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京都喫茶運搬日記(お茶代10月:ビジュアル参加課題)

「お茶をご馳走したい」と連絡してみたら、ダツ氏は針と共に現れた。
「どうせなら洒落たお店が良いですね」と提案したら、ズボンにまち針の刺さるダツ氏は、京都の街中をスマートかつ丁寧に運搬してくれたのである。

本物のダツ氏を見るのは初めてだったので、雰囲気の良い喫茶店で1分間に600回ぐらい目を泳がせながら「整体師の凄さ」と「意識的な無意識」について話をした。
私はあらゆる壁やソファ、テーブル、ウインナーコーヒー、クリームソーダを見ていた。バタフライの如きアグレッシブさで目を泳がせ続けていた。
多分、普通に失礼だった。本当にすみませんでした。

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お店が混んできたのでコンテニューコインを投げ、運搬の継続を申し出た。ダツ氏は快諾し、引き続きスマートかつ丁寧に運搬してくれた。
このように、体の半分以上が優しさで出来ているダツ氏であるが、"泣く子も黙る鬼編集長"としての一面もある。
「書きたいものはたくさんあるのに、書けなくて困っているんです」と弱音を吐いたら、「これをネタにして自分デートのお題を書いてもいいですよ」と赦しをもらい、河原町の中心で虚空のエフ氏に向かって「見たか!」と叫んだ。

(後で知ったことだが、エフ氏は同じ頃めちゃくちゃ近くにいた。世間の狭さが怖すぎる)

普段は山と砂と海に囲まれて暮らす私にとって、京都の街はオシャレが過ぎた。セレクトショップでオシャレな香木を見ても、「これ、シナモンみたいですね」しか言えなかった。
自分があまりにもイケてなさすぎて、道中では「誰か僕を背後から刺してください!」とANARCHYみたいなことばかり考えていた。「Kawasaki Drift」の話をしたら、ダツ氏はスマートかつ丁寧に乗っかってくれた。
大変優しい。めんぼくない。

いろんな場所に運搬してもらったけれど、お店の名前は大体英語で覚えられなかった。オシャレな複合施設で洋服のブランドについてたくさん話してくださったのに、ここでも「マウントレーニアみたいなゴリラがロゴになってるブランドですね」という最低の感想しか言えなかった。勉強不足で後悔も多かったが、しかしとても楽しかった。

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「意識的な無意識」についてオススメの本がある、と言って、ダツ氏は丸善書店にも運搬してくれた。かつて梶井基次郎がレモンを置き逃げしたとされる場所で本を買い、「マルジェラのカレンダータグ」と「やり手すぎていけすかない男」について話をしたあと、ダイナー風の老舗カフェまで運搬してもらった。
目の泳ぎはだいぶ落ち着いて、平泳ぎぐらいしなやかになっていた。「コム・デ・ギャルソン」と「ビジュアル・スタディーズ」について、また「お互いが一番面白いと思う中島らもの作品」について話をしていたはずが、落ち着きすぎて後半はお国自慢になってしまった。
しかし、ダツ氏は大海の如き器の広さでいて、スマートかつ丁寧に話を聞いてくれた。どこまでも優しい人である。

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絶望的な方向音痴によりチェックインに間に合わなさそうだったので、最後は図々しくも宿の近辺まで運搬していただいた。
「ひっそりとしたグループ展」や「高級な自動販売機」を目撃しつつ、歩道橋から京都タワーが見えたのでエモい写真を撮り、辻切りの話をして解散した。

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日中ほとんどごはんを食べなかったので、終盤のダツ氏はかなりお腹がすいていたと思う。
次回はカレーをご馳走します。どうもありがとうございました。

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