とある劇を観るまでの話

※内容については全く触れてません。

友人からある作品を勧められて興味を持った。

なんなら友人の説明だけで号泣していた。

彼女が話し上手ということはもちろんあるが、それ以上に彼女の話の背景から作品の情熱が伝わってくるようで久しぶりに観劇へ足を運びたいと思わされた。
私が観劇をするとしたら、友人が出ているだとか制作や作家として関わっているだとかで、能動的にチケットを探したことはほとんどない。そんな私でもこの演目を観たくてチケットを探すことを決意した。

彼女から話を聞いた時点で公式のチケットは完売だったが、観劇に詳しい彼女から様々な手段があるとレクチャーを受けてチケットをしばらく探していた。

チケットを譲るサイトを通す案件がなんとなく私の希望条件と合わなかったりしてうまくいかなかったので、代わりに1番慣れているTwitterでチケットを探した。
しかしながらbioもツイートも大概狂っているいつものアカウントでリプライしたら無言でブロックされた。当然である。危険そうな人物から身を守るためにはもっともな手段だ。普段の自分のTwitterでの振る舞いについては反省はしてないしこれからもしない。

とはいえ取引へのやりとりすらたどり着けないのは問題があるので、取引用のアカウントを作って、丁寧に数名と連絡を取っていたが、譲ってくれると決まった相手が急に口調を厳しくしてきて値段を釣り上げてきたり(ホントクソ)、別の譲る人が決まっただ(明らかに同じ席を再投稿してたのもクソ)のなんだので、行こうとしていた前日の夜にはだいぶ諦めていた。

しかし、当日朝起きて二度寝三度寝を繰り返した開演1時間半ほど前に、なんとなく検索履歴から同じワードで探したら、3分前の投稿でぴったりと条件に合う人が見つかった。そうだこれは運命に違いない。
そう確信して連絡をしたが返信はなかなか来なかった。

諦めかけていたころ、『あなたに譲ります』と吉報を受けて飛び起きた。n度目の睡眠に備えてまだパジャマのままだった私にもかかわらず6分で家を出た。奇跡にも近い。
駅まで走ってる道中色々と忘れ物をしていることに気付いたがもう引き返せない。
私は前を向いて進むしかない。

そして電車も気を利かせてくれたのか予定時刻よりも4分早く着いた。褒めてつかわそう。

駅から会場までの足取りはあまり記憶がない。
気付いたら紅茶花伝のペットボトルを握りしめて汗だくで入口に立っていた。
取引の相手はxxのコートを着て、xxの服で、xxのxxで...と事前情報をいくつか共有してくれていたので必死に探した。
指定場所に携帯を真剣に見ている上に事前情報と合致した人を見つけたので、できる限り爽やかに、元気に、
『おみいです!xxさんですか?』と声をかけた。
『えっ。あー。ち、違います!』と答えてくれたものの足早に逃げられた。


完全に失敗した。


と絶望。
やっぱりネットでの取引なんてこんなもんか...。
と思いつつも望みをかけて、私のいる位置を書き添えてもう一度連絡をしてみたところ、数秒ののち向かいますねとの快い返事。

はやる気持ちと詐欺ではないかという不安が入り混じりながら取引相手を待つ。
しばらくののち『おみいさんですか?』と快活な声。
そこにいたのは逃げられた人物と特徴は同じものの全くの別人が立っていたのだ(当たり前だ)
この場を借りて、初めに声をかけてしまった方にはお詫びを申し上げよう。

“私こうやって取引をするのは初めてだし汗だくだしちょっと遅刻しちゃったし生身でお金渡しちゃったしと今思えば挙動不審だし”
と取引相手として信用に欠けていたかのように思えたが、相手はそんなことを気にするそぶりもせず迅速かつ丁寧に取引することができた。
ありがとうTwitter!ありがとう取引相手の人!

チケットもぎりのところを通るまでは不安で仕方がなかったが、問題なく通過し、おどおどしながらも自分の席を探しきれず係りの人に案内していただき、着席して一息つくことができた。

ここへ着席するまで、少しの苦労はあったがあとは楽しむだけ。

勧めてくれた友人にいまから観ることを連絡し、目薬を差し、ハンカチとティッシュを取り出しやすいところに用意して。

いざ開幕。

おみい

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