生き物係お願いします。」

春のある日、生き物について何を飼うかを私とレンで話し合い、近所の田んぼで知り合いの了解を取り、おたまじゃくしをつかまえて飼う事にしました。カエルになっても大事に育てようと決めました。

私は自然も生き物も大好き。加えてあか抜けたレンだったが同じでした。

土とか虫とか気持ち悪いとか言ってしまいそうな気がしていたが意外でした。

2人でバケツに田んぼの泥も少しもらい、おたまじゃくしも網で捕まえました。
私が追い込んで彼が手早くすくう、そんな感じでした。

レンの輝く笑顔は一生忘れません。

そして学校の水槽におたまじゃくしと泥をうつし、任務完了した後ゆっくりと2人で学校の周りを回っていました。

学校の周りは竹やぶで、前にはフェンスがありました。
なんとフェンスを越えて学校の敷地に少し顔を出したたけのこがありました。

「うまそうなたけのこだな。掘ってみようか」
「そうだよね。やってみましょう。」
(※良い子はマネしないでください)

ちょうどスコップも持っていたので掘って、2人でタケノコを収穫しました。2人だけの小さな秘密が出来た瞬間でした。

ここまで来て私はレンやここにはいないけれどカンちゃんの事が信用できるようになりました。

「ずっと仲良くしようね。」
私は精一杯彼にそれを伝えました。
「うん!もちろんだ。よろしく頼む!」
2人で握手をしました。

家に帰るとお母さんがタケノコを調理してくれて、しょうゆ味の煮物にしてくれました。

後日レンと遊ぶことになり、なんと彼のご両親は近所で食堂兼カフェを営んでいるようでした。
彼のお母さんがなんとたけのこご飯を炊いたから、食べに来ないかという話でした。

自分たちが掘ったタケノコが二度も食べられるなんて…。
彼も一度は家族でてんぷらにして食べたようでした。
幸せいっぱいの、だしのきいたたけのこご飯、何だか嬉しかったです。

カンちゃんとももちろん仲良くして、レンも加えて3人で平和に過ごしていました。ここまで仲良くなれるとは夢にも思いませんでした。

神様からのプレゼントのようでした。

そして私は寝る前、何となく窓を開けて星を見ようとしたら隣の家でレンも窓から顔を出していました。
眠れなくて空を見ていたようでした。隔たりはあっても寝室が隣だなんて…。
思わず話をしました。さすがに後日お互いの親に、凄く声が響いていると注意され、電話やメッセージでやり取りするようになりました。

レンの家のお店は秘密基地でした。
忙しくない時間にご飯やお茶などをサービスしてくれました。
軽い風邪を引いたりへこんで学校を休んだ仲間がこの店に登校したりで、学校からも近いから放課後にみんなで集まったりもしました。

なんとなんと。今の学校はレンと同じアイドルグループのメンバーの半数はいるようでした。
レンも実は前の学校で浮いていて大人しかったようでした。
嫉妬をされたりいじめに遭いそうな時もあったようでした。

今はレンも水を得たように元気になりました。

カンちゃんもかつていじめに遭ったり浮いたこともあり、引っ越してきたようでした。
レンもカンちゃんも喜んでいて、2人のお母さんが私の家にプレゼントを持って来てくれたこともありました。
2人のお誕生日会にももちろん呼んでもらえました。

仲良しの印でコミカルな仏像顔の笑いマークを彫刻して磨いてワックスをぬって私はレンとカンちゃんにあげました。

とにかく夢のような毎日でした。

4.出会いから1年~その後

「えっ?引っ越しちゃうの?」
「そうなんだ。ごめんな。」
レンと出会って1年足らずなのにまた彼は引っ越すようだった。

「それでも近所だ。学校は違うけれどまたあの店で会おう!俺の新しい家にも来てくれ。」

そうだよね…近くだから行けるよね。

やがてレンが引っ越していき、隣には誰も居なくなってしまって心に穴が開いてしまったのだ。

しかしながら月1、カンちゃんや他の仲間と一緒にレンの店に顔を出し、積もる話をしたりみんなでゲームをしたりの時間はしばらく続きました。

レンとも文通をしていました。
同じ高校に行けたら良いねと話をしていて、私は頑張って勉強をして、その学校に晴れて合格しました。
しかしながら彼はさらに上の違う学校に合格したようでした。

その時、何だか切ないのと怒りを感じました。何で?同じ高校に行こうって言ってたよね?

でも、でも、もう仕方がありませんでした。それなりに楽しい高校生活だったから良しです。

そして大学生、新社会人になるにつれてカンちゃんともレンとも年賀状だけの付き合いになり、やがて疎遠になっていきました。
メッセージも既読にならなかったりと。
そろそろ卒業なのかもしれません。

気が付くと25歳。彼らとはもう全く付き合いがありません。
そして三十路に近づいてきて、お友達から次々と届く結婚報告
私は相手さえも居ませんでした。

カンちゃんももしかしたら結婚してるかな?
未だ謎なんだけど、レンとカンちゃん、どういう関係だったのかな?と古い思い出に思いをはせてみたり。
もしかしてお付き合いしていた?そして今頃結婚していたりして…。

お友達は職場の仲間や上司や先輩とだったり学生からのお付き合いだったり習い事だったりの出会いが圧倒的に多かったが、アプリでの出会いも少なくなかったです。

私は会社員で、今は会社の近くで1人暮らしをしています。
周りは女子ばかりで会社と家の往復でした。

一度音楽やスポーツの習い事にも参加したけれどはるかに年上や年下の人しかおらず、ただ趣味としてたまに顔を出しています。

アプリ、慎重な性格な私は食わず嫌いですが一度試してみようか。

お友達に聞いていくつか登録してみました。

彼氏が居ないのは仕方ないけれど、このままいくと私はこのまま一生独身でいる事間違いないだろうと思いました。

何か動かないと。

いろんな人が登録しているなあ。

あれ?何だか懐かしい写真

タケノコの写真とイケメンの横顔、そして木彫りの笑顔
これは…

そして名前もRen
これは…ほぼ間違いないだろう。

それも意味深
下に「会いたい人を探しています」
と書いてました。

私は迷わずイイネボタンを押し、連絡していました。

すると秒で返信が来ました。

「これは久しぶり!びっくりだが嬉しい限りだ!」
となり、再会の日取りも波に乗って決まりました。

間違いなく待ち合わせ場所に現れたのはあのレンでした。

流石にもうアイドルグループには彼は所属していなかったけれど今は俳優や歌手としてしっかりと有名になり、生活しているようでした。

「俺の勘は良く当たるんだ。このアプリだと君に再会できる気がしていたぞ。
出会った時からずっと君が大好きだったんだ。どうかお付き合いしてほしい。」

突然やってきた再会でした。私は驚き、目が回るほどでした。
しかしながらずっとレンの事を気になっていたのは確かだったから答えはイエス。

そしてやがて結婚
そこではカンちゃんを含め、懐かしい友人がたくさん結婚式に来てくれました。
そしてメインディッシュには思い出のタケノコを使った料理が出てきました。

5.エピローグ

2人きりの夜
同じベッドで隣り合わせで眠る夜

あの時のような、空間の隔たりを気にしなくて良く、
今は気にせず好きなだけそばにいる事、触れ合う事が出来ます…。

少し照れるけれど、あの時出会ってから離れ、再会して今また側にいて、そしてこの先もずっと一緒であることを誓い合い、2人の胸にはこみ上げてくるものがありました…。







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