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(ネタバレあり)ルックバック感想

今日午前中に、映画を観てきました。
まだ他の方の感想や分析などを見ていないので、重複するところもあるかもしれませんが、映画を観たての新鮮な感覚のままで、書いてみたいと思います。

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藤野と京本。2人にとって漫画は魂のようなもので、自分自身そのものに近い。
お互いの4コマに憧れ合う2人は、相手に焦がれられることで、自分を回復していく。だから彼女たちの関係は、性的な要素を省いた、魂の恋人たちのように見える。

2枚の4コマを軸に感想を述べていく。
1つは藤野が小学校の卒業式の日、京本の部屋の前で描いた4コマ。もう一つは、藤野のえがいたもう一つのルート(ルックバック)上で、京本が描いた4コマ。

(1)藤野の4コマ(小学生時代)
「出てこい」「出てこないで」のコールに対し、4コマ目に京本の白骨。
拮抗する呼びかけは、そのときの藤野の葛藤でもあり、不登校の京本の長年の葛藤でもある。
白骨は、書いた当時の2人の状況からすると「このまま一生を終えていいの?」という問いかけのように思える。

藤野(の4コマ)に惹かれる京本は、憧れの藤野のメッセージを受け取り、外に出る。藤野に思いを伝え、袢纏の背中にサインを書いてもらう。
京本は藤野の手に引かれて漫画家ユニットとしての一歩を踏み出すが、それは「藤野に手を引かれて」であり、自分で行動を決めてのことではなかった。

京本は背景画を極めるため美大へ進学したいと藤野に告げる。京本にとって、本当の外界への第1歩が始まった。

(2)藤野の4コマ(京本の死後)
藤野は京本の部屋の前で藤野の4コマ(小学生の時に描いたもの)を見て、「出てこい」「出てこないで」の結果、「出てこい」に導いた自分が京本を死に追いやったのでは、と自分を責める。
そして藤野は、「出てこないで」の先をルックバック(妄想とも回送とも言いがたく、まさにルックバック)していく。

ルックバックの中で、京本は部屋を出ることなく、不登校のままAO入試で美大に入る。そして殺人が起きようとする時に、藤野が通りかかり跳び蹴りを食らわし、京本は間一髪で死を免れる。

(3)京本の4コマ
ルックバックの世界で、藤野に助けられた京本が描いた4コマ。跳び蹴りを食らわし「もう大丈夫!」とクールに去ろうとする藤野の背中に凶器が刺さっている。それを静かにつっこむ京本。

藤野が京本に惹かれたのは、自分にない才能、自分以上の努力、そしてその相手が自分を肯定してくれたこと。そのこと自身が、藤野自身の傷をどんなに癒やしていたのか。
いや、傷自体は治るとかそんなものじゃない。一生抱えて生きていくからこそ、作品は生まれる。傷の存在ごと、背後にいて肯定してくれる存在。それが京本だったのではないか。

藤野の後ろ姿を見ていた京本には、「私がいないとやっていけないじゃん」と言い切る藤野のデリケートな側面も、まるごと見えていたのだろう。そしてきっと「私が京本を外に出したから(京本が死んだんだ)」という言葉で自分から目をそらそうとする藤野の、その背中に刺さっている傷も、京本なら見えるのだろう。だって、ルックバックの中でさえ、京本は自らAO入試を受け、美大へ通えているのだ。

藤野が京本の手を取らなくても、いつか京本は自ら外へ出る。そのことを藤野は、本当は理解している。そして藤野は、京本を外に出していなかったら、漫画を描けていなかった。

(4)ルックバック
藤野がルックバックして跳び蹴りで防いだのは、京本の肉体であると同時に、藤野自身の魂の背中だったのではないか。
藤野は、傷を負っていたのは他ならぬ自分自身であったことを受け入れる。
この瞬間、藤野と京本が一体化する。藤野の後ろにいて、藤野の背中を見守っていた京本。京本の袢纏の背中に描かれていた、藤野の名前。

他者の目を取り込むことで、目線が1方向から2方向になり、自分自身への解像度が上がる。自分自身をみるのは辛いけれど、受け入れ見守ることで、少しずつ柔らかく、強くなる。
藤野は悲しみの中で自分の弱さを認め、いままで京本に守ってもらっていた背中を、自分自身(の中の京本の目)で見守れるようになった。
傷は残るし、新たな傷も増える。漫画作りは終わらないし、締め切りは来る。
傷と、京本と、跳び蹴りを抱えて、藤野は漫画の続きを書き続ける。人生は続く。
そういう、とてもリアルな成長物語だと思った。

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あまりまとまっていない気がしますが、観てきた感覚のまま書いてみました。
一言で言ってしまえば「感動した」なんですが、どんな風に感動したのかを言語化することで、自分のものにし、自分の実人生につなげることが出来るような気がします。
この作業もまた、ルックバックなのでしょう。
自分の読みとあらすじが混在しているので、読みにくいかもしれません。私のルックバック中の世界を表現した記事だと思ってご容赦ください。


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