息子とトーマスと私【小話】

トーマスに対して、私はひどく無知である。

姉妹育ちだったこともあってか、トーマスに全く興味を示さず。むしろトーマスってなんかちょっと気味悪(失礼!)……くらいな勢いで30数年過ごしてきたわけです。
いや、昔のトーマスってかなりおどろおどろしくなかった?誰かが沼とかに落ちたらイーヒィッヒッヒィ〜〜〜!とか笑ってるし、なんか画面も薄暗いし(※うろ覚えの偏見)

しかし男児の母となった以上、やはりトーマスをノーチェックでやり過ごす訳にはいきません。

よくわからんが、男といえばタイヤがついたものが好きなのです。我が家の夫もそうです。安月給なのに家にはバイクが3台もあるくらいです。

他人の趣味には口を出さないことを信条にしている私もさすがに3台目を買うときは「曲芸のプロだって2台しか同時に使わないのに、なんで一般ライダーの貴様に3台もバイクが必要なの?」と聞いたものです。
これに関しては未だに納得のいく答えは貰えていませんが、まぁいいです。なんかわからんが好きなんでしょう、タイヤが。

というわけで(?)そんな無知無知な私によるトーマスにまつわる小話2ついきまーす!


トーマスのしせん

息子一歳。私は夫とTSUTAYAにいた。
お目当てはトーマスのDVDである。夫はそれなりにトーマスを嗜んでいるので、事前に多少の情報は得ていた。

・トーマスたちは結構ギスギスしている
・他人の失敗を嘲笑い、他人の足を引っ張る
・初期は結構バイオレンスな展開が多い
(※夫の勝手な見解です)

へー、トーマスってやっぱりちょっと怖いのね……なんて思いながらも息子のためならエンヤコラでDVDを探していたのです。 ここからは当時の会話形式でどうぞ。

 
私「今回息子に見せるのにトーマスのDVDにしようと思うけど、どれがいいと思う?」

夫「なんでもええんちゃう」

私「トーマス全然わかんないんだよなぁ。この『はじめてのトーマス』ってやつはどうだろ。なにが入ってんのかなー、ええと『ゴードンのしせん』

……ご、ゴードンの死線!?!?」


 
旦那さん「ええやん」
 
私「ええの!?!?ゴードン死線走ってるけど!?!?」
 
旦那さん「??普通やろ」
 
私「トーマス界では普通なんや……こわっ。え、待って!このDVD、トーマスもパーシーも死線走ってるんだけど!?!?なにこれ!怖すぎじゃない!?!?なんで死線ばっかり集めてんの!?」
 
旦那さん「はじめてのトーマスだからやろ」
 
私「はじめてでこんなハードなことある!?トーマス怖すぎるわ。とりあえず、シーズン5の1巻にする」
 
 
このように散々TSUTAYAで騒いで帰った訳ですが、家に帰ってから気づいたんですよね。あの『しせん』ってもしかして『支線』のことなんだろうか、と。

なぜか奇跡的に会話が噛み合ってたよね。
もしかしてアンジャッシュなの?私たち。
  


息子「チョッチュ!」

息子二歳半。発達が遅く全然喋れなかった息子も少しずつ単語が出てきた。トーマスにもそれなりの興味を抱いているようで、祖母に買ってもらったプラレールのタイヤをひたすらに見つめて遊んでいる。

そんな息子だが、なぜかトーマスのことを「チョッチュ」と呼んでいた。カスってもいないが、本人的にはこれで「トーマス」と言えているつもりらしい。まぁ、言葉っぽいものを喋ってるだけでも万々歳!だった我々は特に修正することもなく、そのままにしていた。

ある日、子連れ向けの地域の集まりにはじめて出掛けた。引っ越してきて日が浅かったのでかなり緊張しつつ、年配の方々や子連れの方に挨拶し、私的にはネコを100パーセント被って過ごしていた。

多動気味な息子が会場を走り回ろうとするのを必死に食い止めつつ、辺りを見回すと狭い会場の一角に子供が遊べるおもちゃコーナーがあった。ここで遊ばせよう!と嬉々として近づくと、たまたまトーマスのおもちゃが転がっていた。そのときの気持ちといえば、砂漠の中のオアシスを見つけたようなものである。これでじっとしててくれるかも!

私「わー!息子!チョッチュ!チョッチュがあるよ〜〜〜〜!ほら、見て!」

しかしハイテンションな私をよそに息子は怪訝そうな顔をするだけで全く食いつかない。私も走られてなるものかと必死でさらに声を張り上げた。

「ほら好きでしょ!チョッチュだって!!チョッチュ!!遊ぼうよ!」

息子は完全にはぁ?という態度である。
その様子を見てハッと気がついたのだが、息子本人はあくまで「トーマス」と発音しているつもりなのだ。

息子からしたら「チョッチュてなんなの〜〜???そんなの知らなーい!マジイミフ!」みたいな感じだったのだ。

案の定、全く情報が伝わらなかった息子はダッと駆け出していき、私は謎の呼び名でトーマスを呼ぶ女としてその場に取り残された。ふと見たら横にいた子供も若干引いていて「それトーマス……」と小声で呟いているのが聞こえた。

私は泣いた。心で泣いた。心で泣きつつ、薄ら笑いを浮かべて隣の子供の前にそっとトーマスを置くと息子を追いかけるべく走り出した。

その会合にはそれっきり参加していない。


以上です。

私と息子とトーマスとの思い出。いかがでしたでしょうか。なかなかに録でもなかったですよね。

現在、息子は全くトーマスに興味を示すことなく過ごしています。というか、タイヤに全く興味がないらしいです。あぁ、私の頑張りって一体。

なーんか子育てってうまくいかないな、と思いつつ。個人的には古いトーマスって結構面白いなと思い始めたので、これから暇なときにでもアニメを見ていきたい所存です。

そう、転んでもタダでは起きたくないんだ!

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