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『天気の子』を観たら今までの新海像が崩壊した【ネタバレ感想】

※思いっきりネタバレします。未視聴の方はご注意下さい。あと敬称略してます。


なんていうか、今さら!!!???
天気の子!!!

って感じですよね〜。わかりますとも。多分世間一般ではすでに語り尽くされているんでしょうね。でも今さら観てしまった&語りたくなったので、しこしこ記事をしたためている次第です。

一応ね、新海作品は毎度観ている私です。
というのも主人が新海誠が大好きで毎度DVDを買ってきたり映画に誘ってくるので、それならタダやし観ようかな!という貧乏性な理由。なので前提として、積極的新海誠ファンじゃないけれど新海作品は毎度観ている人というポジションです。

ちなみに映画自体ほとんど観ません。映画好きとはとても名乗れない↓


個人的に新海誠は『ほしのこえ』『秒速5センチメートル』が好きです。特に『ほしのこえ』はストーリーが切なくて印象的。絵も印象的だけど……。この二作に関しては何回でも観たい。

ただ近年の作品を観るに、めちゃくちゃ私見ですが《新海誠はストーリーテラーを目指していないのだ》と感じていました。
ストーリー自体は捻りのない王道なものが多いし、どんでん返しもないので先が読みやすい。更に言うならキャラクターにものすごい個性や魅力を感じたこともない。あくまで新海作品のキャラクターは記号的なんじゃないかと。

誤解を恐れずに言うなら
新海作品は影像美と音楽を楽しむタイプ映画だ、と思っているんです。いや『いたんです』というべきか。


多分新海ファンの方にはお前に新海誠の何がわかるんじゃい!このスットコドッコイ!と新海を愛する我が夫同様に思われることでしょう。
その通りですとも!私のような映画ペーペーは、全くよくわかってないのです。

ただね!言い訳ですけど、私としては決して新海作品をマイナスには捉えていないということは声を大にして言いたい!!

全ては影像美を生かすために、新海誠は王道のストーリーに徹し、個性的なキャラクターを敢えて出さないようにしている……と私は解釈してたんです。とっつきやすいストーリー、クセのないキャラクターでアニメを普段観ない層を取り込み、アニメ影像の美しさや可能性……アニメの世界の魅力を様々な層に魅せてくれる。稀有な存在だと。

それになにより、新海誠は代わりがきかないじゃないですか。
新海作品と類似の作品は未だにないし、あの美しい影像、そして神がかり的なセンスで合わせられる音楽。それだけで充分に価値があるものだと思っていたわけですよ。


さて、そんな私の凝り固まった新海像の前に、満を持してやってきたのが『天気の子』ですよ。新海映画界の黒船!……と呼ばれているかは知りませんが、私的にはマジ黒船でしたよ。えぇ。

クセの強いキャラクター(特に主人公)。奇抜なラスト……どうしたの?新海誠!?何があった!!!辛いことでもあった!?


最後東京が沈んだところでは大爆笑しました。新海作品で初めてこんな笑ったかも。いや、毎度そんな笑うような作品じゃないけど。今作どうしたのほんと。


まずね、主人公が怖い。普通に怖い。もう色々怖い。今までの作品を彩ってきたそこそこ顔が整った無個性で臆病でやさしい男性像はどこいった?


例えば、帆高が一度目に銃をぶっぱなしたところも結構「えー!?」だったんですが、ニセモノかもと思ってる前提だからまぁ撃つかもなって納得できる。しかし二度目に至っては構えた時点で「ウソでしょ?」と思ったし、実際ぶっぱなしたときには「こいつ、ヤバイ……」と、恐怖すら覚えましたよね。
一度で懲りないのか?一応の恩人に平気で銃口向けるのどうなの??しかも撃つ???ほんとに撃つ???普通撃たなくない?????
相手恩人ぞ???????

絶対に銃を手にしてはいけないタイプの人間が銃を得てしまった悲劇。おかげで、日本は銃が規制されていて本当によかった〜!今ある幸せに感謝!みたいな気持ちにまでなれましたとも。いやほんま、気軽にぶっぱなしすぎでしょ。

しかし、その銃ぶっぱなしより恐怖を感じたのが、そこまでして守りたかった彼女をラスト3年放置するっていう薄情さ。

なんなの?サイコパスなの??マジで怖いんですけど。なんで連絡ひとつ取らないの???相手の気持ち考えられないの???ねぇ!?!?
銃口向けた須賀さんには連絡してたっぽいやん。そっちに取れるなら陽菜ちゃんに一報いれるの余裕でしょ。むしろ須賀さんの前に堂々と顔を出せたことにもビックリだわ、こっちは。


本当にこの薄情エピソードのせいで、この男に対するここまでの違和感が一気に恐怖を帯びてくるというか。もしかしてこいつには人の心がないのか……?みたいな。ここまでの行動も人の心がないと思えばしっくりくる点が多すぎる。
家出の理由がよくわからないのも、帆高の薄気味悪さに拍車をかけてくる。ラスト観るに虐待や放置されていたというような感じでもないし……。少なくとも他のメディアからの情報なしに初見映画のみで得た印象では、絶対どうでもいいことで家出を決めただろ!帆高ぁ!と決めつけてしまいたくなりましたよね。えぇ。だって帆高だし。

ラスト前の告白もどきシーンも、陽菜をほっぽらかして三年経ってると思うともうホラー。これだけのことしでかして、もしかして告白かな〜へへへ!みたいに思えるのすごいぞ。
地元、家出するほど辛かったんだよね?保護観察で肩身狭くなって帰還したはずが、すごいのんきに楽しく過ごしてないか。でないともしかして告白でへへみたいにならなくない?
帆高よ、君のその度胸と鈍感力があれば、正直どこででも楽しく生きて生けるよ……!

まぁ、このようなじわじわとした恐怖(主に帆高に対するもの)に包まれたまま、私はエンディングを迎えたわけですが……。

今作はある意味、すごい印象的な登場人物とストーリーだなと。個人的には新海作品一のインパクトでした。たぶん、今後一生忘れることはないでしょう。その点では「星を追うこども」と真逆。あれは映画館で見終わった瞬間から忘却がはじまってた。


前述しましたが、私は新海誠はあえてストーリーとキャラクターを犠牲にすることで映像美を先鋭化させてると思っていたんです。でも『天気の子』を観て、そのイメージはガラガラと崩れていきました。

主人曰く「だから!お前はわかってない!新海は毎回全てに真剣なんだよォ!!」

そういうことなんでしょうか。いや、真剣じゃないとか思ってた訳じゃないけど、私の映像美を先鋭化みたいなのはただの妄想だったってこと?妄想新海像を勝手に描いてたってこと?

私はもしかしたら、新海映画ファンではないけど、新海誠ファンではあったのかもしれない。妄想の新海を作り出せるくらいには、思い入れがあるのだから。


とりあえず私の新海像は今回崩れ去ったわけですが、逆に今後の作品が俄然楽しみになってきました。個人的には映像美ってものにあまり興味がないので、今後帆高のようなわけのわからない……いえ、個性的なキャラクターが生まれ、東京が沈むみたいなインパクトのあるストーリーを観られるなら、それに越したことはない!と思うのです。

天気の子の評価に関してはわかりませんが、私は今作が様々な意味で衝撃だったし、なによりこんな意欲作を作った新海誠がより好きになりましたよ!よくわからないけど、監督の人間くささが透けて見えたのが大変よかった。心に響いた。感動した!(ネタが古い)

『天気の子』自体よりも、今後はもっと意識的に、新海誠を応援していきたい。そんな風に思えたのが一番大きな収穫だったのかな、と。

しかし帆高を越えるナチュラルヤバヤバ主人公なんて、今後現れるのだろうか……
いやもう次回作が楽しみでなりません。次はなにを見せてくれるの、新海誠〜〜〜〜!

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