大事なことは小さな声でゆっくりと(011/100)
社会人になった春。入社した会社で初期配属されたのは2人チームだった。10個上の先輩と私。会社の中でも、チーム構成も仕事内容も少しだけ"ふつう"からズレた環境だった。そのせいか別チームの人に「大丈夫?」と聞かれることも多かった気がする。
ただ、同じチームの先輩は面倒見が良くなさそうにみせかけて、とてもよく見てくれた先輩だった。当時はあんまり気づかなかったけど。
私は先輩から誕生日だったかなんだだったかで、プレゼントをもらったことがあった。茶封筒を開けると出てきたのはノートが3冊。だれもが使ったことがあるだろう青のCampusノート。ただ表紙はちょっとだけ違っていた。
「 何 故 な ぜ 5 回 」
どーーーーーん!!!!
と縦に書かれていた。もちろん3冊とも。
当時の私の課題点として、思考の深さが足りず、よく「なんで」「で、それはなんで」「ふーん、それで。なんで」と、とにかく聞かれまくっていた。
その結果、もらった誕生日プレゼント(だったはず)は何故なぜ5回Campusノート。後にも先にもこれをもらった人は世界に私だけだろう。
そのほかにも当時、先輩にもうひとつ言われていたことがある。
「話が長い」
そうなのだ。私は、ついつい、サービス精神旺盛にあれもこれも話してしまいたくなる病気にかかっている。この病は根深くて、いまも療養中だ。
そして、この病。文章にも感染するのだ。ついつい、伝えたいゆえにてんこ盛りにしてしまい、伝わらないという本末転倒なことをやってしまう。
先日まで通ったライティングゼミでも何度も指摘された、改めて理解した弱点である。処方薬は文字量に対して入れられるエピソードの数を理解すること。文字が足りないと思ったら「だるま落とし」でエピソードを削ること。
そして大事なことは大きな声で繰り返し叫ぶのではなく、小さな声でゆっくりと言うくらいでいいのだという。そう言われたら、納得する。仕事をしている時に耳に入る選挙カーの演説は邪魔に感じてしまう。でも隣の席のコソコソ話はつい耳をそば立ててしまうもの。なんだか大事そうだから。聞かないと損するかもと思う。
そういえば、チームの先輩は大事なことをふとしたときに小さい声でぽろっといっていたな。
今日のさとゆみライティングゼミの卒業生インタビューとして、さとゆみさんとお話ししている中で思い出したことだった。
先輩。何故なぜ5回は無事に卒業できたと思います。でも、残念ながらサービス精神旺盛さによるエピソード足りないんじゃないか病はまだ克服できずの状態です。
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