14「スカラムッツァの足跡をたどって」第5章「いろいろな音質」その2
こんにちは。音楽で人と世界をつなぐ!ピアニストの岡田真季です。
アルゲリッチが幼少期にアルゼンチンで習っていた、名ピアノ教師 スカラムッツァの教えを、孫弟子にあたるマリー=クリスティーヌ・カルヴェ氏が書いた著作「スカラムッツァの足跡をたどって」を、ご本人の許可を得て岡田真季が日本語訳でお届けしています。
メルマガに登録すると、毎月1のつく日に最新が送られてきます。
登録はこちらから
過去の記事はマガジンにまとめてありますので、ぜひ順番に読んでみてくださいね!(本の中でも、順番がとても大事!と書かれています😊)
⚠️ 第2巻からはnoteでは有料マガジンにする予定です。メルマガではずっと無料で配信するつもりですので、まだの方はお早めにご登録をオススメします😊
では、「いろいろな音質」2回目に入りましょう!
いろいろな音質、どうやって?
音がアタックによって変わるということに気づいてもらうには、スプーンか何か金属のものを持ってテーブルをたたいてもらおうか。
ジェスチャーによって、音の感じが違うことにすぐ気づくだろう?
スプーンをバウンドさせる時、そうでない時、置く時、投げる時、出てくる音はそれぞれ違うはずだよ。もしその結果に「顔を叩かれたような」驚きを感じなかったなら、太鼓を使ってやってみよう。耳はこれ以上、疑いを持たないはずだ。
打楽器奏者は腕のアタックの大切さ、そしてそれが太鼓の膜面を震わせているのをよく知っているんだ。よく観察すれば分かるだろう、音の違いはアタックのスピードによって変わってくるんだ。
じゃあここで3つの異なるアタックを挙げてみよう。
・1つ目は音が鳴る物の上にゆっくりと置くアタック。出てくる音は柔らかく、「和らいだ音」だ。
・2つ目はすばやく叩くアタック。音はクリアで鋭く、「輝かしい音」だ。
・3つ目は距離のないところからバウンドさせるアタック。アタックのスピードは前述の2つに比べても最速で、音も明らかに豊かだ。音は振動し、さらに長く持続して、より倍音を引き出す「ヴィブラートの音」と言える。
※ ピアノにおける「ヴィブラート」は、声楽や弦楽器のような2音間を振れるものとは違うんだよ。ここで言うヴィブラートは、他のタイプのアタックに比べて、倍音のスペクトルがより豊かで満ちている音質として、ヴィブラートと呼んでいるよ。
打楽器奏者がやっているように、ピアノで1本の指で1音を、3つの違うやり方で打鍵してみよう。
1.鍵盤にゆっくりと指を置く。低い倍音が明らかに聞こえてくるだろう。音は柔らかく和やか、クラリネットの音色に近い。
2.素早い指の動きで鍵盤を打つ。今度は高い倍音がより目立つだろう?音は金属的で、オーボエのようだ。
3.指をてこのようにして鍵盤からすばやく持ち上げる。高いのも低いのも、すべての倍音が鳴り響く。音は豊かでクリア、長く響き続ける。
このように、音量的だけではなく音質的に異なる音が出せるんだよ!
3つのアタック、3つの音
第1の音「和らいだ音」
第2の音「鋭く輝かしい音」
第3の音「豊かなヴィブラート」
異なるアタックの音のカーブを図表化したもの
1つ目「和らいだアタック」(ブルーの図)
「和らいだ音」のカーブは、アタックの後すぐには上昇しないんだ。音の振れ幅は、「鋭い音」より小さく、減衰スピードはより遅い。
2つ目「鋭いアタック」(オレンジの図)
「鋭い音」のカーブは、アタックの後すぐに頂点へと昇っているよ。音は長く続かず、減衰までが短い。
3つ目「ヴィブラートのアタック」(グリーンの図)
「ヴィブラートの音」のカーブは、前の2つのカーブの利点を合わせたものだね。音の振れ幅は最も高いし、減衰するまでの時間もより長い。
本内容は、Marie - Christine Calvet氏の著作「Sur les traces de Scaramuzza」を、本人の許可を得て岡田真季が日本語に訳してお届けしています。無断で内容を改ざん・コピーするなどの行為はご遠慮ください。挿入イラストは「いらすとや」から拝借しました。手指のイラストはオリジナルからトレースしたものです。譜例はIMSLPから出典。
+++++++++++++++++++++
メルマガでは本編の翻訳に加えて、岡田真季の経験や、ピアニストたちから学んだこと、アルゲリッチご本人が話していたこと、読者の方々の質問や経験談などをご紹介しています😊
「スカラムッツァの足跡をたどって」を日本語でシェアしているメルマガは、いつでも無料です!ぜひ登録して下さいね😉
フォローや「スキ」、頂けると励みになります🥰
最後までお読みくださり、ありがとうございます! スキ、コメントなど頂けましたら励みになります。サポートは楽譜購入、付き人活動など、ますますの学びに使わせて頂きます。 これからも気に入って頂ける記事をお届けできるよう、がんばります!