陣痛と便痛を間違えた話


はじめまして。漫画好きなバイトライター、丸山おまると申します。

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はじめての記事ですが、この記事を読んでいる皆さんにはすでに好感を抱いております。新年開けて早々、無名の人間が書いた、しかもこんなIQ5くらいのタイトル記事を読もう!……というね、その行動パターンが好っきゃねん、ワイは!エエ思うねん、その感性!(「神聖なる出産時におふざけざますか!?文句言ってやるざます!」というス◯ちゃまのママはお帰りくださいネ)

……初記事なので、筆者のキャラが全然定まってない。そんな不安定なところも楽しんでいってほしい。そう、十記事くらい書いたあと読み返すと悶絶するであろう他人の黒歴史として。だから帰らないで最期までとりあえず読んでいかない?ねっ?ねっ?ねっ?ねるねるねるね?


さて、閑話休題。
数年前のある夏、私は妊婦だった。とりたてて特筆すべきこともない、幸運で順調な妊婦ライフ。

ただ予定日を過ぎ、躍起になって2日で15㎞歩くという暴挙に出てもなお、息子は腹の中でのんきに暮らしていることだけがネックだった。とうとう明日には入院し陣痛促進剤での出産が迫っている…そんな朝のことだった。

あぁ〜出産って痛いんだろうなぁぁぁぁ〜〜〜〜!そんな憂鬱な思いで目が覚めた私。ちなみに臨月迎えてからは毎朝この目覚め方である。しかしこの日は明日に入院が決まっていたので、憂鬱もひとしおであった。

しかし寝不足の目を擦りながら、とりあえず最後にうまいものを食べようと思い立つやいなや、急に元気が沸いてきた。
なんたって太りやすい妊娠生活。マジで水を飲んでいても太る。太るというか、肥えるが近い。生きることすべてが体重に反映される。それが妊娠生活!(※個人差はめっちゃある!)

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二週間で5㎏体重を増やしてめちゃくちゃ怒られて以来、助産師さんが怖すぎて常に腹ペコで暮らしていた私はこの朝、ピンときたのだ。
今日、めちゃくちゃ飯を食っても明日は出産、もう体重で怒られることはない!と。

そうと決まれば善は急げである。出産が近いと呼び出されたうえに、三週間も産まれずヤキモキしまくっている母を付き添いに、私は颯爽と近くの商店街へと気持ちだけは駆け込んだ。実際は腹が大きすぎて亀のような歩みよ!

お気に入りの純喫茶。そこで私はボリュームたっぷりのサンドイッチランチをペロリと平らげた。食パン2枚分を大胆に使ったサンドイッチのうまいこと夢のごとし。母親のサンドイッチももらって食べた。もちろん付属のサラダとスープも平らげた。幸せすぎる。しかしそれほど食べながら、はらぺこあおむしさながら私のお腹はまだぺっこぺこだった。

「甘いもの食べたいから、コーヒーゼリーフロート飲もっかな!」

この店のコーヒーゼリーフロートは、どでかいグラスにカフェオレ&コーヒーゼリーがたっぷり入った上にソフトクリーム&ホイップが乗った代物。体重管理により甘いものとは程遠い生活を送っていた私の体は、糖分を欲しまくっていた。母親も明日には出産なのだからと思えば、そんな娘のワガママなどかわいいものに思えたのだろう。二つ返事で頼みな!と言ってくれた。

私は食べた。飲んだ。一気に食べすぎて、消えたのかと思うほどだ。事実消えてない??そもそもこれだけのスピード感で食べたら、きっとゼロカロリー。つまり私は食べていないも同義なのだ。

「……うん、おかわりしたい!」

そう結論付けた私を見て、さすがに母親が諌めそうな雰囲気を出してきたが、私はピンときた。この感じは押せばいけるな、と。

「明日からはまた病院でこんなの食べられないし……ここまでがんばったから!」

母親も翌日に出産を控えた娘には甘きものである「そうね。頼み!」

そして二杯めのコーヒーゼリーフロートを平らげていたとき、異変が起きた。

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お腹が痛いのだ。

おや?これはちょっとあやしいぞ、という痛み。産まれるんちゃう?みたいな痛み……それを人は陣痛と呼ぶんだぜ!みたいなやつ。っていうか、陣痛。

私は冷静だった。えっ!陣痛きたの!?と慌てる母に、とりあえず目の前のコーヒーフロートを完食することを告げた。一年は組、お残しは許しまへんでと育てられた世代である。まだまだ間隔は広いものの、定期的に来る痛みに冷や汗をかきながら、私は冷たいフロートを食べた。
しかし、ここで奇跡が起きた。痛みに耐えながらフロートを食べているうちに、なぜか陣痛感が遠退いていったのだ!
いや別に奇跡でもなんでもなく生産期の妊婦にはよくあることなんですけども(前駆陣痛っていうらしいよ)、産まれる兆候の一切なかった私にはお初の体験だった。

「これがいわゆる前駆陣痛ってやつかぁ……へへっ」

ひとつ大人になったような顔をしながらとりあえず家路を歩む。純喫茶から家まで2㎞ほどある。往復4㎞…。真夏で汗だくになりながら、お腹いっぱいすぎてはち切れそうな体を揺らしつつ、私は休み休み歩いた。思えば、このときも腹が若干痛かったが、私は全て暴飲暴食&最近の長距離散歩のせいだと思っていたし、実際に家につく頃にはあのアブナイ陣痛感は遠退いていた。

私は腹が痛かったことも忘れてごろごろ過ごし、食べ納めとばかりに夕飯までたらふく食べた。


そして、20時を迎えたときのことだった。なんの因果かテレビに水泳選手の萩野公介が出てきた瞬間である。

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そう、またも腹が痛くなったのだ。

私は素直にトイレへと向かった。ピンときたのだ。

(注意・このあとポンポコ汚い単語が飛び出します)



注意喚起もしたとこで、素直な言葉で当時のことを綴ろう。

ピンとね、きたのだ。
あぁ!これは下痢便がきたな、と。

普段からどうでもいいことでピンときてるからかな。ピンが、クソほどピンじゃない。

いや、実際う◯こは出たからあながち間違ってもないピンだったのよ!?(色んな意味で最低の言い訳)

でも、出産予定日を過ぎて昼に前駆陣痛が来てた妊婦としてはピンの精度が低すぎたことも否めない。それは事実であり、反省すべき点である。

しかし当時の私は、ピンときた便意を過信していたのである。なんならね、便に違いないという、確固たる自信まであったわ。なんで?
昼ごはんを食べまくり、冷たいコーヒーフロートを飲みまくった事実もそれを後押ししたし、前駆陣痛とは違う痛みだったことも自信に拍車をかけた。
あとで考えてみれば、そのとき私を襲ったのは本陣痛だったのだ。そりゃ前駆陣痛とは桁の違う痛みで当然である。

私はトイレで気張りまくった。下痢っぽい痛みなのに、普通のう◯ちちゃんがこんにちは!と出てきては流されて去っていった。
気張った。気張りまくった。出そうになっているものが、う◯こだと100%信じていた。もっと自分を疑った方がいいと、今なら思える。

主人は何度もトイレに駆け込む私を見て、すでに疑いの目を向けていた。「それ陣痛じゃないの?」と聞かれるたび、私は自信満々に「大丈夫!う◯こ!う◯こ!」と意気揚々答えていた。


おまる、それう◯こちゃう!赤子や!


しかしね、でもね、さすがの私にもそう判断したのには、ちゃんとした理由もあったのよ。
陣痛っていうのは、例えば最初30分おきにきたら次は20分おき、10分おき、5分おき……みたいな感じで、普通は規則的に来るのね。だんだん間隔が短くなって、初産の時は10分おきになったら産院に連絡してね♪みたいなノリなのよ。出産時って。
私はこれがてんでバラバラだったのである。15分、3分、5分、20分、8分……といった感じ。マジで一回たりとも安定しない。
ねっねっ、こんな変則陣痛。私の間違いを誰が責められようか(いや責められはしない)

私は、そのままトイレで気張り続けた。一時間半は気張っただろうか。産み出せる限りのう◯こを産み出した。う◯こが尽きてもまだがんばった。途中、燃え付きそうにもなった。トイレに座る姿はさながらあしたのジョーのラストシーン。

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ただそのときにはめちゃくちゃ腹が痛くなっていたので、穏やかなジョータイムはそう長く続かなかった。そもそもトイレで『完』しちゃったら、それはもう事件だし。

さすがの私にもちらっと陣痛かな?という考えも出てきた。しかしこれがもし!下痢の痛みであったなら!産院で「下痢と陣痛を間違えた女」として語り継がれてしまう……!それは、ちょっぴり恥ずかしいゾ、へへっ!という、アホみたいなプライドが判断の邪魔をしたのだ。

いやまぁ、絶賛逆方向に間違えてんだけども。

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丹下会長のそんな声が届きましたかねぇ。というか、本当にね、2時間も経つ頃には結構めちゃくそ痛かったんですよ。もう気張りすぎてお尻の穴も限界!限界!ってタオル投げまくってるし。
ここでやっと、ケツに突き動かされるように私もタオルを投げました。

「あのさ。もしかしたら、陣痛、かも?産院に電話してみよっかな?」って。

この期に及んで自信なさげ。しかし主人が絶対!した方がいい!と力強く言うので、電話しました。勇気を出して。

予防線を張りまくる小心な私「あの、明日の朝入院する予定の者なんですが、お腹が痛くてですね。痛みは全然規則的じゃないんですけど、二時間くらい痛くて。あっでもですね、ただの腹痛かもしれなくて!病院行った方がよろしいでしょうか……?」
助産師さん「うーん、電話の感じ余裕あるっぽいねぇ。でも予定日過ぎてるし、家も近いし、一応来とこっか!」

有能すぎる助産師さんのおかげでやっとこさトイレから離れた私は、荷物をもって、夫と呼び出した陣痛タクシーに乗り込んだ。

ねぇ、知ってました?

陣痛って車に乗ると振動でさらに進むんですよ。妊婦さんやご主人は覚えといて損はない。
たかだか10分の道のりで、私の腹はめちゃくそ痛くなった。本当に。マジよ?めちゃくちゃよ?桃鉄で新幹線乗ったときくらい進むからね?

はやめの移動、めっちゃ大事!!!!!


タクシーに乗り込むときはまだ颯爽とした足取りだったのに、病院に着いたときには私の足はガクガクだった。ちょっと……急激に痛すぎるが????タンマ!タンマ!
腹っていうか、腰っていうか、具体的に言うならさっきタオル投げてたケツの穴が爆発しそうなくらいに痛い。ケツ全体が痛みで痺れて、ケツとしての輪郭を失うほどに痛い。

私はよろけながら思わずケツを両手で掴んだ。あった。爆発して雲散霧消したかと思ったケツを感じて、思わず私は涙した。
ちゃんと自分にケツがあるという理由で泣いたのは初めてだったし、なんなら、もしかしたら小さな世界初が生まれた瞬間だったかもしれない。

その後、涙目の私を見て心配してくれた主人が時間外入り口を必死で探してくれて、私は産院へと無事にたどり着いた。
子宮口は8センチ。普通であれば、陣痛感覚1〜2分レベル。

「うわー!もう全開近いよ!?よく耐えたね、痛くなかったの!?」

アタイ言えなかった。
ずっと下痢と間違えてました、とは。


その後もてんやわんやあったんですがそこまで書くと、興味本意でこのnoteを開いた方の集中力も限界だと思うし、なにより書き手の私も限界なので、サクッと結果だけ。

その後、0時回ったころ無事に息子が産まれました。トイレで苦しみ始めてから約4時間。初産平均タイムの14時間を大幅に上回るスピードで駆け抜け「あなた、あと少しで家で産むとこだったね(笑)」と助産師さんに言われた出産劇……いやもう劇っていうかジャンル的にはコントだけど。


陣痛は尋常じゃなく痛いから絶対気づくよ!と皆に言われてたけど、いやね〜あれね〜、わかんないわ。少なくともわかんなかった人間がここに一人いるわ。っていうか、産む直前までいくのはあんまりいないかもしれないけど、多分初産の妊婦は結構間違えてるでしょこれ。ほんまのこと言ってみ?下痢やと思ったやろ?

思ったと言え!!!言えよ!!!!ペロっと言っちゃえよ!この機会に!!!

(あくまで心のなかでね、いいからね。ねっ、気軽にね)

まぁね、だから、妊婦の皆さんは無理せず、おかしいなと思ったら恥も全てかなぐり捨てて病院に行くんだ!あと車には気を付けろ!ほんまに陣痛進むから!!おまるからのあんまり役に立たなさそうな助言だよ!


ちなみに産んだあと、かなりスピード出産やったしこれ語ってこ!と思って手始めに病院で横にいた人に話しかけてみたら、横の人は30分で産まれてて度肝抜かれました。世の中には色んな人がいるもんだ。

妊婦の数だけ出産のかたちもあるのね……!
だから息子もこの誕生を誇りに思うはず!

多分!!!!



〜〜◯引用紹介◯〜〜

高森朝雄、ちばてつや『あしたのジョー』(講談社) 20巻
2012年発行 電子書籍版
(引用箇所ページ数上から 75,258,52)

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名作すぎて、なんの紹介や説明も必要としないでしょうね。久しぶりに読み返したんですが、歳取って読むとまた良い。ジョーの純心が胸を打つわ……。名ヒロイン・葉子も良すぎる。葉子の葛藤と成長は何度読んでもイイ……あぁ語彙力がなさすぎて何も伝えられねえ。ライターとして致命的!!!!

こんな記事に引用させてもらって申し訳ないわ、もう!でも名作!ほんまに!教科書にすべき!もろもろの面で絶対ムリやろうけど!!!!!
しかし葉子、あのグローブどうしたんだろう。ジョーの汗はもちろん、ホセの血めっちゃ吸い込んでない?とりあえず洗濯?洗濯しちゃう?ってなってない?大丈夫??扱い難しくない???

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その他イラストはみんな大好き『いやすとや』さんからお借りしました。ありがとうございます!

https://www.irasutoya.com/?m=1

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