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同伴出勤

「今日ね、不思議なことがあったのよ」

久しぶりに会社へ行ってきた人がクタクタになった体をソファに横たえながら、そう話し出した。

「帰り道、そこのコンビニで鞄からウチのもっくんが出てきたのよ」

“もっくん”というのは、我が家での蜘蛛の呼び名である。
彼が言うには、我が家で最近よく遭遇する、少し大きめ(と言っても薬指の爪より小ぶりなのだけれど)のまんまるのもっくんが鞄の中に入っているのに気づかず出かけ、なんとか家路につくところまでは無事に一緒だったのだが、うっかりカバンを開けたことで驚かせたか何かでコンビニで別れることになってしまったのだと。

カバンから出てきたのが、本当にうちの子だったのかは定かではないものの、きっといつもの“もっくん”だったと。

名前をつけると、情がわいていけないや。
次にコンビニに行ったらば、二人してもっくんの姿を探してしまうだろうな。

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