見出し画像

〜味障のグルメ〜ブチギレラーメン論 repesen北浦和

いつもよりはたぶん短い、バカ舌グルメエッセイ。

しょーみ、ミショー

 吾輩は味覚障害である。診断はまだない。あくまで味覚障害と自認しているに過ぎない。しかし、それを認めないことは認めない。というか、そう思うに至ったのは、周りの人間があまりにもお前は味障だ味障だともてはやすものだから「もしかして僕って・・・」と自らのアイデンティティに組み込んでしまったのである。可愛いでしょう?

 なぜ味障か。飲み会に行けばつくねをおかずに一味唐辛子を食べ、飯屋に行けば卓上調味料をアリンコ観察キットのように見定めてふんだんに使い、作った料理は味がないからとわざわざフライパンを洗わずその残り滓をコクと称して料理に含める。かつては人間が二足歩行をするくらい自然なコトだったが、なぜか世の中のチンパンジーさんたちはそれをみて、「やあこいつはイカレだ」とパチパチ手を叩いてくるのだった。かわいいね。

 どうして味障か?それはどう考えても高校のせいだ。私も公立中学に通っていた頃はまともな脳みそと味覚神経を有していたように思う。給食は残さず食べて、毎日母親のダイエットのために考案された質素なおからメニューをうまいうまいと頬張っていたものだ。私の地元であるM市にはチェーン以外にろくな飲食店がなく、せいぜい近所のセブンで唐揚げ棒をちまちま食うことが幸せだったのだ。

 そんなピュアでかわいい私は、高校に入るまで日高屋の存在を知らなかった。初めて放課後に食べた日高屋の豚骨ラーメンに私は感動し、クラスメイトに自信満々で「日本一すげえレストランを見つけたよ!」と息巻いていた。しかし「日高屋はどこにでもあるぞ」というリプライで赤面し、3日間この事が脳内を反芻していたことは今でも内緒だ。

 かくかくしかしかして、この日にラーメンがうまいものだと知ったのだった。地元にあるラーメン屋と言えば後楽園、珍来、ごくうとよばれる謎の汚い店だけだった。その後楽園ではじめて食べたシロパイタンラーメンは恐ろしく不味く、金を払って残した初めての食事だったのだ。(珍来はまあまあ美味しく、ごくうは酒を飲む場所だ。)

盤上の北浦和

 通っていた高校の最寄りである北浦和駅には、多くはないが、かなり質の高いラーメン屋が軒を連ねていた。その暖簾提灯を見るたびに高校時代のバカな思い出が蘇ってくる。しかしそれはたいてい味の話ではなく笑い話だ。そのレベルを、チェスに類すればこう。

ポーン♙:  百歩
ナイト♘:  娘々
ビショップ♗:  つばめ軒
ルーク♖:  どでん(番外編)
クイーン♕:  自然洞麺舗
キング♔:    ジャンクガレッジ北浦和店


 

ポーンの百歩

には、卓上にいくらでも使って良い辛高菜が置いてある。毎回嫌というほどふんだんに使って何度も替え玉するから、元の色が真っ赤に濁り溶岩の前で死んだ罪人を裁く閻魔大王のような気持ちになれた。このときは友人も味障だったから味障自認はしていない。


ナイトの娘々(にゃんにゃん)

は埼玉で有名な町中華の一つだ。裏路地にある北浦和店の店主はガハハと煙草を爆吸しながら食べたこと無い味のラーメンを出してくれる。一度娘々ブームが来ていた時に、大嫌いだったアホ教師(◎ワオカ)が地理レポを要求してきた。題材は自由で特にやることもなかったので「娘々の秘密」と称して、いかに娘々の地理が商売的に有効であるかをまとめた。帰ってきた用紙には「なめてんのか」スタンプが押されていた。それ以来、◎ワオカの授業は聞かないようにしたのでどんな奴だったかは今でもうまく思い出せない。

 娘々は会いたくない人によく会う。部活の顧問かつ担任で何度もバトっていたNにばったり出くわしたことがある。その時はいやに機嫌がよく自分と友人の分の会計を持ってくれた。やはり奢られるのは気持ちいい。しかし半年後の卒業式でこれが仇となった。その時私はピアスを開けその穴がまだ安定していなかった。そのピアスがNの気に障ったのか取るように要求される。普段なら全部反抗してさっさと逃げればよかったのだが、Nは突然「お前、あのときニャンニャン奢ったよな」と娘々の会計を持ち出してきたのだ。恩は恩であるから何も言えず、ピアスをとられグジュグジュになった穴にイライラしながら卒業式を迎えたのだった。完全にファックです。


ビショップのつばめ軒

は正統派豚骨ラーメン。卓上に無数のにんにくが置いてあり、自由に潰して入れられる仕様だった。我々はそこに行くたび無限とも思える量のにんにくを潰し、にんにく農家よりもにんにくの臭いをまといながらなんとか払った金額の本を取ろうとしていた。それが続いたせいで店側も経営危機を察知し、暫く後に卓上にんにくは廃止になってしまった。チュ、味障でごめん。・・・まじでごめん。


ルークのどでん

は大宮にある二郎系だ。私は胃袋がそこまで大きい訳でも脂耐性が強いわけでもないのに意気揚々と大宮駅から続く''どでんロード''を歩いていったものだ。コールには「多め」より上に「どでん」が存在し、ありえん量のトッピングができるのだ。ここに行くと毎回、食後に歩けなくなるのがお決まりで、私は食後に客待ち用のベンチで横になって暫く休眠するのがルーティンになっていた。その大迷惑行為のせいで「(名字)どでんベンチ」という存在しえない二つ名を自ら背負うことになった。

http://egachan20141001.blog.fc2.com/blog-entry-1884.html?sp より、どでんベンチ

クイーンの自然洞

味でここを超えるところはない。面白い話とかではなく単純に美味い。味はどんなものかと聞かれても無類としか言いようがない。まさに四畳半神話大系に出てくる猫ラーメンのようなものだった。

アニメ 四畳半神話大系より。

 ほとんど高校に行ってなかった自分も、自然洞にだけはラーメンを食いに行っていた。一日の中で昼に自然→部室で寝る→夜に自然のような生活を送っていたから、家と学校にいる時間よりも実質自然にいる時間のほうが多かった。学校をサボって店の前で開店を待っていたとき、部活の遠征に向かう友人が通ってきてバカ笑いされたことがある。退学したら次期店主と呼ばれるほど自然漬の高校時代だった。自然の行き過ぎで金がなくなり、友人に無心して借金ノートを作っていた。ついにその友人も限られた頃、最終的に店主のおじさんに金を借りてその金でラーメンを食ったこともある。意味がわからない。

 そんな思い出のラーメン屋も過日に店を閉じてしまった。最終営業日は同期と店に押しかけ、高校時代に飲めなかった酒を飲み騒いだ。ハナムケの校歌に涙するおじさんの姿を忘れない。

楽しい筆者

 いい話に水を差すが、この店で自分の味障は始まった。スエマツというぬらりひょんみたいな風体の男が恥ずかしながら私の友人だった。彼は卓上の酢を残りが容器の半分になるくらい滝入れする。酢がメインだといわんばかりのそのスープにあらゆる調味料をブレンドして、一滴も残さずに飲み干すのだった。はじめはなんだこの妖怪は、と思っていたが一度真似してしまって以降それが僕のカルチュアになってしまった。「酢は美味い。」それだけが裏切らない真実となり、おそらく味障のスタートだった。


お待ちかねのキング、

ジャンクガレッジ北浦和店だ。泣く子も黙る黄色(かった)い看板にでかでかと描かれるジャンガレドッグ君(よく見たら豚だけどずっとこう呼んでる)。脂ギトギトすぎて店の床はスケートリンクのように滑る。店を出てもそのヌメリが落ちないため、大学受験に落ちなくて縁起が良いとかなんとか。その味はまさにジャンクで、麻薬が入ってるんじゃないかと噂されている。一度イギリス人が留学しに来たとき、Do you like junk? weed!! weed! Try junk garage!と日本の麻薬文化を紹介した。

 ここには二郎系の例に漏れずにんにくをてんこもりに入れる習俗がある。自分は毎日のように制服で来ていて、服ににんにくの匂いが染み付いていた。そのせいでクラスの後ろの席のやつにブチギレられていた。私は一番前の席なのに毎朝学校にいないので手紙が溜まっていく。だが彼は私のニンニク臭にあまりにも怒り心頭であったため、手紙は一生後ろに回されることがなかった。すまない手紙たちよ。南無阿弥陀仏🙏

ジャンガレにまつわる話は無限にある。

・昼休みジャンガレチャレンジと称して駅の反対側にあるジャンガレまでまでダッシュし、帰りはお腹いっぱいで歩けず授業に行かなかった。

・ニンニク臭を防ぐために、食後にバナナを一本食べて胃に蓋をしていた。毎回バナナを食べる場所が交番前だったため、指名手配犯の桐島聡を捕まえて一生分のラーメン代が欲しいものだと友人と語り合っていた。

・当時付き合っていた彼女と北浦和におり、嫌がる彼女をサイゼに送り自分はジャンガレを食べた。それ以来ジャンク彼ッ氏と自称していた。

・毎週、週に一度の学生の日に、学校で勉強してる人間に声をかける。学校行ってないのに。学ランに身を包んだ無数の男たちが、颯爽とジャンガレまでの大通りをザッザッと闊歩する姿を見て、学徒出陣と呼んだ。

・そんな無垢な彼らに布教する際「まぜそばは混ぜない」という哲学でその不可逆性を説いた。味障にとって味の融合は味障を強化する。まぜないで酢をかけるべしという酢教も同時に広めていった。結局味はよくわからなくなるのだが。

・店員に名前をつけて遊んでいた。地理教師に似てるから◎ワオカ、東南アジア人っぽいからフィリピンおばさん、かわいい系の男はオニーサンなど。味の当たり外れはこの店員によって決まっていたから、入店時に厨房を見てそれを判断できた。今思えば人の顔を見て勝手に喜憂してくるかなりウザい客だ。

・羽生善治が永世七冠を取ったとき、対抗してジャンガレに7日間通いつめてジャンガレ永世七冠を達成した。どでんベンチと合わせて「永世七冠(名字)どでんベンチ」という名誉ある号を得た。もちろん内蔵はヤラれて、顔にニキビが溢れ出した。

 まったく、一体いくらこの店に注ぎ込んだのかわからない。自分からしたら闇金並みの悪徳企業である。面白いことに、ジャンガレは東京群馬に一度出店してるが一瞬にして閉店している。埼玉にしかこの店の味を理解できていない可能性が大きい。つまり埼玉に生まれた人間が必然的に味障であることも否定できないのだ。

世界を股にかける味覚障害

 このように、北浦和駅周辺には味障になるための味障スタンプラリーがあったのだ。だから大学に入って周りが「ワセメシワセメシ」と崇拝するものを食べても、味が薄くてあんまり感じなかった。卓上酢と辛子がなければそれは金を払って食うべきメシではなくなっていたのだ。こんな具合に味障なので、コロナにかかったときも味覚に異常があるかもわからなかった。

 北浦和に始まった味障のグルメは、この後ラーメン激戦区である京都と秋田に移動する。京都の一条寺ラーメンストリートに住んでいた友人がいて、毎夏泊まり込みラーメン合宿をしていた。夢を語れ一条寺店に行った際に、友人はベトベトの床にバックを直置きし、さらにテーブルをしきりに手で擦った後にその手で顔をゴシゴシ拭くもんだから気になった。そのことをイジって「顔拭き男!顔拭き男!」などと言っていたら彼はブチギレてしまい、コインランドリーに避難。危うく宿を無くしかけたのだ。しかし納得がいかず、共通の友人に電話をかけて顔を拭くことの意義をディベートした。結論は顔拭くのはよくないが、泊まらせてもらう立場で無駄ないじりをするのもよくないとのこと。それはそう。

 秋田に行けば若年人口よりもラーメン屋が多くある。とりあえず有名なマシンガンという二郎系に行っておけば間違いない。正直他に行く場所もないのでマシンガンに行ったら後は東京に帰るだけだ。しかし秋田にラーメンを食いに行ってよかったことがアメリカであった。野暮用でボストンに滞在していたときに、長髪のイカツめな日本人に会った。会話の中で、彼が秋田在住だった話をピックアップ。「Machinegun…」とボソッと言えば、あら不思議。彼は「Yo~~!!!Bro!!」と心をオープンしてくれた。ありがとう、マシンガン。

 そして、世界で一番まずい飯と言われるイギリス(よりもまずいかもしれない)の近くに留学した。果たしてこれは料理が悪いのか自分の舌がおかしいのか分からないのだった。少なくとも周りの人は口を揃えてマズイマズイと言っていたのでおそらくそこまで味障でもないかもしれない。まあしかし、あまりにまずいもんで一日一食にしたり残したりして、栄養失調で倒れるなどした。日本に帰ってきたときは、松屋の牛丼で日本食の素晴らしさに感激の涙を流したものだ。シェフを称賛しようと厨房に声をかけて、出てきたのはフィリピン人だった。フィリピン食を日本食と味紛うとは、やはりソレガシ味障に候。

一般的な食事

 なんだかんだ、自分は味障を自称しておきながら食を誰よりも楽しんでいると思う。しかも結構口うるさい。ゴニャゴニャ食に論を垂れていたら後輩から「なんで味覚障害なのにグルメなんですか」と言われグサリ。たしかにそう。でも、味覚以外もイカれてるから仕方ない。生まれつき目の色素が薄く、白人並みに光に弱い。1Dayコンタクトを3Daysくらいつけてたら網膜細胞が半減していた。オールナイトレイブに行ってたら耳がイカれて、重度の音響外傷。父方の家系は耳が悪すぎて全員補聴器だ。こんな感じで残った嗅覚だけはかなり鋭い。

 だからコンビニ飯でもイカれてるものを嗅ぎ当てる。じゃがりこを使えばなんでもジャンクにできることを嗅ぎ当てた。蒙古タンメン中本のご飯にじゃがりこを詰め込めば、手軽にできる(激辛)ロシア料理、(レッド)ボルシチの完成だ。翌日のケツは悲惨なことになる。舌よりも下のほうが神経あるんじゃないかと思ってしまう。実際のモンゴル襲来になぞらえて「蒙古は二度来る」とはよく言ったものだ。さらに一時流行ったじゃがりこ+お湯+チーズのチーポテだけに終わらず、それをカップまぜそばにドボンと突入し、さらにごはんをブチ込む。外道の三重炭水化物料理。名付けてしまえばC(カーボン)だ。  ・・・とか。


本題。


 意味わからない話ばかりしたが、今日伝えたいのは実は下のこれだけだったんだ。なぜか昔話をしたくなってしまった。先日、セブンイレブンに発売されたこの「カオマンガイおにぎり」。発売から数日しか経ってないが、すでに10個以上購入している。こんなすごい商品が注目されないのはよくない!

 味はカオマンガイに忠実で、エスニックな美味しさが引き立つ。値段はたった170円程度。2個買えば結構腹にたまる。店で食べれば900円はするカオマンガイがたった300円台で食える。鶏むね肉だから脂分も少なくヘルシーで一個につき10g近いタンパク質を摂取できる。これは永久に購入し続けたいものだ。だから宣伝しようと少しだけ文章を書いていたら、ラーメンの話を永久に書いてしまった。とにかく、このカオマンガイおにぎりを買って、宣伝してほしい。売れなかったらレギュラーに入れてくれないから!イカ飯おにぎりもおいしくて結構買っていたのに無くなっていた。Ω\ζ°)チーン

みんな買ってね。

おわり。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?