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陰キャならきらら漫画を読め!!!!

はじめに

 アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」、めちゃくちゃ面白いですよね。人気もすごいことになってるし。放送後には毎回Twitterのトレンドに入り、主人公のぼっちちゃんこと後藤ひとりを初めとするキャラクター達のFAがひたすら流れてきます。観てない方はこの先読まずに今すぐ観てください。取りあえず5話まで。できたら8話まで。
 掲載されている雑誌「まんがタイムきららMAX」の1月号は、付録の影響もあり、発売後すぐに芳文社の在庫がなくなるという異例の事態に。

まんがタイムきららMAXを枯らした女、後藤ひとり
(#ぼっちちゃんよくばりセットより)

 前述したとおり、この「ぼっち・ざ・ろっく!」は「まんがタイムきららMAX」という4コマ雑誌に連載されています。いわゆる「きらら(漫画)」です。「きらら」という言葉に馴染みがない人でも、「萌え4コマ」や「日常系」という言葉は聞いたことがあるでしょう。
 私はこの「きらら」をかなり好んで読んでいます。どこが好きかと言われれば枚挙にいとまがないですが、1番は4コマというフォーマット(系列誌の1つである「まんがタイムきららフォワード」はストーリー漫画なのでその限りではない)の中でできる表現の限りを尽くし、多種多様なテーマを扱っている点でしょうか。系列誌が4種(本誌、MAX、キャラット、フォワード。かつてはもう少しあった)もあることからこの多様性という点は明らかです。
 しかし一般には未だに、可愛い子達が何か可愛いことをしている、というイメージが強いのではないか、とも思います。勿論それも間違ってはいないですが、実際そのようなバイアスできらら漫画を敬遠してる人も多いでしょう。これは非常にもったいない。きららってめちゃくちゃ奥深くて面白いんですよ。
 「ぼっち・ざ・ろっく!」はパブリックなきらららイメージを払拭しうる作品であり、これを機会に他のきらら漫画に興味を持つ人が出ることを期待しています。今回はそんな人に向けて、なるべく「ぼっち・ざ・ろっく!」をフックとした(こじつけ有り)きらら漫画の紹介をしたいな~と思います。
 まあ色々言ってますが、要は好きな漫画について書いているだけです。私も全然きらら歴は浅いので知っている作品に限りがあり、またこういう紹介記事を書くのは初めてなので文章が拙い部分もあると思いますが、温かい目で読んでくれると幸いです。

本題

・きらりブックス迷走中!

 まずは、ぼざろの作者である、はまじあき先生の前作を紹介したいと思います。
 閑古鳥が鳴く書店でバイトをすることになったお嬢様、桐生院きらり。そこで出会ったきらり漫画である『ゆるふわ革命』を応援するために奔走する……というギャグ漫画です。きらり漫画とは、まあ実際のきらら漫画のことで、この作品はそこ(特に掲載されていたMAX)をいじるメタネタが多いです。ですから、実際にきららをよく知らない人は、この作品を読めば基本的な部分は知ることができるかもしれません。
 また、後藤ひとりほど人外キャラは出てきませんが、メタネタ以外のギャグも冴えているので、その部分では、ぼざろに流れているギャグの遺伝子を感じることができる作品です。

『ゆるふわ革命』は最終的に作中でアニメ化発表され、
ぼざろではそのアニメを見ている結束バンドメンバーが見られる
(2巻102pより)

 ちなみに、きらきらブックス奔走中!という名前でぼざろアニメにも登場しました。

・それでは、ステキなセッションを。

 バンドつながりということで。表紙めちゃくちゃ良くないですか?
 きらら本誌で絶賛連載中のバンド漫画。駆け出しのベーシスト、是沢芽依が、ある日出会った狐耳の妖精から貰ったアイテムで演奏が上達していく……?というもの。このアイテムはガチャで出てくるのが特徴で、有償だったり(当たり前)有効期限があったりするのですが、使うと思い通りの演奏ができます。

関係ないアイテムも出てくる
(1巻26pより)

 ただお助けアイテムを使って演奏するだけなら単なるチートなんですが、主人公はガチャアイテムに頼りっぱなしになることはなく、自分の演奏の糧にしていきます。バンドとガチャなんて無関係な要素かと思いきや、上手にかみ合わせるのがこの作品のウマいところ。
 カラーページが本当に綺麗なので、是非とも雑誌で読んでいただきたい作品。

・神様とクインテット

 ぼざろの魅力は音楽シーンやストーリーだけではなく、ギャグも冴え渡っており、その大部分が後藤ひとりの奇行にあります。顔が崩壊したり溶けたり。そしてそんな突き抜けたギャグが見られるのが、この「神様とクインテット」です。
 舞台は美大。上京したての主人公が変人たちの集う研究室で日常を繰り広げるカオスなギャグ漫画です。綺麗な表紙からは考えられないようなキャラクターたちの奇行が見られます。

奇行の例。頭を炊飯器にする
(2巻52pより)

 また、特徴的なのがギャグ描写にしても体液が出るのが多く、常にキャラの誰かが鼻血などの血・涎・涙諸々を流しています。時々コマの外にまで滴っていたりします。
 ぶっ飛んだ作品は"頭がおかしい"と形容されることがありますが、この作品は物理的に"頭がおかしい"かつ、ノンストップでこのような展開が続いていくので、読んだ日には元気になれること請け合いです。

・ゆーま!

 後藤ひとりはツチノコになりますね(は?)。ツチノコは日本に生息する未確認生物、いわゆるUMA。そして、きららには他にもUMAが登場する作品があり、それがこちらの「ゆーま!」です。
 この作品は、UMA(表紙のゴリラ。おそらくビッグフット、で人語を解する)と普通の女子高生との交流を描く……ものではなく、このUMAの被害を受けた彼女達が復讐のためにUMA研究部を創り……というギャグ漫画です。ゴリラの他にもツチノコやロボなども出てきます。
 基本的に表紙両端の2人の倫理がないので、犯罪まがいの言動や毒のあるセリフがポンポン飛び出してきます。それだけでもう面白いのですが、対する真ん中の子のツッコミも冴えているので、ギャグとしてかなり笑えるものとなっています。

マッドサイエンティスト、伊吹
(3巻8pより)

 ちなみにこの作品は電子書籍でしか読むことができず、しかしそのおかげか通常の単行本よりも30%くらい安いので、買うハードルは低いかもしれません。

・ハルソラ行進曲

 この作品は工業高校が舞台となっている珍しい作品です。え?工業なんてぼざろと関係ない?いや、作中でヤスリやノコギリを使って後藤ひとりの顔を修復してるじゃないですか。それにマンゴー仮面のアレも手作りなので、物作りという点で共通点がありますね。
 主人公たちは工業高校に通っているので授業も実習が多いですが、定期テストや文化祭など高校生らしい日常も見ることができます。
 絵柄も柔らかくて可愛いですね。  

女の子が作業着着てるの、良い
(1巻9pより)

 出てくるネタも専門的なものは多すぎず少なすぎないので、工業高校出身ならあるあるに頷き、そうでない人は工業知識を得られるかと思います。
 今期はDIYを題材としたアニメも放送しているので、こちらも観てる人にはピッタリの作品かと思います。

・ソラミちゃんの唄

 きららMAX・陰主人公・音楽漫画という共通点がある、「ソラミちゃんの唄」。
 主人公の海野ソラミは引きこもり浪人なのに、現実から逃げるように趣味の宅録ばかりにかまけており、そんな主人公の元に集まる友人たちもまた、彼女たちなりの悩みを抱えています。そんな彼女らの日常をコメディ要素を混ぜつつ、しっとりと描いている作品となっています。
 仕事に逃げていてお互い向き合おうとしない母親とのやり取りもとても心に残ります。2人の関係がぎこちないのは父親が亡くなっているからというのもあるんですが、それでも何とか歩み寄ろうとする心情の描写がかなり、良いです。

このコマでベショベショに泣いた
(2巻88pより)

 海野ソラミは終始、自分のためだけに唄っています。しかし、寄り添ってくれる人や唄を聞いてくれた人が増えることによって自分の世界が広がっていき、だからこそ唄が誰かに届くようになる、という部分が通常の音楽漫画と異なるところで、この作品のテーマかもしれません。

・星屑テレパス

 次世代きらら作品と言われれば、ぼざろと共に必ず名が挙げられるのが、この「星屑テレパス」です。この作品は、ひどく内向的で宇宙への憧れを抱く主人公、小ノ星海果が自称宇宙人の明内ユウと出会い、ロケット同好会を創ってともに宇宙を目指していく、という青春100%の物語です。
 美麗な絵柄と巧みなストーリー、キャラの繊細な心情描写、どこをとっても漫画として上手で、かつ4コマという枠を利用した演出の妙もたいへん素晴らしいものとなっております。 また、この作品最大の発明とも言われる「おでこぱしー」(表紙でやってるやつ)(おでこをくっつかせることで発動するテレパシー)は多くのきらら読者に衝撃を与えました。
 コマの装飾やキャラのデフォルメ、思わず声に出したくなる宇宙語など、細かい部分も楽しめます

度々有るコマの装飾が可愛い
(1巻17pより)

 アニメ化も決定しており、確実にきららでトップレベルの作品となっているので、是非読んでいただきたいと思います(今ならまだ古参ぶれるぞ!)。

・ななどなどなど

 陰キャと一口に言ってもその実態は様々で、「ななどなどなど」の主人公である玉村小町はお嬢様な故に庶民を見下し、プライドの高さから知らない事物を偏見で見まくる、後藤ひとりとはまた違った陰キャです。

主人公がする顔じゃない
(1巻15pより)

 そんな性格から人付き合いが上手くいくはずもなく、「陰キャ姫」というあだ名が定着する頃には不登校になってしまいます。この作品は、そんな彼女を更生させるために送られてきたヒューマノイドななど(陽キャ)、めちゃくちゃ良い子だけど廃課金ソシャゲーマー吉岡るる(陰キャ)、るるに片思いするストーカー高山萌(陽キャ)と小町をメインキャラに据えたコメディです。
 この凸凹で癖の強い4人の独特な距離感から生じるリアルなやり取りや、それを通して少しずつ頑張っていく小町の姿が非常に良い。また、特徴的なセリフ・フレーズもコメディ漫画として笑いを引き出すものとなっているので、是非読んでいただきたいと思います。

・またぞろ

 学園漫画のテスト回などで留年という言葉はよく聞きますが(ぼざろにもそういう場面はあった)、実際にそうなる例は珍しいでしょう。しかし、この作品のメインキャラは4人中3人(もう1人も留年予備軍)が高校留年をしています。
 しかも主人公である穂波殊は、病気だったわけでもポジティブな理由があるわけでもなく、普通の人にできる当たり前なことができない(起きられない、計画性がない、人付き合いができない等)──「人間がへたくそ」なためだけに留年をしています。殊自身もその駄目さは自覚しているのですが、留年仲間との交流もその性格を直すには至らず、むしろ追い詰められさえもする。

こういう思考のるつぼに陥る描写、
刺さる人には本当に刺さる
(1巻68pより)

 それでも、誰にでも平等に時間は流れます。殊は、このどうにもならない"日常"を生きていくしかない。きららの日常系というパブリックイメージを持ってる人にこそ読んでいただきたい作品です。
 何か暗いことばかり言っててアレですが、この作品は会話のテンポや余白の使い方などが上手く、コメディとしてもしっかり楽しめます。


おわりに

 こういうの難しいですね……正直全然魅力を伝えられていない部分があるので、実際に読むなり他のクオリティが高い紹介記事などを読むなりしてほしいです。
 紹介したものの中には「ニコニコ漫画」内の「きららベース」で読めたり、漫画アプリ「COMIC FUZ」内のメダルで無料で読める作品もあります。きららは他の漫画より値段が高いですが、割と頻繁に電子書籍のセールが行われています(今回紹介した中にも現在セール中の作品有り)。また実は、紹介した作品は長期連載作品を避け、なるべく巻数が少ないものを選んであるので、多少は買うハードルが低いかと思います。この記事を通して少しでも興味がある作品に出会い、書籍の購入や雑誌の購読などを見当していただければ幸いです。
 最後になりますが、ここまで読んでくださりありがとうございました。共に、良いきららライフを送りましょう。

……

…………

 すみません、全然ぼざろとの関連はなくなるかもしれないんですが、他にも読んで欲しい作品はたくさんあるので、ちょっと挙げるだけ挙げさせてください。

・GA 芸術科アートデザインクラス
 美術知識も学べるし4コマ漫画としてもめちゃくちゃ面白い。きららで1番好きな作品。
・まちカドまぞく
 薄氷の上に成り立つ、シャミ子と桃たちの日常。アニメもすごい人気でしたね。
・うらら迷路帖
 少女×占い×伝奇ファンタジー。カラーページで見られる色づかいとかめちゃくちゃ好き。
・ご注文はうさぎですか?
 意外と原作読んでる人は少ないのでは?巻数を重ねるごとの"文脈"の乗り方がすごい。
・きんいろモザイク
 意外と原作読んでる人は少ないのでは?2。結構毒のあるギャグとか挟んでくる。
・はんどすたんど!
 ギャグとしても部活ものとしても傑作。表紙の子の表情が一切変わらない。
・幸福グラフティ
 飯テロ漫画だと思われがち(そうではある)だが、共食というテーマを貫き通している。
・スクール・アーキテクト
 日常とは何かを問う、挑戦的作品。2巻の舌美人の話が好きです。
・ふおんコネクト!
 小ネタが盛りだくさんで情報量の波に溺れる。話の根底には常にキャラたちの人情がある。
・教艦ASTRO
 メインキャラが教師の珍しい作品。だからか質感がちょっとエッチ。続きの巻は???
・となりの魔法少女
 魔法とは願い。魔法とは可能性。魔法というテーマに真摯に向き合った、優しい少女たちの物語。
・旅する海とアトリエ
 読むと海外に行きたくなるし、自分を見つめ直したくなる。背景全部手書きって嘘だろ。
・がんくつ荘の不夜城さん
 きらりブックスのようにきららのメタネタが詰まっている、漫画家漫画。フェチも詰まっている。
・ニチアサ以外はやってます!
 4コマにおける表現の仕方の追求がすごいし部活ものとしても王道をやってる傑作。12話はマジ。
・スローループ
 フライフィッシングというマイナーなテーマで家族の愛を見事に描いてる。オタクは吉永恋が好き。
・さよなら幽霊ちゃん
 ユルいギャグ漫画かと思いきや……。シンプルで可愛い絵柄な分、一語一語のフレーズが刺さる。
etc……



ほんとに終わり。
それでは。



    この記事は企画「雑談 アドベントカレンダー」にテーマ「漫画・アニメ」で参加しています。


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