12「スカラムッツァの足跡をたどって」第4章「5つの動き」その5

こんにちは。音楽で人と世界をつなぐ！ピアニストの岡田真季です。


アルゲリッチが幼少期にアルゼンチンで習っていた、名ピアノ教師 スカラムッツァの教えを、孫弟子にあたるマリー＝クリスティーヌ・カルヴェ氏が書いた著作「スカラムッツァの足跡をたどって」を、ご本人の許可を得て岡田真季が日本語訳でお届けしています。

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今回は、第4章「5つの動き」の最終回です。いや長かったですね笑！今回は5つの動きを練習する上で気をつけるべき「よくある間違い」についてです。

5つの動き、よくある間違い

・指の練習をしよう！

5つ続いた音を弾いてごらん、1音ずつ指を1、2、3、4、5と変えてね。おや、4の指や小指で弾くとき、どうして親指が固くなってしまうんだい？



もう一度4と5の指で弾いてみよう、親指をリラックスさせながらね！



指が上がったり下がったりするのは、腕へと繋がっている腱のおかげだって知ってるかい？腱はゴムみたいなものなんだよ。

指の動きを練習するとき、この腱を使って他は動かさない、と心得るんだよ。



どうして指1本で弾くだけなのに、腕を使って押しているんだい？指をなんのことなく下ろすんだ、指がひとりでに降りるんだよ。そうしたら今度はもう少し素早く放ってみよう。でも気をつけて、腕の力を使わないで、だよ。



それぞれの指を素早く放つとき、君の手首が固まっていないかい？もう一度やってごらん、もう少し遅く、1音弾くたびに手首をリラックスさせるんだ。

・前腕の練習をしよう！

前腕を高く上げてみよう。おっと、手首がフニャフニャになってるぞ。前腕の延長線上に留めるんだよ。おやおや、手もフニャフニャじゃないか、鎧をつけて！



そうだ、これが正しいポーズだ。前腕を1音めがけて送ってごらん、そうだいいぞ。腕はリラックスできているかい？手首は楽になっているかい？出した音はクリアで、芯がある、でもキツくないね？ブラヴォー！



いくつかの音を続けて、前腕で弾いてごらん。どうしてスタッカートにして切ってしまうんだい？次の音を弾く前に、鍵盤にもう少し留まってごらん。そんな素早く切らなきゃいけないっていう音符の上の点はついていないんだからね。



前腕を使って、素早く鍵盤に降りて、ゆっくりと上がってこれるようになろう。音はそれぞれ切り離されているけど、自動的にスタッカートになるのではないんだよ。

・未来のヴィルトゥオーゾの手首を練習しよう！

手を広げて鎧をつけて、「手首の動き」をしながら「こんにちは」と「さようなら」を言えるようになろう。難しいだろう？


それぞれの指で1音ずつ弾くよ、手首から手を放って、バウンドさせるんだ。そう、その調子！気をつけて、集中していないと手がフニャフニャに柔らかくなってしまうぞ。

・腕の練習をもっと近くで見てみよう！

できるだけゆっくりと鍵盤に腕を置いて、美しい音で和音を弾いてみよう。音たちがどんなに深くて丸い音か、よく聴いてごらん。「落下」の時の音と、どんなに違うか！



美しい和音を弾き終えた時、なぜひじが身体から離れて開いているんだい？腕を脱力して、リラックスするんだよ、ほら呼吸して！

・長ーいこのレッスンの最後に、回転の練習を少しやろう

間隔の開いた2つの音を弾いてみるよ。例えばファとド、とかレとラだ。1つ目を親指で、2つ目を小指で弾いて、腕を揺り動かしながら、あっちへ、こっちへ、楽しんで渡してごらん。



気をつけて、小指に傾けた時、かわいそうな小さな小指が崩れ落ちちゃってるぞ！もちろん、腕の重みはどっしりして、小指がそれだけの重みに耐えるのは簡単なことじゃないさ。しっかりと鍛えるんだよ。

たくさんの罠を避けて、第4ステップを終えられたね！ここまで連れてきてくれた、我らがピアニスト ウラディミール・ジグワングワンに感謝の意を述べよう。そしてきみにも、ブラヴォー！

次章へ続く

本内容は、Marie - Christine Calvet氏の著作「Sur les traces de Scaramuzza」を、本人の許可を得て岡田真季が日本語に訳してお届けしています。無断で内容を改ざん・コピーするなどの行為はご遠慮ください。挿入イラストは「いらすとや」から拝借しました。手指のイラストはオリジナルからトレースしたものです。譜例はIMSLPから出典。

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