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自然にもどりゆく人たち

命日に一日遅れたが花を供えに墓所を訪れた。
といっても「墓」はない。
風光明媚な土地に遺骨が眠っているだけ。
骨は何年くらいで土に返るのだろう。

この土地を見つけるまで、遺骨を自宅に保存すること7年。
独り者の私がこの世を去れば、墓を守る者がいない。
縁者がいなくなっても静かに眠り続けられる場所を探し続けた。

会社組織が運営主体の墓所は、その会社が倒産したら更地にされて、
住宅地として売り出されたりして問題となった時期でもあった。
寺の永代供養も、お墓のマンションみたいで味気ない。

樹木葬や散骨、ジュエリーへの作り替えなど様々な方法を調べた。
どれも一長一短で決められず、公営墓地の購入もやむなしと
諦めかけていたときに出会った場所。

条件は一つ。国立公園内なので現状を何一つ変えることはできない。
従って、墓石はおろか樹木も植えられない。
区画の目印として10cmくらいの細い塩ビパイプが立つだけ。

遺骨は骨壺から出して直接土に埋葬する。
費用は埋葬のときの一度切り。
寺は一切手入れをしない。(といいながら、いつもきれいです^^)

もちろん依頼すれば、法要を執り行ってもくれる。
私も主な年忌にはお願いしている。
阿蘇五岳が眼前に広がる静かな墓所だ。

私が生きている限りは、年に数度生花を供えに訪れる。
土に返らないものは持ち込まない。
ちょっとした登山なのだけれど、この景色を見ると元気になる。

今でも十分に見晴らしがいいのだけれど、
竹藪や大きくなり過ぎた木を3年がかりですべて伐採するとか。
許可が下りて(国立公園なので)今日から始めたようだ。

ますます眺望が開けて、登山も楽になりそうだ。
なにより両親が安心して静かに自然に戻っていくことがうれしい。


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