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・自治体による企業支援と官民連携

群馬県中小企業診断士協会の松田 裕 です。今回は、中小企業での実務・支援などにあたって活用したい、さまざまな自治体による企業支援や官民連携について紹介していきます。公的支援で代表的なものは、いわゆる「補助金・助成金」ですが、そのほかにも全国の自治体では様々な公的支援の制度を持っております。これらを積極的に活用していくことや、自治体の施策実施に企業側が協力することによる連携を進めていくことで、ともに同じ方向を向いて地域の経済を盛り上げていくことが、地域経済の未来を切り開くことにつながっていきます。

・自治体の施策を実行する企業への支援

自治体は地域の経済・社会のあるべき姿を施策として掲げて、さまざまな施策を実践しています。しかしながら、自治体だけでは、あるべき経済活動や社会構築はできません。地域に必要な商品・サービスの供給などは、地域企業の力なくしては達成できないのです。こういった施策を自治体に代わって達成する企業のために、投資などを後押しするのが自治体の補助金・助成金であり、技術的な支援をするのが自治体の試験場など研究機関です。自治体の掲げる施策を実行し、地域課題を共に解決しようという姿勢を持つことは、企業にとっては自治体の後押しを受けられ、自治体にとっては施策を具現化してもらえる、そんな共存・連携の関係を作ることにつながるのです。

・自治体HACCP導入を例にして

例えば、食品事業者の場合だと、販促や資金調達に加えて、衛生管理の対応を取引先のスーパー等に求められることも多いです。その際に何らかのHACCP(※)認証を求められる機会も増えてきています。その際、地域により内容・取り組みに違いはありますが、もし自治体側が普及に積極的な県・市であれば「自治体HACCP」の活用も良いです。その際に、地域のHACCP事情に詳しい地場の衛生管理会社や、食品に通じている診断士グループなどを活用すると、スムーズな取得を図れるでしょう。HACCPは衛生管理の認証と思われがちですが、管理に必要なロット管理・生産量の管理を通じて、製造工程そのものを管理して無駄を無くすことにつながり、かつスーパー等への商品採用のきっかけにつながることで、大きく販路拡大を図れるなど、衛生管理による事故防止のほかにも、経営上のメリットがある管理手法なので、経営のレベルを向上させることができます。そして、自治体が進めたいと考えている地域の食品の安全・安心確保にも協力できるわけです。

(※)HACCP:日本語では危害分析重要管理点と訳される、食品に及ぼす危害が製造される工程のどこで生じるかを分析したうえで、管理すべき点を定めて管理する、食品の衛生管理の手法です。

・実効性あるSDGs実践は官民の協力から

さらに、持続可能な開発を掲げたSDGsの個別目標達成にも、公的事業だけではなく民間企業が環境配慮・社会福祉・地域経済活性化につながるような商品・サービスを生み出していくことが欠かせません。そのために、自治体がそういった商品を広報したり、試験機関などが開発に協力したり、ふるさと食品コンテストのような表彰の機会を作ることで、そうした商品・サービスを世に送りだし支援する流れが広がってきています。自治体と中小企業がたがいに手を取り合って、より良い地域の未来を創っていきたいものです。そして、中小企業支援施策の実行者たる「中小企業診断士」には、官民の協力を取り持つコーディネーターとしての役割を発揮・実行していくことが、今求められています。

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